素晴らしい映画だった。さりげなく悲惨な日常を綴っていき、あれっと思う。最初は人間関係もよくわからないくらいだ。ただ障害を持ち厄介者扱いを受けている女と同じように兄から邪魔者扱いされている男が結婚して、(厄介払い)空き家をあてがわれて、ふたりがぎこちなく生活を始めることはわかる。そこからは彼らの暮らしを淡々と見せていくだけ。慎ましく、貧しく、ささやかな日々。彼女はなかなか上手くコミュニケーションは取 . . . 本文を読む
中川真一の新作である。もちろんそれは二月病の新作だ。初めてここで彼らの芝居を見てから、もう10年以上の月日が経ったのか、と感慨に耽る。(調べたら『Night Way苗と上へ』を見たのは2014年だったようだが)彼らはウイングカップに参加した。驚くほどに下手な芝居だった。なのに驚くほどに心に沁みる芝居だった。技術はないけど、伝えたい想いだけは溢れるほどにあり、舞台からそれが確かに溢れてきた。それから . . . 本文を読む
これは昨年夏、ちんどん芸能社として公演されるはずだった作品である。コロナのため直前に中止されたようだ。久々の武藤さんの演出で、とても楽しみにしていただけに残念だった。(でも、実をいうと僕はあの週、用事があって見ることが出来なかったのだが)
今回その中心となったキャストが再結集して、新たに場所を変えて仕切り直しの公演となった。ウイングフィールドから未来ワークスタジオになったことで違うアプローチが可 . . . 本文を読む
今泉力哉監督の最新作。Netflix映画で、配信と劇場公開が同時になされる。2時間11分の長尺だが、とても地味で小さな映画だ。有村架純が元風俗嬢を演じる。嫌らしくはないし、嘘くさくもない。とてもリアルでなおかつ不思議な女を自然に表現する。今は町の弁当屋さんをしている。自分から「以前風俗をしていた」とあっけらかんとお客さんにも話している。誰にも偏見なく屈託せず接している。小学生から絡まれる浮浪者を助 . . . 本文を読む
たった62分の映画だ。昨年劇場公開されていた作品。話題になったきくちゆうきの4コマ漫画「100日後に死ぬワニ」を『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督とアニメーション監督ふくだみゆきが共同で監督・脚本したアニメ映画だ。豪華声優陣は、実写映画なら凄いキャスティング。でも、この地味な映画の中で彼らは控えめに演じる。
とてもいい映画だ。ほとんど動かない絵もいい。ほとんどしゃべらない主人公たち。描かれる . . . 本文を読む
来週見る朝井リョウ原作の映画『少女は卒業しない』の予習として見た。中川駿監督の前作。2016年作品。彼がこの作品に続いて今回初長編デビュー作として『少女は卒業しない』を選んだというのは納得できる。彼の興味の焦点は明確だ。だがそれはもちろん「かわいい女の子たちの青春映画を作りたい」とかいう安易な考えからの選択ではない。彼の少女たちの時間を見つめる視線はまるでドキュメンタリーのようで新鮮だ。これはスト . . . 本文を読む
とうとうこんな小説が登場した。というか、こんな小説を手にするようになったというほうが正確か。70代の女性が介護付き老人ホームに入居して過ごす日々を描いた小説である。あと少しで高齢者の仲間入りが可能な年齢になり、興味の範疇にこの手の小説が入ってきたのだ。しかも以前の要介護者の世話をする立場から介護を受ける立場へのシフトチェンジである。2年ほど前に母を亡くして、介護から解放されたばかりなのに、気が早い . . . 本文を読む
これもNetflixの新作映画だ。慎重に選んで見ているが、はずれも多い。まるで情報がない状態で簡単な解説と1枚の写真(予告編)くらいを手掛かりにして見るからだ。しかも目次もない膨大な作品の中から探すのは困難(不可能)だから、どうしてもリスト画面に出てくる映画から優先して選ぶしかない。
