夏の終わりに見るべき芝居だ。今回で僕が見るのは、3度目になるけど、何度見ても飽きささない。よろずやは再演が多い劇団だが、それだけその作品に自信を持っているという事だ。そして、大事にしている。マンネリになるのではなく、その都度新鮮な芝居を提示してくれるから、何度も見たくなる。代表作『オーマイリョーマ』は公演のたびに改稿もしているが、この作品はどうだろうか。細部の手直しはあるのかもしれないけど、そこは . . . 本文を読む
これでなんと3年目である。毎年夏に『キラメキ』がやってくる。新しいキャストで、新しい先生のもと、2組のチームが競演する。今年も見に行った。水原コーチを今回は生田朗子と春野恵子が演じる。僕が今回見たのはチームA(アクア)、生田さんのヴァージョンだ。出来ることなら両方見たかったが、さすがにそこまでは時間がなかったし、さすがに連続で2本は無理。涙を呑んでの選択だ。
昨年と内容や作品を比較することには何 . . . 本文を読む
まるで安い「ヒーローもの」の映画のようなタイトルだが、見終えたときにはこのタイトルがぴったりの映画だと納得する。映画を見て久々に泣いた。これはスーパースター、エルトン・ジョンの伝記映画である。本人がプロデュースしているから、自分に都合のいいような映画になるというよくあるパターンを踏む可能性も無きにしも非ずだったことだろう。だがこれはそんなつまらない映画ではない。素晴らしい傑作だ。昨 . . . 本文を読む
矢口史靖はどうしてこんな映画を作ったのか。まずそこが一番気になる。映画を見る前は実に彼らしい企画で、「これはこの夏一番の期待作だ!」と思った、だから一刻も早く見たいと切望したのだが、見ながら、えっ? って気分がだんだん大きくなり、途中からは少しあきれる。やがては、なんなんだ、これは、という気分になる。少しむっ、とする。でも、全否定をするわけではないし、期待と違うだけでこの映画自体は . . . 本文を読む
ここまで極端な映画はない。見ながら最初から最後まで唖然とした。驚愕と書いても大袈裟ではない。そんなありえない女が主人公だ。自閉症で鬱、ひきこもり、過眠症。躁鬱。周囲に対して攻撃的。
彼女を見守る優しさと悪意。でも、彼女にとってはそれはイコールなのかもれない。優しいも、悪意も変わらない。こんな彼女を3年間も面倒を見る恋人の存在も、彼女を彼から別れさせようと画策する彼の元カノも。そし . . . 本文を読む
まるで中川さんのオリジナル台本にような印象を受ける作品に仕上がった。大竹野正典の台本を得て、それを自分の世界へと強引に引き寄せて作品化されている。台本も一部脚色をしている。大胆にもあの感動的な詩の引用部分が取り除かれるラストの変更は驚きだ。
そんなこんなで手を尽くして中川さんはこの愚かな女の行為をオリジナル以上にわけのわからないものにしてしまう。だいたいこのお話はもともと説得力を欠く。彼女がなぜ . . . 本文を読む
30歳。身寄りのない男。高校生の時に母親に捨てられ、知り合いの家や建設現場を転々とし、詐欺で2年間の刑務所暮らしの後、出所した。もう誰ともかかわらずに生きていくことにした。もちろんなかなか職は見つからない。人生60年と計算して、(100年時代と言われているのに)まだ後30年、残り半分もある。それだけの時間をこの先まだ生きなくてはならない。
なんとか、仕事をみつける。イカを捌く工場、単純労働のくり . . . 本文を読む
夢中で読んでしまった。水墨画を題材にした小説なんて(おもしろいのか?)、と思いつつ読みだしたら止まらない。「漫画化決定!」と帯にはあったがこれはマンガが喜びそうなお話だ。ただ、現役の水墨画家でもある作者はこれを安易なお話にはしない。知らない世界を教えてくれるだけでなく、普遍的な問題もちゃんと描いてくれるからエンタメではなく人生の真実にも迫る作品になっている。でも、まずは文句なしに面白い。
誰でも . . . 本文を読む
お盆(直前)の10日から12日にかけて5ステージの公演。11日から12日は3時、6時半の2回公演をこなす。しかも、上演時間がなんと2時間半の大作だ。しかも、しかも、途中休憩の20分は含まない。ということは2時間50分なのだ。3時の回は5時50分に終わり、6時には夜の回の開場という凄まじいスケジュールだ。無謀としか言いようがない。でも、この若い劇団は平気でそれをこなした(はず)だ。僕は仕事が(といっ . . . 本文を読む
お茶の映画なんて初めてで、それだけで映画になるのか、と言われると、「なるんです」とこの映画を見た今は答えられる。とてもよくできた映画だ。最初は、お点前の教室のドキュメントみたいな始まり方だけど、その単調で地味な繰り返しと少しずつの変化が、だんだん快感になってくる。もちろんそれだけではないのだけど、基本それだけ。師匠と新しく入った2人の弟子。基本その3人芝居。(まぁ、映画だけど)
最初は毎週土曜日 . . . 本文を読む
これもまた、とても見たかった映画なのに、見逃していた映画だ。そして『迫り来る嵐』と同じようにモヤモヤする映画だ。期待したものとはまるで違う。まぁ、これもまた自分の勝手な思い込みだから、仕方ない話なのだが。それにしても僕も妄想が激しい。自分の好みの映画を思い込みで作っているみたいだ。
メアリーが自分の小説を書く。作家になるというのが彼女の夢でその実現までの軌跡が描かれる映画であることは確かなことだ . . . 本文を読む
今年一番の期待作だったが、劇場公開時に見逃してしまった。DVDになったのでようやく見れたのだが、なんだか思っていたものとはまるで違っていて戸惑う。勝手な思い込みでしかないのだから、そんなこと仕方ないのだが、予告編から期待した(『殺人の追憶』『薄氷の殺人』に続く、という宣伝文句)ものとはまるで違う。だいたいこれは殺人事件の謎を追うサスペンスではない。犯人捜しを期待するとミスリードされる。なんだかよく . . . 本文を読む
2時間35分の大作である。マイク・リー監督渾身の一作。でも、彼らしい作品で悪くはないけど、なんだかなぁ、と思う。まるで感情移入できないのだ。俯瞰的視点から客観的に描くのが悪いとは思わないけど、これでは見ていて退屈する。ドキュメンタリーでも、もう少し作者の視点が明確に描かれる。それにそうならないと見るのがしんどい。
主人公はいない。群像劇というわけでもない。誰も描かない。ただ、そこで起きたことをそ . . . 本文を読む
これは実に勇気にある映画だ。なのに、それをまるで苦労を感じ指さないクールな見せ方で、スマートに描いている。若い監督(藤井道人)が物怖じすることなく、こういう危険はお話を愉しみながら作っているのがいい。今の日本の政治を扱うというタブーに挑戦しているのにも関わらずそこには悲壮感はないのが凄い。
それにしても主人公のふたり(シム・ウンギョンと松坂桃李)がほんとうに素晴ら . . . 本文を読む
今年のHPF最後のプログラムである。実に高校生らしい芝居で、1時間20分という少し長い上演時間も、悪くはない。内容的には60分で十分にまとめられるのだが、たとえ冗長になろうとも、やり切った、という自己満足を重視したい(と、思ったのだろう)。やり残したことはない、と言い切れるまでこの芝居を楽しみたい。だから、80分。それでいい。スマートな芝居でなくてもいいから、最後まで全力で演じきる . . . 本文を読む