堤幸彦監督は当たりはずれがあってかなり怖い。今回もギャンブル気分で劇場に行った。吉永小百合は彼の『明日の記憶』を見ただけで今回のオファーを受けたようだが『トリック』とか見たらきっとのけぞるぞ。
超多作監督の彼は今回今の吉永小百合に出来る限りの限界に挑む。還暦過ぎた女性に20代を演じさせるなんて狂気の沙汰だが敢えてそれに挑戦する。オファーを受けた彼女も立派だが、こんな企画を通した東映にもあきれ . . . 本文を読む
期待の一作である。新撰組と妄想プロデュースが初めてタッグを組んで新生新撰組の未来を占う大一番の芝居だ。これはただのコラボではない。妄想プロデュースの池川辰哉さんは新撰組の劇団員でもある。彼が主宰する集団での仕事を新撰組に持ち込むことで、彼が新撰組をこれからどういう形でリードしていくことになるのか、そんなことも含めてこの芝居は彼ら全員にとってここ一番の踏ん張りどころとなるのだ。
新しく劇団代表 . . . 本文を読む
藤沢周平の短編を3本アレンジして長編化した(脚本は吉永仁郎)作品。往来初の世話物時代劇らしい。なんと本格的に鬘をかぶった芝居でさすが往来さんです。やることが半端ではない。もちろんセットも本格的でこの舞台美術(坂本雅信)を見てるだけで満足できそうな作品だ。
だが、見ていて芝居自体はあまり感心しない。それってちょっと困る。肝心要の部分が駄目では浮かばれない。演出の要冷蔵さんは役者だから個々の役者 . . . 本文を読む
3月に上演された初演をこの同じ空間であるウイングフィールドで見ている。あの時はとってつけたような実験的な試みが鼻についてあまり感心しなかったが、京都でのワークインプログレスを経た今回の「ヴァ-ジョン3」は、オーソドックスなスタイルに戻り、この作品に対する見せ方も板についてきたみたいで、とても見やすくて自然な作品になった。
もちろん手法としては今回もけっこう驚かされる部分も多くある。しかし、奇 . . . 本文を読む
昨年カンヌ映画祭でパルムドールを受賞した評判の映画である。ただ、同時にゲランプリを受賞したのが河瀬直美の『殯(もがり)の森』であることを考えるとあまり期待は出来ないと思っていたが、やはり残念な映画でがっかりした。この2本の受賞作を並べると審査員の意向が明確に出ていることがわかる。具体的な内容を観念的な処理で見せた頭でっかちな映画が好きみたいだ。それでは題材のおもしろさが生きてこないのを、あまり考 . . . 本文を読む
生島裕子さんの視点と発想はとてもユニークだ。全体のバランスを崩してしまうような展開を平気でしてしまう。論理よりも感性、直感を大事にしてしまうところは女性作家ならではの大胆さだ。
あまりの展開に最初はついていけない。恋人が自殺したことをきっかけにして、死にたいと思っている人間の援助をするという仕事を始めた、だなんてそんなのありえない。しかも、いきなり銃を振り回したりして、この国は無法地帯かよ、 . . . 本文を読む
『東京ノート』と並ぶ平田オリザさんの代表傑作。この作品を見るのは今回で2度目だ。前回はAIホールだったので、作品との距離感があり冷静に見れたが、今回は駒場アゴラ劇場なので、客席との距離が近いし、狭さが臨場感を生む。まるで印象の違う作品になった。
『冒険王』はいつもの平田オリザさんの作品とタッチは同じなのだが、作品から受ける印象がかなり違う。自伝的作品であることも影響して、いつもの冷静な彼が影 . . . 本文を読む
これってつまらない。どうしてこんなにもゆる~い映画が評判になったりするのか、僕にはよくわからない。原作がベストセラーになったらしいがこの映画からは魅力は伝わらない。
