アブデラテイス・ケシシュ(こんな難しい名前覚えられない!)の映画を初めて見た。これはなかなか厄介な映画だ。2時間40分もあるのに、こんな中途半端なところで平気で終わらせるなんて、ありえない。なのに、全く動じる気配もない。というか、これが彼のねらいでもある。イライラさせられる。啞然とする。納得する。これって、この主人公のオヤジの性格なのだ。彼に対して思うことが、この映画に対して思うこ . . . 本文を読む
2月に読んだ本は、14冊。いくつかは簡単な感想を書きとめたけど、まだ書いていない小説がたくさんある。そこで、一気にここで触れておこう。
一番好きだったのは、瀧羽麻子の『株式会社ネバーラ北関東支社』。昨年、彼女のデビュー作『うさぎパン』を読んで、こんな作家がいたんだぁ、と感動した。だから、その後、続々と出版された作品もぜひ読みたいと思いながら、なかなか機会もなく、今日に至るのだが、まずこの第2作を . . . 本文を読む
うちやまつりの続編である。6年後のお話だ。だが、登場人物が重なるわけではないし、お話の連続性もない。舞台となる場所も違う。あの団地はすでに取り壊されている。その跡地となった場所を望むドライブインが舞台となる。演出は、「劇団清水企画」の清水友陽。
とても丁寧に作られてある。深津さんの戯曲を大切にして、その描こうとしたものを余すところなく、掬い取ろうとした。その誠実な姿勢は気持ちいい。しかし、それは . . . 本文を読む
3つの短編集。このパターンは外輪さんの得意技だ。好きなお話をうまくつないで、一つのテーマや世界を提示する。今回は「闇」を仕掛けに利用する。闇の中で話が展開し、闇が話の中に紛れ込む。だから、タイトルも見えない。僕がタイトルを書き忘れたのではない。(もちろん、外輪さんが忘れたわけでもない。)この作品にはタイトルがないのだ。見えないだけなのかもしれないけど。
いずれもちょっとへんなお話。少しエロチック . . . 本文を読む
犬になりたい女の子が主人公。彼女がチョコリエッタ。知世子、だから。大島真寿美の小説を風間詩織が映画化。2時間39分にも及ぶ長尺映画なのに、たいしたストーリーはない。
ひとりの女の子(森川葵)が、この春卒業した高校の映画部の先輩の家にフェリーニの『道』を借りに行く。でも、先輩は一緒にここで見ようと言う。だから、ふたりで見る。そして、ザンパノとジェルソミーナのようにふたりで小さな旅に出る。ただ、それ . . . 本文を読む
2011年3・11にふたりは出逢い、2011年12月31日に子供が生まれる。それから10年後、しるしと名付けられた2人の娘は、自分の生い立ちについて小学校の宿題である作文に記す。小説のラストはその作文だ。
ふたつのしるしが、それぞれ生まれ、生き、出会う。生まれたところから始まる人生という物語における4つの時間が、短編小説のようにして、読み切りでつづられる。対になったふたりの4つの時間の8つのエピ . . . 本文を読む
4度目の『うちやまつり』だ。深津さんが今回、何をここで見せたいと思ったか、今ではもうわからない。ただ、深津さん亡き後、今回の演出を委ねられた空ノ驛舎さんは、今までの『うちやまつり』で深津さんのしたようなアプローチはしない。桃園会の公演を任されたにも関わらず、いや、それだからこそ、自分に出来る『うちやまつり』を目指す。それが深津さんへの鼻向けにもなる。
彼の取った自分の切り口は、この不条理劇を論理 . . . 本文を読む
もう3週間も前になる。この映画を見たのは。書くのを忘れていたわけではないけど、たまたま同じ日に見た『KANO』のことが気になってそれを先に書いたら、もうこの映画のことも書いたような気になってしまったようだ。『KANO』のついては、実はいろんなことを書きたいと思った。でも、上手くまとまらなかったし、書いた原稿を紛失してしまって、同じことを書くのが、嫌で、辞めてしまった。実は、その時、この映画ついても . . . 本文を読む
「大阪先行公開、アポロシネマ独占ロードショー」なんていうのは、プレミア感が増すというよりも、反対にしょぼい。どこも上映する劇場がないからそういう形での上映になったのではないか。ご当地映画を先行公開する、というパターンでもない。南大阪映画なんていうローカル作品なのだが、そんなことは、実はどうでもいい。久々の三原光尋監督作品というのがうれしくて、とても楽しみにしていたのだ。しかも、彼が昔ながらのなつか . . . 本文を読む
こんなん、ありえへんやん、と突っ込みどころ満載の映画なのだが、この圧倒的な静謐に突っ込みは不可能。あれよ、あれよと言う間に、どんどんお話に引き込まれていく。でも、いくら考えても、というか、考えないけど、ありえない。
本人たちもきっとそう思っている。悼む人である本人(高良健吾)が、ありえません、と言ってるし。こんな行為に何の意味もない。というか、意味ではない。ただ、彼が「悼ませてください」というの . . . 本文を読む
昨年このタイトルを見た時から、期待は高まるばかりだった。こんなタイトルの映画が作られるなんてありえない、と思ったし。そこは千日前にある古いキャバレーである。怪しさ抜群の商業ビルだ。なぜか、年に100回くらいその前を通る顔なじみの建物だ。何度か宴会とか、イベントとかで(実はたぶん2回だけだが)昔、入ったことがある。(もちろん子供だったのでキャバレーには行ったことはない。というか、大人になっても行かな . . . 本文を読む
まさか僕がアニーに嵌るなんて、思いもしなかった。実のところ、この映画、まるで見る予定なんかなかったのだ。でも、たまたま2時間、空白の時間が出来てしまった。その時間つぶしには、この映画しか見れるものがなかったのだ。他にもたくさん見たい映画ならあるのだけど、時間に嵌る映画がこれだけだった。
それで仕方なく、見たのだが、とてもよかった。もうびっくり。あの鈍重でもっさりしたジョン・ヒューストン監督の映画 . . . 本文を読む
極彩色の見世物芝居だ。華やかで艶やか。元禄時代の大坂。2つの芝居小屋を舞台にして、ふたりの花形役者が火花を散らすラブストーリー。なぜか、そこに平成の力士(片岡百萬両)が九十九神に見込まれて、タイムスリップ。彼ら2人の恋を見届ける。
片岡演じる天道虫をストーリーテラーにして、お話は展開する。本来なら彼がこの物語の主人公のはず。最初は彼の話から始まるし。でも、元禄時代に彼がやってきてからは、なぜか彼 . . . 本文を読む
これはリドリー・スコットの新作である。もうそれだけで、まず見に行く。今回は旧約聖書の「出エジプト記」を取り上げる。スペクタクル大作だ。要するにモーゼの『十戒』のリメイクなのだ。こういう古臭い素材を今なぜ取り上げるのか、と僕たち日本人は思うけど、キリスト教の国であるアメリカでは、興味関心が持たれるということか。
そんなことより、まずリドリー・スコットがなぜ、これを今取り上げたか。その答えが映画に . . . 本文を読む
「娚」と書いて(おとこ)と読ませる。こんなの知らなかった。で、この映画、この大胆なタイトルと、あのポスターが見せる(というか、想像させる)イメージ(あの足舐めである!でも、実のところ卑猥な印象はないな)とはまるで違って、とても穏やかな映画なのだ。それに、別に一生を描くのではないし。しかも、主人公は男(豊川悦司)の方ではなく、女(榮倉奈々)だし。
恋愛に傷つき、(よくある不倫)田舎に戻ってきた30 . . . 本文を読む