今から40年ほど前、『ミツバチのささやき』と同時に公開された。あの時は『ミツバチのささやき』の印象があまりに強烈すぎて、この作品はそれほど心には残らなかった。いろんな意味で中途半端な映画だったと記憶していた。よくわからないまま映画が終わって戸惑いばかりが残った。『ミツバチ』があんなにわかりやすくストレートに胸に届く映画だっただけにこの作品のモヤモヤした気分に当時、あまり感心しなかったと記憶している . . . 本文を読む
たった95分で描く72年9月5日のミュンヘン五輪でのテロ。映画は無駄のない適切な見せ方で報道のあり方を問う。アメリカのABCが生放送で独占世界中継をしたテロ事件の舞台裏のドキュメントである。50年以上前の出来事を今再び問う。ちょうど同じようにテロ事件をリアルタイムで生放送することを描く日本映画『ショータイム7』(こちらの表記はカタカナで「セブン」だけど)も現在公開中。たまたまABCはこの出来事を放 . . . 本文を読む
休憩を兼ねて軽い映画を見ようと思ってこの作品を選択した。最近この手の「学園もの」には飽きた。高校時代という時間が好きだったから、仕事にも選んで40年以上働いてきたし、好んで青春映画も見たけど、さすがにもう飽きたのかも。久しぶりのこの手の映画だったが、こんな幼稚な映画がありなのか、と驚く。もしかしたらここから先には「何か」があるのか、と思ってずっと見ていたが、何もなく終わる。ただのよくある少女マンガ . . . 本文を読む
北野武の新作がAmazonから配信公開されている。凄まじく評判が悪い。カンヌ映画祭に特別招待されている(ベネチア映画祭でした。カンヌは前作の『首』ね)が、海外での評価はどうだったのだろうか。前作『首』も酷かったが、これはその比ではない出来らしい。ということで、さっそく目撃した。いやぁ、すごかった。こんな映画(配信映画だけど)を平気で作れるなんて、さすが「ビートたけし」である。しかも「北野武」名義で . . . 本文を読む
二部作の2作目は予告通りの京都編。江戸から舞台を移して、再び梅安,彦次郎のバディが悪に挑む。前作ラストに登場した椎名桔平が今回の敵。さらに佐藤浩市も梅安を狙う。と、こう書いたが、実はこの作品つまらない。一作目と同時に作ったにもかかわらず、こんなにも作品としての完成度に差が出来てしまったのは何故か。当然スタッフ、キャストは同じである。だから方向性も変わらないはずなのに。台本が悪い(同じ大森寿美男だけ . . . 本文を読む
滅多に公開されることのないマレーシア映画である。予告編を見た時はよくある台湾映画かと思った。この手の作品は韓国映画にもたくさんある。アジア映画はこういう兄弟物が好きみたい。これは新人監督のデビュー作らしい。とても丁寧に作られてある。だけどなんかもの足りない。見ていてもどかしい。お話がなかなか進展していかないので、何がしたいのかわからない。それこそがいい、という感じで見れたならいいのだけど、演出には . . . 本文を読む
ようやく映画版が公開された。同時に書かれた中村航の小説版は先行して出版されていて読んでいるし、このブログにも書いている。あの小説は楽しみにして読んだけど中村航なのに、あまり感心しなかった。それだけに映画はどんな切り口からあの話を作り変えたのか、気になる。さて映画は? こちらは高橋泉の脚本で、草野翔吾監督という最高の布陣で贈る。だけど、なのに、やはりあまり感心しない出来だった。草野監督の前作『アイミ . . . 本文を読む
時代劇チャンネル製作の配信向けの安っぽい時代劇映画、だと思っていたが、これはかなりの大作映画であった。二部作公開というのもよくある製作費節減のための2本撮りだと高を括っていたが必ずしもそうではない。これはちゃんとした映画である。もちろん劇場で見る価値ある作品でもある。こんなタイプの時代劇映画は滅多にない。しかもこんなにも静かな娯楽映画は珍しい。暗くて静謐。だけど素晴らしい緊張感が持続する。役者の動 . . . 本文を読む
こんなストレートなタイトルを付けられた映画をスルーするわけにはいかないだろう。しかも監督はアルーノ・デプレシャンである。さらにはたくさんの映画を引用したというシネマ・エッセイというスタイルのドキュメンタリータッチの作品で87分という短さ。どんな映画なのか気になるではないか。映画は全11章からなる。ひとつひとつのエピソードは短い。ひとりの少年の映画との出会いから成長を通して映画と関わり大人になるドラ . . . 本文を読む
たった7日間の旅。大好きだったおばあちゃんが亡くなって3か月。僕と従兄弟の2人でワルシャワに行く。おばあちゃんが住んでた家を見に行くために。自分たちの祖国であるポーランドに初めて行く旅。ユダヤ人である彼らの家族は虐殺から逃れるためにここからアメリカに渡って来た。ふたりは移民3世である。アメリカで生まれたアメリカ人だけど、ポーランド人でもある。ツアーに参加して5日間を過ごす。メンバーは彼らふたりを含 . . . 本文を読む
宮崎大祐監督2020年作品。大阪アジアン映画祭のコンペにも出品された作品らしい。僕は彼の映画を今回初めて見た。今まであまり見たことのないタイプの映画だ。これもまた分類不可の映画だろう。Amazonはホラーに分類していたけど、これはさすがにホラーとは言えまい。大阪を舞台にしたモノクロ映画。鶴橋コリアンタウンで暮らす在日朝鮮人の女性が主人公。彼女の日常が淡々と描かれていく。なかなか何を描くことが目的で . . . 本文を読む
昨年公開された映画。A24作品。ジェシー・アイゼンバーグ監督のデビュー作。アメリカ映画にだって、こんな作品があるのだなと感心した。もちろんA24だから有り得た作品であろう。普通なら商業映画としてこの内容はない。ジュリアン・ムーアが主演している。彼女と高校生の息子の話である。穏やかな家族。母はDV被害者のシェルターを運営する。息子は配信ライブをして2万人のフォロアーが自慢な高校生ミュージシャン。そん . . . 本文を読む
こんなタイトルでこの話。これはかなり厳しそうと思っていたが、脚本坂元裕二、監督は塚原あゆ子だから、もしかしたら、とも思う。きっと甘いだけの恋愛映画ではない、はず。結果、これは『ラストマイル』のような映画から今回の作品に通じる『私の好きだった結婚』までさまざまなタイプの映画で結果を出してきた彼女が本領発揮した傑作に仕上がっていた。そして、これは岩井俊二の『love letter』を思わせる作品でもあ . . . 本文を読む
渡辺一貴監督が韓国映画『テロ・ライブ』を原案にして挑む社会派アクション映画。阿部寛の久々の主演作。大作かと思ったらなんと98分という今時珍しいコンパクトな上映時間。ほぼリアルタイムの緊迫したテロライブに挑む、はず。ラスト6分の衝撃とか、犯人は錦戸亮とか、事前に知っていたらよくないはずの情報を流出させたり、それを宣伝にしたりと、普通なら掟破りを敢えてする。これは明らかに確信犯である。細部まで手の込ん . . . 本文を読む
これは一体なんだったのだろうか? まさかの空前絶後の不思議映画。オチもなくあり得ないエピソードがサラリと連鎖していく。何? と思ったらもう次のお話に移行している。監督はこれが長編デビューとなるイ・オクソプ。2018年の大阪アジアン映画祭グランプリ作品。2022年には日本公開されている。ようやくNetflixでも配信がスタートした。このバカバカしい話が、あまりにさりげなく描かれていくからなぜか怖くて . . . 本文を読む