人殺しの女の話なのだが、この気味の悪い話をとことん突き詰めていくと、どこに行き着くのか、そこに興味を持って見たのだが、なんだか納得がいかない。なぜ、こうなったのかを解明せよ、とは言わないし、そんなことには何の意味もない。ただ、幼い頃からそうだった。死、というものに魅せられていた。自分を傷つけるものへの恐怖が、傷つける側に回らせる。人には興味がない。他人と接することを好まない。上手く . . . 本文を読む
こういうものをやりたいという気持ちはよくわかるのだが、そこに見せ方(技術)が伴わないから、気持ちばかりが空回りした。しかも、芝居自体が説明過多でテンポも悪い。90分がとても長く感じる。若いのに懐古的なドラマを感傷過多で見せられると鼻白むが、これは節度を保ち、ある種の距離感は保っている。そこは評価できるのだが、残念ながらそこまで、だ。
同窓会に集まった6人の男女。高 . . . 本文を読む
まるで劇中で描かれる3コマの授業を受けたような気分にさせられる芝居。さらには、ラストのまるで打ち切るようなエンディングも見事。人生は続いていく。そんな日々のなかの1コマのように、芝居は終わる。普通の芝居なら「ここで終わるよ、」というサインを出し、作品をまとめようとするところだ。でも、作、演出の高橋恵はそんなおきまりにパターンには見向きもしない。もちろん、いきなりで、尻切 . . . 本文を読む
S-paceの10周年を記念して旗揚げされたコヤ付き劇団。民間の劇場が、新しく劇団を旗揚げするなんて、かつてなかったことではないか。劇団が自分たちの本拠地として劇場を持つということなら、今までもなくはなかったけど、劇場がまずあり、そこに劇団を作るのである。だいたい個人が自前で劇場を持つということは、普通はない。みんなしたいと思っていても、なかなか簡単にはできることではない。S-pa . . . 本文を読む
あまりの面白さに本を読む手が止まらない。一気に最後まで読んでしまった。この後どうなるのかが気になり、仕事が手につかないほど。
天涯孤独の身になった就学前の6歳の少女と、彼女を引き取ることになる叔父。彼は義理の兄の残した娘と彼の妻のもとにいく。彼女は病気で生い先短い。兄のため、彼女の最期も看取り、娘を引き取る。独身でひとり暮らしの青年がいきなり6歳の女の子の父親にな . . . 本文を読む
『東京ロンダリング』の続編なのだが、これは単純な続編ではない。まず、最初に前作の主人公がなかなか出てこない。お話は、「誰か」が、ではなく、そこで起きている「出来事」、それが前面に出る。これはロンダリングを巡る様々な人たちのお話なのだ。(お話の終盤になり、前作の彼女も登場するのだが)前作と違い「誰か」のお話というよりも「この世界の置かれた状況」を描くドラマとなる。
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リドリー・スコットがもう一度、『エイリアン』に挑んだ。何本も作られた続編(キャメロンに始まり、フィンチャー、ジュネという、そうそうたる監督たちが作ったそれぞれの作品は確かに面白かったけど)の続編ではなく、『プロメテウス』に続く前日譚である。これでリドリー・スコットによる『エイリアン』3部作はコンプリートされた。
哲学的な『プロメテウス』とは違い、今回は第1作のテイストを取り戻し、 . . . 本文を読む
エミール・クストリッツア、9年振りの新作だ。『黒猫・白猫』は面白かったけど、それほどは乗れなかった。力が抜けた感じが、なんだかなぁ、という感じだった。まぁ、『アンダーグラウンド』の衝撃を越えるような映画は難しい。そんなのはなかなか作れないはず。あの映画を見たときの感動は並大抵ではない。こんな凄い映画が作られたのか、と震えた。だから、どうしてもあの映画と較べてしまい、がっかりする。あ . . . 本文を読む
黒沢清がコメディ映画を作ったら、こんなことになりました、って感じ。(もちろん、コメディではないです。一応SF)笑えるけど、それは別に受けを狙ったわけではない。この設定が冗談のようにしか見えない、というだけのことなのだ。あまりにバカバカしいから長澤まさみはずっと怒っている。ふざけるな、という思いからだ。
行方不明だった夫(松田龍平)が帰ってくる。まるで違う人になって . . . 本文を読む
前回の『ウサギ小屋裁判』は欠席した(たしか、法事で行けなかった。)だから彼らの芝居を見るのは2年振りになる。毎年コンスタントに新作を発表している周防夏目の2017年作品。最近の彼はとても落ち着いたタッチの作品を作る。今回もそうだ。白い扉だけのある空間。そこに閉じ込められた人々。劇中でも触れられるが映画の『キューブ』のような感じ。でも、ここは閉ざされた場所ではなく、この扉にある部屋だ . . . 本文を読む
17年の歳月を経て、ようやくの再演である。今までも何度となくアプローチはなされてきたのだが、初演のビルの屋上での上演を踏襲する、という縛りから実現は困難を極めた。別に劇場で上演してもいいのだけど、くじら企画は初演の「野外、屋上」という特別な空間に拘った。そこは譲れない。だから、今の現状では、もう出来ない。それだけの話だ。
だが、今回「くじら企画」としてではなく、く . . . 本文を読む
このチラシが素敵だ、初めて見たときに、「絶対にこの芝居が見たい」と思った。そう思わせるだけのものがちゃんとそこにはあったのだ。コンブリ団の芝居だと後でわかった。とてもよくできている。広げてもいいけど、折り曲げたらもっといい。チラシの文章が好き。「夏休み、五右衛門風呂。ぽっとん便所。(ぼっとん、では、ないのかぁ)海水浴。母のお弁当。ばあちゃん家。今はもうない。」表の端に書かれたその7行が、折り曲げる . . . 本文を読む
是枝裕和監督による法廷劇。犯人(役所広司)と弁護士(福山雅治)の対決を中心に置き、ある殺人事件を追う。とても静かな映画なのに、緊張感のある映画で見ていてドキドキする。真実はどこにあるのかを描くわけではなく、ほんとうのところがわからないまま、終わっていく。見終えた後には、もやもやしたものが残り、すっきりしないのだが、そこが作品のねらいでもある。
ただ、殺された男のこ . . . 本文を読む
CGに頼らないで本物の戦場を再現するという。ドキュメンタリータッチの描写で迫真の映像体験を見せてくれる。実際の戦場のなかに放り込まれたようなリアルさを目指したという。確かに、凄い。そして、ここにはふつうの映画のようなストーリーはない。目の前の事態を見つめているだけ。誰が誰なのか、戦況がどうなっているのか。まぁ、何をしているのかはわかるけど、細部の説明は全くないし、登場人物たちの内面 . . . 本文を読む
こういう恋愛小説もありかぁ、と思う。読んでいるとなんだか、ちょっと寂しくて、つらい気持ちになるけど、でも、最後にはささやかな幸せで満たされる。ここには特別なことなんて何もない。変わりばえのしない平凡な毎日の生活。その繰り返し。でも、そんな積み重ねのなかにほんのちょっとした変化がある。とても地味なお話で派手なことはない。
HIVに感染して、人生は終わったと思っていた中年 . . . 本文を読む