1時間ほどの小さな芝居だ。真面目にこの題材と向き合う。そういう意味では、好感が持てる芝居だとも言える。だけれども、少し硬い。もう少し遊びが欲しい。真面目すぎて疲れる。主人公が自分の性情に悩み、やがて、カミングアウトしていく過程をもう少し描き込んで欲しい。ストレートすぎて戸惑う。自分が女の子ではなく男の子の心を持つことに戸惑いながらも、自分に正直になろうとする、というお話自体はいいのだが . . . 本文を読む
5分以上続く前説から、終演後の挨拶の後のオマケのダンスシーンまで全部含めて50分という短さ。全く無駄がない。とてもテンポよくアドリブも含めて完璧に、丁寧に作られてある。キャスト3名+1名(黒子として1名が登場する)、それぞれのキャラクターが見事に描き分けられてあり、この最強チームが、3年間の演劇部員としての高校生活を全力で走り抜けていった過程が、この短い芝居として鮮やかに描き切られ . . . 本文を読む
すかんぽ長屋を舞台にした人情劇シリーズの第3作。定番のストーリーをなぞっていく。でも、そこで安心して見ていると、あれっ、と驚かされるようなちょっとした仕掛けも用意してあり、悠々たるタッチで70分ほどの芝居は展開されていく。お決まりのストーリー、善玉悪玉がここでぶつかり合い、大団円を迎える。派手な立ち回りもちゃんとあり、笑わせて、ほっこりさせる。神原節全開だ。
前回 . . . 本文を読む
昇竜之介演出による公演。役者のオーバーアクトが鼻に付く。すごく不自然。男優陣の演技は故意にさせたのか、よくわからないけど、嘘くさい。ただヨシダを演じたよしひろ葵は、それでいい。だが、全体のバランスがよくない。演技力に差があるからこうなるのだろうか。4人の女たちが保険金殺人を繰り返すのだが、説得力がない。緊張感のある舞台を作ろうとしているのはわかるし、演出はちゃんと緩急をつけて余裕の . . . 本文を読む
久々の西部劇だが、今時単純なウエスタンでは映画として成立しない。追う者と追われる者、2対2の追跡劇というスタイルなのだが、彼らの想いが一つになり、協力して金を手に入れたとき、ほんの少しの過剰な欲がすべてをダメにしていく。欲張ったら身を滅ぼす、なんていう単純すぎる答えがこんなにも身に沁みる。シンプルな映画だから主張が明確で、そこに至るドラマも単純だけど説得力があるから、納得する。
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ティーンの男の子の心情をメインに据えた「学園もの」のスタイルを取る『スパイダーマン』新シリーズ第二作。今回はヨーロッパへの修学旅行がテーマとなる。ローマからプラハへの観光旅行(ほんとうは、もっとベタなパリだったけど、諸事情からプラハ入りすることになる)。そこでのあれこれが描かれる。
もちろん、事件も起きるし、彼はスパイダーマンとして世界の平和を守る為にも戦うけど、高校生活最大のイ . . . 本文を読む
殺されたお吉と殺した与兵衛だけではなく、この世界にいるすべての人たちが、ゆっくりと舞台から、消えていく。それを、まるで道行きを見つめるようにして我々は見守る。やがて、すべてが静かに闇の中へと吸い込まれていくようにして舞台は幕を閉じる。ここに生きるすべての者たちが消えていくのだ。そんなラストシークエンスが素晴らしい。
人の世の業、のようなもの、それを金と女に象徴される欲 . . . 本文を読む
キャラの描きわけが明確である種のパターンにすっぽりと収まっている。ストーリー展開も無理がないけど、冒険もない。予定調和なのだ。せすんなのに、なんと暗転なし(!)の80分。安心して見ていられる作品。
でも、なんだか物足りない。もっと危機感とか、ドラマとしてのメリハリが欲しい。このイベントを通して、寂れていく商店街の活性化という夢がどれだけかなうのか。この劇を通して、この町自体の未来へ . . . 本文を読む
八丈島を舞台にして、母と娘の3年間に及ぶ「お弁当バトル」を描く。こういう小さなお話だけで1本の映画が作られるってなんだか凄い。しかも、それは毎日毎日手を変え品を変えいろんなお弁当を考え作るというただそれだけの映画。そんなほとんどムダな努力と根性で映画は綴られていく。ただ東京なのに、とんでもなく田舎な八丈島を舞台にしたというロケーションのすばらしさゆえ普通じゃない映画となる。
さら . . . 本文を読む
3つの短編からなる「パンの巻」があまりに素晴らしすぎて、もし、こちら(玉子の巻)も、同等に凄かったならどうしようか、とドキドキしたのだが、(もちろんそれを期待もした)さすがにそうじゃなくて、こちらは、ふつうに安心して見ていられる作品だった。こちらは台本は長尾ジョージ。演出はもちろん久保田浩。まぁそれはそれでよかった。
もちろん、それって、この作品が悪いと言うことでは当然ない。それどころかとてもよ . . . 本文を読む
朗読劇団なんていうものがあるんだ、と感心した。知らなかった。しかも、発足からもう45年になるらしい。それだけの長きにわたって継続して活動を続けているって凄い。最近少し下火になっているけど、一時期小劇場界ではリーディング公演が流行った。舞台上でテキストを持ち、朗読や台本を読む。あんな感じなのか、と思い、見始めたのだが、なんと朗読者はテキストを持たない。だから完全に演劇のスタイルなのだ . . . 本文を読む
バリー・レヴィンソン監督の『ダイナー』が大好きだから、このタイトルで作られるのは少しむかつく。まぁ、仕方ないことだけど。もちろん、リメイクではなくこれは全く別の映画だ。
この世界の中で、居場所をなくした孤独なひとりの少女が、この迷宮に迷い込む。恐怖のメフィストであるこの食堂のオーナーのもと、ウェイトレスとして働くことになる。これは現実世界のお話ではなく、象徴的空間 . . . 本文を読む
壮大な歴史ロマンを、なんと、あの音太小屋で見せる。華やかな歌と踊りで絢爛豪華なミュージカルスタイルを貫く邂逅が、十分な舞台装置もない、この狭い空間で、たった4人芝居として、これだけのスケールの作品を見せるのだ。チープなものになってしまうと、成り立たない芝居だけれど、それを豪華な衣装と、その早変わりで、目にも鮮やかな大河ロマンに仕立てあげる。1人で何役もこなすのだが、そのスピードがこ . . . 本文を読む
山戸下結希監督の長編第二作。前作も尖った映画だったけど、今回もヒリヒリするような痛みを持続させる。恋愛映画だけど、従来の甘いばかりの少女漫画ではない。ヒロインと彼女を好きになる(と、同時の彼女が好きになる)3人の男たちとの関係性が普通の映画とはまるで違う描き方をする。恋愛以外の感情は完全に削除される。だが、そこにあるのはリアルではなく感覚的な描写ばかりだ。観念の世界ですべてが進行す . . . 本文を読む
今回も昨年と同様、3話からなるオムニバス・スタイルで見せる。100分間で1941-45年を描く。ゼロの誕生から終焉までのゼロの時代を描く。宮崎アニメ『風立ちぬ』で有名になった堀越二郎の物語から始まり、真珠湾攻撃を経て、東京大空襲までを現代のシーンであるプロローグとエピローグを含めて見せて、100分という上演時間の短さには驚く。
流れるように日本が太平洋戦争に突入し . . . 本文を読む