ネットによってつながる世界。一日中スマホから手を(目を)離せないで、スマホだけで生きているような人たち。まぁ、今の時代はそんな人ばかりなのだろうけど、この映画は決してそんな人たちを非難するわけではない。そこにある真実を描こうとする。現実を受け入れたうえで、何が必要なのかを考える。
アメフトの選手で、学園のヒーロー、エリートだった男の子が、クラブを辞めたいと、言う。スポーツなんか意味がないと。そん . . . 本文を読む
この甘い小説を読みながら、(いつも中村航はこんなだ)それでも、この優しさに涙する自分は嫌ではない。それくらいの優しさっていいじゃないか、と思う。孤独に死ぬことを望んでいるように見える祖父。東京で傷つき、もう立ち直れないまま、帰郷した僕。
そんなふたりが、東京で再びオリンピックが開かれるというニュースを通して、立ち直っていくまでのドラマだ。1964年、東京オリンピック。その直前の頃、東京で暮らし . . . 本文を読む
小栗康平監督の新作である。師匠である浦山桐郎と同じで超寡作ある彼がなんと10年振りで放つこの作品はいつもの彼の作品のように妥協のない緊張感を湛えた秀作だ。本物の映画を見た、という満足感に包まれる。隅々まで贅の凝らされた厚みのある映像は圧倒的で、静謐を湛えた作品。
藤田嗣治のパリ時代と戦時中の日本での描写を描く。ふたつの時代を切り取る。それをピンポイントで描く。日常描写を静かに描くからドラマチッ . . . 本文を読む
外輪さんがまたまた大胆な企画を打ち出してくれた。今回は名村造船所の跡地、ドラフティングルームを使い、夕暮れから日没の時間、自然光を取り込んで、見せる(でも当日は天気が悪くて、最初から暗かった!)2時間越えの大作だが、こんなにも、動きが激しく、感情が前面に出るにもかかわらず、とても静か。
このだだっ広い空間を縦横に生かしきった。こんな広い舞台空間を持つ芝居はなかなかあるまい。贅沢だ。しかし、セリフ . . . 本文を読む
この夏、新劇場版が公開されて、その前にこの4部作をちゃんと見ておこうと思いながらも、なんとなく、先送りにしていた。夏の新作は面白かったけど、なんだか物足りなかった気もする。お話の情報量が少ない。だから、少し間延びした。1時間で終わるこのシリーズのほうが、完成度が高いと思った。
でも、今回見残していたこの第4作をようやく見て、問題は上映時間ではなく、1本1本の精度の問題かな、と当たり前のことを思 . . . 本文を読む
2002年の作品だ。月舟町3部作の第1作。正直言うと、これはそれほど、面白くはない。これから読み始めていたらなら、こんなにもハマらなかったかもしれない。だから、順番はよかったかも。最初は小川洋子との共作で彼のことを知った。クラフト・エヴィング商會、として。そのあと、『ソラシド』を読んで、ハマった。好きだな、と思った。こういうこだわり。どうでもいいことなのだけど。
『それからはスープのことばか . . . 本文を読む
毎年、この時期、ウイングフィールドで、あみゅーずは公演を打つ。今年も彼女たちが帰ってくる、って感じだ。そんな安心感が彼女たちの作品の魅力。要するに、見るだけで、ほっとする。変わらないことがうれしい。安心して見ていられる。それって、寅さんシリーズのような感じだ。このまま、条さんと笠嶋さんが亡くなるまで(ごめんなさい、縁起でもない)続くといい。そんな気分で今回も見る。
今回のテーマは「みち」。とい . . . 本文を読む
久しぶりに彼女の小説を読む。デビュー作『蛇にピアス』以降、あまり興味を持てず、最近は読んでなかったけど、久々に読むこの最新作は、なかなか面白かった。
4話からなる連作。4人がロンド形式でつながる。(でも、最後にもとのところには戻ってこないけど)いずれも直接的ではないけど、東日本大震災の影響を受けている。あの震災によって人生が狂った。こんなはずじゃなかった。少しの齟齬のはずが、気付くとすべてを失 . . . 本文を読む
3時間に及ぶ大作である。それを無名の若い監督、蔦哲一朗がデビュー作として撮った。しかも自主映画として、である。さらに驚くべきことは、彼がデジタルではなく35ミリで撮影した、という事実だ。今時、メジャー大作映画ですらフィルムを使わないのに、頑固にフィルムにこだわった。デジタルの画像では表現できないフィルムの温もりを重視したのだ。しかし新人監督がそこまでするか? 普通なら予算の関係で一番に断念すると . . . 本文を読む
このノーテンキでバカバカしい映画を見ながら、なんだか少し幸せな気分になったのは、僕がちょっと疲れていたからだろうか。ふつうなら怒るところだ。こんなバカに2時間つきあうほど暇じゃない、と。でも、ほんとうに暇じゃないのか? というと、そうでもない。別にすることないし。ぼーっとしているだけ。あきれるくらいにいいかげんで、ポジティブなバカ女の巻き起こす騒動をあんぐりと見ている。
こいつ、ほんとうに医者か . . . 本文を読む
とうとう『ハンガーゲーム』が完結した。もともとこの映画を見る気はなかったのだが、1作目はたまたま時間が合うから見た。(芝居を見るまでのつなぎとして、その日うまく嵌ったのだ)もちろん、深作欣二監督の『バトルロワイヤル』のパクリのようなお話には少し興味はあった。アメリカ映画はここまで露骨に同じような話で映画を作るって何なんだ? という興味だけど。
ただ、見終えたときには、もういいわ、と思ったのも事 . . . 本文を読む
3つの短編からなる。独立したお話だが、連作のようにも見える。すごい新人が出てきたものだ、と感心する。大胆なタッチに圧倒される。最初の『2とZ』の主人公がどんどん変わっていくそのスピード感に圧倒された。並行して描かれるいくつものエピソードが集約され決着がつく。
だが、次に彼のデビュー作『パレード』を読むと、こっちのほうが大胆で、先の作品は2番煎じだったことに気付く。いきなりの戦争。有無を言わさず . . . 本文を読む
地方の映画館が閉館する。歴史ある建物が消えていく。映画の思い出は映画館の思い出でもある。今までも幾度となくこういう映画は作られてきた。(谷口正晃の『シグナル 月曜日のユカ』は佐々部清『カーテンコール』とか)今回は広島の福山市にあった大黒座という映画館が舞台だ。ここ出身の監督である時川英之が映画化した。彼がどんな監督なのかは知らない。今まで自主映画を作ってきた人なのだろうか。彼が作った劇場用映画を . . . 本文を読む
またまたこういう私小説のようなタッチで、思索的で、なんだか日記論文でも読んでいるようで、難しいからまるで頭に入らないし、でも、読んでいることは楽しい。なかなか読めないし、読んだ鼻から忘れていくから、何を読んでるのでしょうか、という感じなのだが、小難しい雑談を繰り出すようで、なるほど、と感心しながら、こんなもの読んでなんになる、とも、思う。だいたい、デビット・リンチの『インサイド・エンパイア』(と . . . 本文を読む
生まれたときから、歴史に残る傑作、というものを初めて見た。こんなにも端正で、ストレートに、人間の本質に迫る作品はない。たくさん芝居は見ているし、映画や、小説も読んでいるけど、こんな気分にさせられることはない。見た瞬間は感情的になって、「これは、すごい、今年のベストワンだ!」なんて、思うことはよくあるけど、冷静に「これは、歴史に残る作品だな、」なんて思うことはめったにない。というか、そんなことを今 . . . 本文を読む