石川寛監督の3作目。今回もまるで風のような映画だ。ここには何もない。ただ通り過ぎていくばかり。3人の女の子たちの日常をスケッチする。しかもほんの数シーンだけ。彼女たちがどんな子でどんなふうに毎日を過ごしているのか、それすら伝わらない。そんな点描のいくつかがあり、3人が旅に出る。
しかもそれはほんの小さな旅だ。1泊2日。6年振りに友人に会いに行く。彼女は自殺したらしい。でも、死ななかった。今、 . . . 本文を読む
こういうギャング映画が2013年に公開されるのはなぜだろうか。最近のアメコミヒーローもの映画全盛時代に抵抗するように古き良き時代のアクション映画が膨大な制作費をかけて作られる。アメリカではそこそこヒットしたかもしれないが、日本ではまるでヒットしない。今時こういうアナクロ映画に人はこない。だが、映画自体はとてもおもしろいし、とても贅沢な作品だ。なんだか簡単に消えてしまうのが惜しい。大体これだけの制 . . . 本文を読む
『そして父になる』を見てしまった後では、どんな映画を見てもむなしい。あの映画以上の感動はないからだ。もちろん、あの映画を超える映画を観なくてはならないわけではなく、しばらくは映画を見ないで静かに生きていこうと思えばいいだけの話だ。だが、そうはいかないのが、人生である。というか、僕、である。あの映画に匹敵する映画を観なくては収まらない気分で、でも、新作に挑戦するのは無謀なので、この映画を久々で見る . . . 本文を読む
とても読みやすい小説だ。こういうのを世の中ではライトノベルと呼ぶのだろうか。(実はそうじゃない、ようだけど)それにしても、タッチが軽い。そのこと自身は決して悪いことではないけれど、読み終えてなんか物足りない。しかもなんだかまじめ過ぎる。
まずこれは大前提として、恋愛小説だけど、たまたま聴覚障害者をヒロインにしている。そこから生じる様々な問題が真摯に描かれる。作者は「たまたま」ではなく、意図的 . . . 本文を読む
是枝裕和監督の新作。今年のカンヌ映画祭で審査委員賞を受賞した作品。当然なのだが、凄い映画だ。いつもと変わらないスタンスで家族の問題を扱う。前作『奇跡』の続編のような作品でもある。『誰も知らない』の姉妹編でもある。というか、彼の作品はいつも、つながっている。
2組の夫婦の話だ。同じ日に同じ病院で子供を産んだ。それから6年。2組の夫婦の子供が取り違えられていたことがわかる。そこから始まる物語。こ . . . 本文を読む
同じ週末に公開の映画で先日見た『エリジウム』とこの映画。あまりにタイトルが似通い過ぎないか。間違って見に行ってしまい、こんなはずじゃなかったぁ、と思う人が全国に100人くらいいるのではないか、と心配になる。(というか、そんなバカな客は僕だけかぁ。というか、別に間違って見たわけではないけど)
ということで、今日は『ビザンチウム』を見てきた。ニール・ジョーダン監督の久々の新作である。(先日DVD . . . 本文を読む
ピーター・ウェーバーは先日『終戦のエンペラー』を監督した人なのだが、彼の旧作でスカーレット・ヨハンソン、コリンファース主演の映画がこれだ。フェルメールと彼がモデルにした少女のドラマ。ここまでよく似させたものだ、とため息がでるほど、全編フェルメールの絵画の世界。ヨハンソンはフェルメールのために生まれてきたのではないか、と思えるほど。まぁ、生きた時代が違うから、フェルメールは彼女ことを知る由もない . . . 本文を読む
短歌である。短歌の世界を小説化したようなもの。いや、違うかぁ。短歌が全編を彩る。じゃぁ、歌物語の現代版か。しかも、主人公たちは短歌を作る人だし。2人の男が主人公。25歳の歌人。19歳の大学生。たまたま出会ったふたりが、お互いを意識しながらも、短歌の世界を邁進する話、というものちょっと違うけど。じゃぁ、なんなんだよ、と自分で自分にイライラしながら、ちゃんと説明するのが難しい。ホモの話ではないよ。で . . . 本文を読む