『ゲットアウト』を思わせるホラータッチの映画だ。特別なことは何も起きてないのに、嫌な予感がする。それは冒頭からそ . . . 本文を読む
パク・チャヌク監督の新作はなんとメロドラマだ。だけど、彼のことだから一筋縄にはいかない。こんなのありか、とあきれるばかり。それは驚きではない。あきれながら魅了されている。刑事と犯人が恋に落ちるなんて安い映画ならよくある話だ。それをあえてパク・チャヌクは堂々としている。だからもちろん確信犯なのだ。
女は夫を殺したはず。だが完全犯罪で証拠はない。男は彼女の罪を暴くが逮捕には至らない。女はさらに次の夫 . . . 本文を読む
このタイトルに心惹かれてこれを読むことにした。田丸雅智が書き綴る「おとぎカンパニー」シリーズの一作らしい。僕は今回初めて読んだけど、少し長めのショートショートという感じで、読みやすい作品だった。10篇からなる短編集。
最初はタイトルにある遅刻する食パン少女のお話。(『街角の恋』)実にたわいもないお話で読み流すだけだ。でも、それなりには楽しく読める。すぐに読み終えることができるので通勤(今は週に2 . . . 本文を読む
これは6篇からなる短編集。タイトル通り、6つの愛の寓話集。大切な記憶を失う前にちゃんと話しておくこと、書き留めておくこと。認知症になった女性のお話から始まる。この最初のエピソードの重要なアイテムは「かえるの縫いぐるみ」。幼い頃からずっと大事にしてきた。次のエピソードでは「犬」、そして「猫」、「かご」(バスケット、ね)、「馬」。最後は「本」(そこに綴られた自分の記憶)。いずれも相手は人間ではない。愛 . . . 本文を読む
これはなんだが不思議な映画だ。ある家族の物語。定年を迎えて毎日何もせず家にいる面倒な夫。暇なら家事手伝いくらいしろと思うけど、何もしないでいる。妻は家族の面倒を見て、家事もこなして、新しい家を探している。夫の親が亡くなり介護から解放されて一安心。今の願いは、施設から自分の母親を引き取りたいと思っていること。そのために新しい家を物色している。これは2022年の台湾映画。 Netflixで配信されてい . . . 本文を読む
祖国に戻ったポール・ヴァーホーベンはアメリカ時代のような商業映画とは一線を画する自分が撮りたい映画を自分のやりたいように作る。今年御年84歳なのに、旺盛な創作意欲は損なわれることなく絶好調だ。『ブラックブック』『エル ELLE』に続き今回もまたあり得ないような映画を堂々と作る。顰蹙を買うことなんて意に介さない。エロ下品で、崇高。アメリカ時代の『氷の微笑』は『ショーガール』だって決して褒められたもの . . . 本文を読む
配信で何本か映画を見たけど、選択が難しい。膨大なまるで未知数の映画(めぼしい映画は劇場で見ているし、見逃した映画は配信されるとすぐに見ているから)から見る映画を選ぶのだが、冒険が当たるといいけど、未公開作品はその選択肢が多すぎて大変だ。つまらない映画を見た時のガッカリ感は半端じゃない。かなり落ち込む。空しくなる。
『オールドピープル』はNetflixで見た2022年制作のドイツ映画だ。ホラーなの . . . 本文を読む
ウイングカップ二回目の参加となる劇的★爽怪人間の新作は前回とはまるでタッチが違う作品になっていて感心する。作、演出、主演を兼ねるインギの熱演が無駄に空回りする。さらにはこの題材なのにそれを笑える作品にするという無謀さ。この題材でコミカルに仕立てるのは結構危険だ。だがそれが今回のミッションのようなのだ。そんなかなり難しい作業に挑戦している。段ボールで作られた舞台装置も危い。今にも壊れそうだ。(そして . . . 本文を読む