昨年の『織田信長』を見逃している(悔しい!)から久しぶりのブルーシャトルプロデュースである。先日見た劇団ひまわりでの公演に続く大塚雅史、作・演出作品。これはエンタメ作品だけど、何度となく取り上げてきた幕末期を生きる若者たちの群像劇は青春ドラマとしても楽しめる。
彼らが不安な時代を全力で生きていく姿はいつも感動的だ。これは偉人伝ではない。名もない若者たちの戦いの物語。吉田松陰を演じた松田岳が素晴ら . . . 本文を読む
実を言うと、これはあまり見る気がしなかった。だけど、芝居と芝居の間の空白時間、たまたまこれがぴったりあったから半分時間潰しとして見ることにした。なんだか君が悪い映画だな、と思い見ることを避けていたけど、やはり予想通りの作品だった。とても不快だ。グロテスクというわけではないけどこんな嫌な映画をよく作ったものだ。ここには一切説明はない。主人公のミア・ワシコウスカ演じる栄養学教師ノヴァクが、ではなく、こ . . . 本文を読む
11月公演に続いて今月も冨田倶楽部を見ることが出来た。彼らは今年の春からスタートして来春までの1年で10本(ほぼ毎月1本)の芝居を作り上演する、なんていう無謀なことに挑戦している。そんな冨田倶楽部の12月公演。今回は堀江佑未の作品。演出クレジットはない、ということはみんなで相談して作っているのだろう。もちろん中心メンバーである升田さんと作者である堀江さんが(たぶん)リードしているのであろうが、台本 . . . 本文を読む
『ランチ酒』シリーズのスピンオフ作品。祥子ではなくまだ若い世代(26歳)の恵麻が主人公になり見守り屋見習いをする短編連作。読みやすいし、楽しいし、なんだか幸せな気分になる。朝からお酒を飲んでいるけど、夜勤明けの一杯がとても美味しそう。
みんなが働く時間に仕事を終えて美味しい食事と一杯のお酒。東京のさまざまな場所を舞台にしてあさ酒を楽しむ見守りの後の朝。いろんな人たちがそれぞれの場所で . . . 本文を読む
この手のイラスト表紙本は読むことにテレるけど、勇気を出して読み始める。やはり当たりだった。攻める。ガンガン攻めてくるからしっかり受け止めなくてはならない。同性愛者でフェミニンで自分の性状を包み隠さずあからさまに世界に伝える。配信動画でみんなに楽しんでもらう。自分の生き方を公開している。共感する人たちもいるけど、きっと気に入らないと嫌悪する人たちもたくさんいるだろう。だけど気にしないし、関係ない。自 . . . 本文を読む
深津戯曲にオダタクミが挑む。何故『うちやまつり』ではなく『熱帯夜』だったのか、が気になっていた。深津篤史の代表作に取り組むのは敷居が高いとでも思ったのか。本人に聞きたかったけど、それはまたの機会にしよう。
仕上がった『熱帯夜』が素晴らしすぎてそんな疑問は瑣末な話だと思う。この作品のわからなさに痺れる。桃園会の同作品以上のわからなさ。これは『うちやまつり』の前日譚として書かれたスピンオフ作品である . . . 本文を読む
今年のクリスマス公演は昨年に引き続いてしろみそ企画のなかしまひろきの作、演出。(というのは間違いで、なかしまさんは一昨年! 昨年は伊地知さんでした)彼がふだんの邂逅とは一味違う世界を見せてくれる。ファンタジーだけど、今回はあまりに等身大の人たちの群像劇でこんな邂逅は見たことがない。なかしまさんだからこそ可能だった邂逅ワールドだろう。ここは昭和に建てられたオンボロアパート。そこで暮らす訳あり住民たち . . . 本文を読む