ウイング・フィールドの若手劇団応援企画である「ウイング・カップ2013」開幕である。このシリーズも今回で4回目となる。今年の特徴は参加劇団の平均年齢の若さ。なんと22,3歳という話だ。先日のオープニングである前夜祭に参加してその若々しさに驚く。ウイングの客席を埋めた参加劇団の面々の顔を見ただけで、確かに若いわぁ、と実感できる。それって凄い。まるで今自分はHPF(ハイスクール・プレイ・フェスティバ . . . 本文を読む
『第9地区』のニール・ブロムカンプ監督待望の最新作である。前作に引き続き今回も貧困地区の現状をしっかりとドキュメンタリーする。娯楽SF大作というパッケージングからの逸脱はできないけど、その枠内では冒険している。前作の3倍と言う製作費は前作の3倍窮屈な映画を強いられる。しかし、その中でちゃんと健闘している。
自分の作りたいビジュアルを潤沢な製作費なら可能にする。もちろんそれは理想郷のエリジウムを . . . 本文を読む
なぜか、『余命1年のスタリオン』を読み終えてこの映画を思い出した。別に共通項はない。だが、今、どんな映画を作るのか、なんて考えてしまった時、ふとこの映画が頭をかすめた。あの小説の中で登場する『種馬の人生』という映画がヒットするはずはない、と思う。30代の女たらしの男が真実の愛に目覚める話なんか、今の時代に通用しない。もう少しマーケッティングとか考えて企画を立てるべきだ、と思った。あれでは小説とし . . . 本文を読む
今年もNGRが大阪城公園でテント興行を行う。もう20年続く秋の風物詩だ。昨年に引き続き古代を舞台にした壮大なロマンを奏でる。エンタメ性を追求し、でも、そこで自分たちのテイストを大事にして、チープだけど豪華な芝居を目指す。大劇場で上演するようなスケールの大きい話を、数々の仕掛けを駆使して、見せるにもかかわらず、なんだか笑ってしまうような安っぽさがある。それはこの作品を貶すのではない。そこがNGRら . . . 本文を読む
競馬の話か、とカバーを見て思ったから、最初は読む気がなかったのだが、先日池田敏春監督の遺作『秋深き』を見て、あれが競馬の話だったから、そのつながりで、これも運命か、と思い、それに暇だし、とも思い、手に取ると、これがまるで馬の話ではなく、二枚目だけど、30代後半になりあまりぱっとしない中堅俳優が主人公だった。もちろん、タイトル通り、彼が肺がんになり余命1年の宣告を受けたところから始まる1年間の物語 . . . 本文を読む
16年ぶりの新作だという。いとうせいこうは、そんなにも長く小説から離れていたのだ。そして、そんな彼にとって今回の「震災」という事件は大きかった。だから、どうしてもこの小説を書かせざるを得なくなったのだろう。
だが、これは使命感ではない。彼は自然に、この祈りのようなドラマを紡いでいたのだろう。それは主人公のDJアークが放送を始めたことと同じだろう。
震災によって亡くなられたたくさんの魂に向 . . . 本文を読む
なぜか、最近、毎週「ヒーローもの」の映画を見ている。ハリウッドの大作映画は、SFかヒーローばかりになってしまったからだろう。まぁ簡単に作れて派手だし、ちょうどいいのかもしれないけど、その安易さがなんだか哀しい。企画の貧困を見せつけられる。
それなら、見るのを辞めればいい。なのに、別にわざわざ付き合って見なければならないわけではないのだけど、ついつい見にいってしまう。そこに「何か凄いもの」を期 . . . 本文を読む