こういう小説が課題図書は好きだよな、なんて思いながらなんとなく読んでいたが、だんだんこの作品世界に嵌っていき、気が付けば最後まで読んでいた。『となりのトトロ』と『クレヨンしんちゃん』を足して2で割ったような不思議な作品である。
ガンで入院中の母親、子供二人を抱えて、家で仕事をする父親。彼らを陰で支える祖母。彼らが織り成す物語。語り部は父親だが(母親によるエピソードもあるが)主人公は、実は彼ら . . . 本文を読む
2時間の長さを全く感じさせない芝居だった。だいたい座り芝居が多く動きも少ないから、単調になりそうなのに、こんなにも緊張感溢れる芝居として、立ち上げられたことに感心した。8人の女たちが、ひとりとして脇役に甘んじることなく、それぞれがこの芝居の重要なポジションを担う。それは、演出家が、役者たちのことをよく理解しており、全体の構成力も併せ持っていることの証明であろう。作、演出の京ララ(まとば小鳩)が作 . . . 本文を読む
終わった。ラスト1巻は一気に読んだ。読書は通勤のための往復の時間だけ、というのが原則なのだが、今回は掟破りしてしまった。
巧と豪が最後にはどこに行き着くのかが、気になったからだ。これは大河ドラマだと思っていたが、なんとだいたい1年間の時間に限定した話だった。映画はちゃんと6巻のラストまでを完全映画化していたのだ。6冊を2時間に抑え、ラストままで全く同じ。横手2中と新田東の再戦で終わる。
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初演のアイホール・バージョンとは台本はきっとほとんど変わらないはずだが、仕上がった作品は全くと言っていいほどに、イメージの異なるものになってしまった。もちろんそれは三枝さんのねらい通りであろう。
何よりも、今回のウイング・フィールドに合わせた今井弘による美術が素晴らしい。ほんの少しの違いが作品世界自体すら変え兼ねない。この芝居は初演以上に主人公たちを追い詰めていく。2階の奥座敷のような狭い部 . . . 本文を読む
観客の平均年齢は軽く60歳は超えている。はずだ。あまりの凄さに何度も客席をチェックしてしまったから間違いない。プラネットで全席椅子席興行なんて始めて見たが、さもありなんと思う。お年寄りには桟敷とか段差だけの客席はきつい。
そして、芝居である。主人公の3人もまた60代くらいではないか?筋金入り老人パワー全開のお芝居を久々に見た。もちろん見る前からある程度は想像していたし、それなりの心積もり(そ . . . 本文を読む
あんなにも爽やかな映画の原作が、こんなにもドロドロした話だったなんて、まぁ、多分こんなことだろうとは、思っていたが、それにしても予想以上の展開で実は驚いている。児童向けの小説というジャンル分けすら可能なもののはずなのに、ここで描かれることはあまりに重く、つらくて、子供たちは、はたしてこれを楽しめたのだろうか、なんて不安になるほどだ。
だが、もし、これをしっかり受け止めたのなら、それは凄いこと . . . 本文を読む
3~4巻は映画がかなりはしょった部分だが、小説ではこういう描写にしっかり時間をかけることが可能だ。野球部が活動停止になったり、豪と巧がうまくいかなくなり、お互い話もしなくなるという読んでいてイライラするような話が続く。
展西たち上級生のいじめ、暴力行為による活動停止から横手2中との自分たちだけの練習試合まで。話のテンポが悪い。このへんはじっくり描く必要を感じない。戸村先生と管理職との軋轢は面 . . . 本文を読む
『駅伝 ekiden』の浜本正機の待ちに待った第二作である。こんなにも長くなるとは思いもしなかった。もっと軽く次々に新作を発表してくてそうな感じだったのに。あれからいったい何年たったのだろうか。
彼の誠実で妥協のない仕事ぶりには好感が持てる。人情ものの時代劇なんていう今時ありえないような題材を与えられ、それにもかかわらず、しっかりそんな世界に命を吹き込んでいる。200年前の江戸の風景はとても . . . 本文を読む
ホウ・シャオシェンの『童年往事』に匹敵する傑作がガーデンシネマでひっそり公開されている。たった二週間、モーニングショーのみの上映である。クー・チャンウェイ初監督作品。これは必ず今年のベスト・ワンになるはずである。よく似たタイプの昨年公開された『胡同のひまわり』には、がっかりさせられたが、こちらは本物である。
文革が終わった77年を舞台にして、ある家族の姿を、一見感傷的に描くように見せて(映画 . . . 本文を読む
89年作品。87年から3年間。ある夫婦とその娘のとある1日を描く。3部構成で、3日が、同じように描かれていく。氷河期3部作の第1章であると同時にミヒャエル・ハネケのデビュー作でもある。この1作で彼は自分のスタイルを確立している。これは彼の代表作といってもあながち間違いではない。まさに完璧な映画だ。
いつもと同じように理由は描かれない。幸福に見える家族の1日が描かれていく。朝6時、起床。夫は仕 . . . 本文を読む
『ピアニスト』の後でハネケが撮った終末を描く近未来SF映画。(ということにしておこう)企画自体は『ピアニスト』以前のものだが、、こんなにも地味な内容ゆえ制作会社が二の足を踏んだようだ。『ピアニスト』の成功でなんとか完成に漕ぎ付けたのだろう。
オーストリア時代の過激な映画とは一線を画す静かな映画だが、底を流れるものは全く変わってない。
世界が終わってしまった後、それでも生き残った人たちが、 . . . 本文を読む
圧倒的に古すぎて、もう今の時代には力を持たない台本だ。鴻上尚史は一時代を築いた作家だが、彼の台本は一瞬で古くなってしまう。90年代なら、これは圧倒的に面白く見れたはずだが、こんなにも無意味な内容になってしまっていることに驚く。
鴻上尚史は高校生が大好きで、HPF(高校演劇祭)でも盛んに取り上げられてきた。『ハッシャバイ』『リレイヤー』とか『天使は瞳を閉じて』なんていったい何度見たことだろう。 . . . 本文を読む
ミヒャエル・ハネケのデビュー作から、『ピアニスト』に至るまでの作品からセレクトして、5本がリリースされた。今まで日本で紹介されることがなかった彼の作品は、過激すぎて、とても劇場で商売できるようなものではない。
DVDリリースされた今回の作品だって、コアなファン以外誰一人レンタルすらしない、というのが現状である。この3ヶ月間我が家の近所のツタヤで、ただの1度すらレンタルされているのを見た事がな . . . 本文を読む
『オキナワの少年』の新城卓が、『秘祭』に続き石原慎太郎とコンビを組んだ大作である。新城は単純に慎太郎のお先棒を担ぐような人ではない。この映画をただの特攻隊賛美のようなものにしたりするはずもない。
「靖国で会おう」という彼らの言葉が、きな臭いものに感じられるのは、今の時代の目で彼らの言葉を聞くからであり、彼らの立場に立ったなら、それは純粋なものでしかありえない。そのへんは曲解せずに映画を見なく . . . 本文を読む
前衛音楽なんてよくわからないけど(まぁ、ほとんどのことがわからないものだらけだが)このカルテットは面白かった。アルデイッテイ弦楽四重奏団は、きれいに流れるように音を聞かせるのではなく、ノイズすれすれのものを緊張感溢れるタッチで見せてくれる。あっという間の40分だった。
これは余談だが、本番前、ホール裏側の交差点でメンバーの3人が、立ち話をしているのを目撃した。なぜ、3人なのかは、不明だし、 . . . 本文を読む