40代後半の阪本順冶が、団塊世代を取り上げて映画を作る。しかも主人公は男ではなく、女性である。これを冒険と言わずして、何を冒険と言おう。それだけでなく、映画自体の内容も、とんでもない冒険である。
59歳の主婦が、今までの生き方を全面的に否定して、本当の自分をやり直すために旅立つ。
といっても、彼女がすることはカプセルホテルに2日泊まることだったり、夫以外の男性とのセックス(なんと相手は林 . . . 本文を読む
久し振りに何の予備知識もなく、芝居を見た。チラシさえ見てない。アリス零番館ISTのフェスティバル参加作品なので、うまく時間が合ったので劇場に行った。
こういうタイプの芝居は以前はよく見ていた。スペースゼロがあった頃、毎週のようにこういう箸にも棒にもかからない、でも一生懸命芝居と取り組む劇団を見続けていた。とても懐かしい話だ。月に1本くらいは、驚くような新人にも出会えるのだが、普段は地道に困っ . . . 本文を読む
3つの夢のようなお話。新作である第3話は、とても軽くて、これが深津さんのお芝居?と思わされる。旧作である1,2話も、重いように見えて、描き方がこれらも、とても軽い。この軽さは、深津作品の新しい変貌ではなく、重いものも、軽いものも変幻自在に見せていける、という彼のキャパシティーの広さ(それは決して器用さではない)を示したものであろう。
まるで夢でも見てるように、彼らの《傷み》が描かれる。芝居を . . . 本文を読む
予想を遥かに超える面白さ。ワンアイデアで芝居を引っ張っていくだけでなく、そのアイデアに囚われることも、それを生かす工夫を凝らすでもなく、ただ事実を中心に置き、語られていくドラマのあまりの自然さに、思わず笑ってしまう。
しかも、3話が3話とも全く違う語り口を持っており、それが意図的でなく、あまりに無防備な自然体に見えてしまう。こんなにも、拘りなくあっけらかんと自然なタッチが作れてしまうって何だ . . . 本文を読む
映画『赤いアモーレ』を見た。(それにしてもこのタイトルはいただけない)昨年僕が見た芝居で1番気に入っている作品、エレベーター企画『動かないで』の映画化作品である。正確にはマルガレート・マッツァンティーニの同名小説の映画化なのだが。
表現手段としての映画と演劇の違いを改めて認識させられる1本だった。映画自体はすごくよく考えられており、誠実な作品なのだが、個人的にはあの芝居の印象が大きく、その仕 . . . 本文を読む
3話からなるオムニバス映画。韓国の独立プロが<戦後60年記念企画>として作り上げた映画らしい。日本人と韓国人をテーマにして、お互いが、どんなふうにして分かり合えるのか、ということを若い世代を主人公にして描いていく。監督たちも1970年代生まれの世代で固めた瑞々しい映画。
第1話『宝島』は、済州島を訪れた2人の日本人女性の話。祖父の遺言を叶えるためこの島に来て、2人は大切なものを見つける。
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「お父さんは、もう、お父さんをやめようと思う」 ある日の朝突然に父がそう宣言する。3年前、何の前触れもなく自殺を図った父。そのショックから、家を出てしまった母。兄は大学進学をやめて農業を始め、私はそんなバラバラになった家族の中で、それでも今まで通りに生きてきた。
佐和子(北乃きい)が中三になった春の朝の出来事である。少女はそのびっくりするような一言を、驚きながらも冷静に受け止めていく。もう驚 . . . 本文を読む
かってこの町に、ひとりの娼婦がいた。年老いた彼女は、この町をいつも浮遊するように漂っている。この町で生きている人たちなら、誰でもみんな彼女を知っている。真っ白に顔を塗って、貴族のようなドレスに身を包んだ老女。大きな荷物を引きずりながら、毎日町を歩いている。
ヨコハマという町を描くこと。その時何を切り口にするか。作者である中村高寛監督は、そこで生きた人をまず描くべきだと思う。そして、この作品は . . . 本文を読む
作品解説はフライヤーの佐藤さんの文章がとても的確で(そりゃぁ、作者ですから)分かりやすい。この文を読むとこの作品のことが分かったような気になるはずだ。しかし、無理して分かろうとする必要はない。ストーリーとしては、語られないこういうパフォーマンスを分かろうとするのは、とても困難なことだ。だから、まず感じること。そこから伝わってくるものを受け止めたならいい、と思う。
何の予備知識もなく、この舞台 . . . 本文を読む
かって大学の研究室で一緒に過ごした男女。彼女はフィールド・ワークを大切に思い、虫たちと触れ合うことを喜びとする。彼はデスクワークを好み、研究室で資料と向き合うことが生きがいだと思う。彼らの恋愛は上手くいくはずがない。男は大学を離れ、女は大学に残る。この2人の話としてスタートして、真っ暗な洞窟の中で、新種の昆虫<メクラチビゴミムシ>を巡る物語が繰り広げられる。
洞窟を舞台にした作品なので横に長 . . . 本文を読む
万全の準備で臨んだはずなのに、ほんの少しボタンを掛け違い、気がつくとんでもないことになってしまうことがある。最初に生じた違和感は、埋めきれないままラストまで行ってしまうのだ。いつもより幾分シリアスな入り口を見せた新撰組の新作は、まさにそんなパターンの失敗を見事なまでに見せてしまう。
企画も発想も面白いと思うし丁寧すぎるくらいに丁寧に台本も作られたのだろうと思わせる。企画書にあるストーリーが面 . . . 本文を読む
前回は公開前なので少し遠慮して書いたが、なんか気分がすっきりしないので、はっきり書くことにした。(まだ、公開前なのだが)
この映画はオリジナルには遠く及ばない。比較するのではなく、まず1本の映画としてどう見たか、という話をしなくてはならないはずなのだが、開口一番口につくのはオリジナルの面白さ、「それに較べて今回のリメイクは」という語り口になってしまう。それくらいに『インファナル・アフェア』は . . . 本文を読む
この繊細な物語を理解できる人は、きっと少ない。市川拓司の『今、会いに行きます』があれだけの大ヒットを飛ばしたのは、あの小説、そして映画がファンタジーとしての衣装を纏っていたからである。誰もあんな話を現実だとは信じたりはしない。
しかし、市川拓司本人は大真面目に信じている。死んでしまった妻が雨の日に蘇ってきて彼らのところにやってきたり、彼女がアーカイブ星から来たなんていうことの、一つ一つを信 . . . 本文を読む
「ああ、いやだ、いやだ」を口癖にして、人の夢の中の入り、事件を解決していく悪夢探偵>というストーリーラインはいかにも、という定番を踏んでいる。塚本晋也監督は自分流のエンタテインメントを目指した本作で、単純なスト-リーと分かりやすさで勝負をしようとしている。
しかし、話自体は単純だが、本人が考えるほどには分かりやすい映画になっていない。単純というのなら、彼の劇場デビュー作『鉄男』だって充分単純 . . . 本文を読む
DVを受けている女性が、初めて夫に対して、反抗し、反対に彼を殴り殺した。彼女は公園のベンチで放心したまま、座っている。
そこから彼女の地獄巡りが始まる。そしてそこからの帰還を描く物語のはずなのに、芝居はここから、全く思いもかけない芝居となる。まるで印象が違う世界に突入するのだ。あまりに明るくノーテンキなので、これがDVの話であったことすら忘れてしまうくらいだ。
しかも、彼女はここで出 . . . 本文を読む