劇団大阪、シアター生駒の杉本進が演出、主演する。娘を演じるのはシアター生駒の中西康子。もちろんこれは言わずと知れた井上ひさしの傑作戯曲である。公演会場は東生駒ギャラリー宗。狭い空間が心地よい。このふたり芝居を朗読劇として見せる。原爆投下から3年後の広島。ひとりぼっちの娘のもとにあの日亡くなった父がやって来る。なんと客席と役者たちとの距離は1メートルない。こんなにも近くで芝居を見るなんて生まれて初め . . . 本文を読む
このかわいい恋愛小説(この手のイラスト表紙の本)には少し身構えてしまう。だけど勇気を出して読み始めると、まさかの出会いもある。まぁこれは稚拙だけど、確かな覚悟には貫かれているからよしとしよう。過去を書き換えてふたりがもっと幸せに出会うために。そんなドラマである。
お話の仕掛け自体は悪くはないとは思ったが、整合性に振り回されてお話があまり面白くならないのがツラい。辻褄合わせは絶対必 . . . 本文を読む
『最高のアフターヌーンティーの作り方』に続く涼音と達也のその後を描く。とうとう結婚に漕ぎ着け念願の自分たちの店を開店させることになったところから始まる。
アフターヌーンティーに憧れて老舗桜山ホテルに入った涼音が11年勤めた職場を離れる。幸せの絶頂のはずだったのに違和感。が。夫婦別姓の問題がふたりの関係に翳りを与える。日本の婚姻制度の不備が若いふたりを悩ませる。昔からのやり方を頑な . . . 本文を読む
お正月映画。子供から大人まで楽しめるファミリーピクチャー。「翔んで埼玉」や「テルマエ・ロマエ」シリーズの武内英樹が監督する。永野芽郁が赤血球役、佐藤健が白血球。人間サイドの主役は阿部サダヲ、その娘を芦田愛菜というキャスティング。そこに豪華俳優陣が傍に揃う。永野芽郁が素晴らしい。あまり何も考えずにひたすら酸素を運んでいるだけだけど、それがいい。純粋に楽しんで仕事をしている女の子って感じ。とてもキュー . . . 本文を読む
カバーのイラストからこれはなんだかかわいい小説ではないか、と思って読み始めたら、なんとまぁこれは小説ではなく、河崎秋子が羊飼いだった頃の話。というか、彼女は作家になる前は羊飼いだったのだ。
大学卒業後、羊飼い修行をしてやがて2匹の羊からスタートする15年の軌跡を描く。これはそんな彼女が羊飼いを止めて専業作家になるまでのお話でもある。
だからこれは小説なんかではなくノンフ . . . 本文を読む
まるで『サザエさん』や『ちびまる子ちゃん』の世界。なんでもない日常のスケッチだ。あのまるであれらの短編アニメを見ているよう。1話10分くらいのスケール。(読んでたらもっと短いけど)毎日の日々が綴られる。特別なことは何もない。先日TVドラマ化された『団地のふたり』の続編である。小林聡美と小泉今日子が主演して話題になった。
なっちゃんとノイチ、ふたりは52歳。この団地で生まれ育った幼 . . . 本文を読む
『2.43清陰高校男子バレー部』の作者が贈る青春小説。4篇からなる中短編集。いずれも中学生が主人公である。時代を超えてあの頃と今をつなげる作品がふたつ。最初の『零れたブルースプリング』はお互いを偽って文通する男の子たちの話で、あまりに可愛くて笑える。昔こんな映画やドラマがあったような気がするけど。それくらいレトロ調お話。風船で届いた手紙から始まるふたりの往復書簡。怜を女の子だと勘違いした満夫。仕方 . . . 本文を読む
2021年の韓国映画。新鋭キム・セイン第1回監督作品。こんな映画をよく作った。そして僕も最後までよく見たものだ。2時間20分。苦痛の時間。だけど目が離せないし、気がつけばラストまで見ていた。えっ?もう終わりなの、と驚くばかり。ここで突き放されてもオロオロするばかりだ。これは母親と娘の戦いの記録である。団地に住むふたり。娘はもう20代後半になるのに、母親のもとから離れられない。だが彼女は母を心から憎 . . . 本文を読む