一応犯人探しのミステリ仕立てなのだが、全く出来損ないでしかない。それにしても、主人公の2人がここまで魅力がないというのはどういうことか。竹内結子はただのでくの坊にしか見えないし、阿部寛もマンガでしかない。この2人がコンビを組んだ . . . 本文を読む
こういうミステリータッチのドラマが、今時劇場公開されるってすごくめずらしいことだ。もしかしたらこれってかなり出来のいい作品ではないか、なんて期待して見たのだが、見終えてがっかりさせられた。なぜ、このレベルの映画がビデオスルーではなく、劇場公開されてしまうのか、わけがわからない。
ヒュー・ジャックマンとユアン・マクレガー主演なんていう地味なキャスティングだし、タイトル・ロールのSを演じる女優は . . . 本文を読む
このタイトルに心惹かれて劇場に行ったのだが、それは間違いだった。まず、基本的にこういう「エンタメ」は苦手だ。しかも、あまりウエルメイドとは言い難い。
だが、一生懸命に作っているのはわかるから、腐すつもりはない。舐めたような芝居なら何も言わないが、作り手の誠実さは伝わる。それだけに残念でならない。
まず言える事は、話にまるでタメがないということだ。ただお決まりの展開に流れていくだけ。2時間 . . . 本文を読む
手塚昌明監督の新作である。彼の『ゴジラXメカゴジラ』は平成ゴジラシリーズの最高傑作であるだけでなく、ゴジラシリーズで唯一の人間が主人公の映画でもある。釈由美子扮するGフォースの女性がメカゴジラに搭乗してゴジラと戦う。さらにはそれだけでなく、あの映画は自衛隊をここまでかっこよく描いた映画はかってなかったのではないか、と思わせるくらいに見事に描いていた。
そんな彼が再び女性自衛官を主人公にした映 . . . 本文を読む
前田司郎の小説と同じようにとっても不思議なテイストの芝居になっている。あけてはならない父の箱を兄に唆されて開けてしまう。そのことを姉に指摘されてうろたえる弟。父は必ず自分を殺しに来ると怯える弟。そんなところに兄が帰って来る。兄は以前父が棄ててしまったはずのタロウ(という生き物)が父の箱から出てきて、一緒に飼おうという。
よくわからないでしょ。こういう不条理で、すっとぼけた冒頭のエピソードから . . . 本文を読む
フランク・ダラボン監督によるスティーブン・キング原作第3弾。過去の2作品の流れからは少しイメージが外れるが、並みのキング映画化作品とは一線を画する作品だ。『ショーシャンクの空に』(これが一番キングの映画化作品で好き)も『グリーン・マイル』もキングのホラーとは違いヒューマン映画に分類したほうがいい作品だったが、今回は堂々とホラーに分類できるような映画だ。だが、それはこの映画を貶すことにはならない。 . . . 本文を読む
新装オープンしたゲキバコ!の第1弾である。前回のアトリエ公演に続き今回もしっとりとしたお話に仕上げてあり、今までの吉野圭一さんとは一味違う。だが、彼の持ち味であるロマンの香りは充分に漂う作品になっており、悪くはない。吉野さんは徐々に自分独自の世界を形作ろうとしている。その姿勢は好ましい。
ただ今回の芝居のテンポはちょっと遅いし、描かれた2つの世界がどう関わりあうのかも、しっくりとはいっていな . . . 本文を読む
いつもながらのとてもバカバカしい芝居だ。そんな風に思いながら見ている。すると、それが見ているうちにどんどん別の次元にむかっていくことに気付く。そしていつのまにか思いがけないドラマへと収束していく。列車転覆事件を扱い、事故の中、たったひとり生き残った女性の孤独と狂気が、世界とどう関わっていくのかを描く。
「今回の芝居、ゴルフの話ではなく実は列車脱線事故の話なのです。伊丹でアイホールでいつか列車 . . . 本文を読む