こういうヒューマン映画は嫌いではないが、見ていてイライラさせられる。子供を抱えて必死に生きているウイル・スミスの奮闘振りと健気な子供の姿を見ていると、涙さそうのだろう。ラストではハッピーエンドになり、よかったね、と思う。頑張ったから上手く行けたんだね、なんて。だけど、それが何だと言うのだろうか?
悪い映画ではもちろんないのだ。しかし、この映画を見て何を思えばいいのか、僕にはよく分からない。実 . . . 本文を読む
『釣りバカ』の西田敏行が主演した昨年秋公開の映画を先日見てきた。これもかっての松竹プログラム・ピクチャーの1本だ。昔はほんとにこういう映画がたくさんあった。今ではこういう作品にも、すこし予算をかけて、大作風のパッケージングを施し、ロードショー公開がされる。この作品もそれなりにセールスしてよかったはずなのだが、作品の力量もあり、あまり無理しなかったようだ。慎ましい。
天国への入り口のホールが安 . . . 本文を読む
今では消えてなくなったメジャーのプロブラム・ピクチャーの王道を行く作品だ。昔の日本映画はこういう作品ばかりが、大手を振っていた。しかし、この手の映画はブロック・ブッキングが崩壊し、大手の映画会社が製作を断念したことで完全に消えてなくなった。
なのに、まだ、しぶとくこのシリーズだけは作られ続けている。そんなにヒットはしないけど、老人を中心にニーズがあるから、ビデオスルーも前提に、新作が毎年公開 . . . 本文を読む
ストーリーらしいストーリーが全くない。たった60分程の映画なのにそれでいいのか、と心配になるくらいだ。秋原正俊監督は確信犯である。敢えてこのスタイルを選び取っている。ワンシーンも長い。不必要なくらいに。山下敦弘も長いが、この人も大概である。カット尻が長く、いらない部分まで見せる。しかも、そこで話も映像も動かない。
この映画はこんな話だ。主人公の女の子(堀北真希)は、高校2年生。クラスメートの . . . 本文を読む
まるで石井隆はデビッド・リンチの『インランド・エンパイア』と同じようなことをやろうとしているように見える。女優が映画と現実を混同してしまい、自分自身の心の在り処を見失ってしまう。
何よりよく似ているのは、現実と空想、映画とのあわいが明確でないという部分だ。だから全てが幻想に見える。映画の拠りどころを放棄するので、摑み処がなくなる。2時間なり3時間なりを見続ける力はそこにあるとい . . . 本文を読む
大林さんは、時に自分の映画が、バランスを崩してしまうことも厭わない。その結果、この映画はギリギリのところで失敗している。本作は、伊勢正三のヒット曲からイメージした第2弾である。前作『なごり雪』がよかっただけに、これはとても残念な出来だ。
貧乏だからといって、今時「わたしと援交しませんか」なんて、言う女子高校生ですらない、20歳過ぎの女の子なんていない、と思う。まずこの設定に退く。なのにそこを . . . 本文を読む
2時間以上の上演時間を使ってこんなにも単純な話を、取り留めもなく見せてしまうのは、ちょっとあんまりではないか。エンタメ芝居として絢爛豪華な世界を、自分たちにできる範囲でやろうとしている気持ちはわかるが、まず必要なのは、台本自体の面白さではないか。そして、魅力的な役者たちのキャラが生かされること。その2点に尽きる。
全く意味を為さない回り舞台とかはいらない。花魁たちの衣装はなかなか煌びやかで悪 . . . 本文を読む
シリーズ第3弾。ソダーバーグはハリウッドのメジャー大作なのに、まるで趣味で作っているようにマニアックな描写で見せる。太いストーリーを「どどん」と見せるのではなく、小技ばかりで、チマチマ見せていくから、映画としては、全く弾まない。
シーンも細切れで、何をやっているのやら、よく分からないような部分も多い。これだけのスターを集めて、こんなにもユルユルな映画をわざと撮ってしまうなんて、なんだか人柄が . . . 本文を読む
ひと夏の思い出が溢れ出てくる。もちろん映画は夏だけが、描かれているわけではないが、そんな気分にさせてくれる、ということだ。
中2の夏、東京からイケメンさんの転校生がやって来る。そよ(夏帆)の学校は小学、中学あわせても6人しか生徒がいない。そんな、とんでもない田舎の学校だ。大沢くん(岡田将生)は彼女にとって初めての同級生となる。
みんなで一緒に海に泳ぎに行ったこと。祭りの夜のこと。初めての . . . 本文を読む
久しぶりに椎名さんの本を読んだ。相変わらずで楽しかった。世界を飛び回り、原稿に追われて、バカしてる。正直言うともう椎名さんを読んでも、なんら新しい発見がないから、読む気にならなかったのだが、最近疲れてるのであまり何も考えなくていいものが読みたかったので、読んでよかった。
懐かしい。考えてみれば、椎名さんの本は200冊くらい読んでいる。書くほうも書くほうだが、読むほうも大概である。
『たき . . . 本文を読む
このミステリーは、演じることについての、ありとあらゆる仕掛けを用いて見せてくれる。何が本当で何が嘘なのか、いったい何を描こうとしているのかすら、よく分からないまま、いくつもの話が並行して、綴られていき、それがラストでようやく一つになる。(が、あまりカタルシスがない)
『中庭の出来事』という芝居が、劇中劇として、描かれる。分量的にはかなりあり、この中にこの小説が、納まってしまうくらいだ。芝居の . . . 本文を読む
連続ドラマの続きを見ているように、さらに4エピソードが語られていく。TVドラマなら、このままずっと視聴率が落ちるまで続いてもいい。軽く読み流すことが出来る。とても心地よく。
シリーズ第2弾。今回も4話構成1年の出来事。ラストでついにマードックさんと藍子が結婚式を挙げる。めでたしめでたしである。昔のドラマはいつも、こういう大団円である。予定調和が美徳だった。この小説はそんな時代へのオマージュだ . . . 本文を読む
舞台中央には0014と書かれたグリーンの箱。台湾の軍隊で使われているものらしい。それをテーブルにして使う。後ろに置かれた椅子に座る女。コの字型に組まれた背景の美術は、オレンジを基調のした禍々しい雲。無表情な女の口の中に水を入れていく。どんどん入れていく。溢れてくる。さらには、水が入っていたボトルを口に突っ込む。顔に布がかぶせられる。
絵画、オブジェ、人。それらが一体となって、一つの世界を作り . . . 本文を読む
こういう映画は、何をさておき劇場の大スクリーンで楽しんで欲しい。お茶の間のDVDで楽しむには惜しい作品なのだ。ただのアクション映画だからこそ、映画館がよく似合う。
実はこの7、8月は忙しすぎて疲れが取れないまま今日まで来た。なのに、個人的な事だが、仕事で、うまく結果が出ずがっかりしていた。あれだけ頑張ったのにうまくいかない、そんなこともある。
だから、今は何も考えず、アクションを見て . . . 本文を読む
20代半ばの女の子の感傷的な気分だけで1本の芝居を作られたりしたら、ちょっと参るよな、なんて声が聞こえてきそうだ。1時間ほどの短い芝居は内容が内容だけに、決して短いとは思わない。
女の子の感傷的な気分が、繰り返し、繰り返し語られていき、それは見ていて辟易させられる。作者は、奥行きのあるドラマ作りをここでする気は全くない。彼らの背景も必要以上には一切語られない。この一瞬の気分だけが、この芝居の . . . 本文を読む