たぶん、このお正月映画で最大の超大作である。(だから写真もでかいのを取り込んだ!)昨年の『アバター』に続いて、これはたぶん今の3D映画の到達点を示すであろう映画(なのだろう)。予告編を見ると、なんだか凄いらしい、という気にさせられて、ついつい見に行く。まぁ、騙されるのは覚悟の上だ。
それにしても今年はたくさんの3D映画が公開された。そしてその度にうんざりさせられてきた。最初は目新しいから楽し . . . 本文を読む
主人公の津島サトルという少年はなんとも嫌な奴だ、と最初は思った。だけど、中学3年生なんてこんなものかもしれない。自分に対してへんなうぬぼれを持っている。自信満々なくせに、それがみんなに理解してもらえなくって(しかも、本当はたいしたことないことが、ばれてしまうのも嫌で)いつも悶々としている。まだ何ものでもないけれども、自分なら何ものにでもなれるという自惚れを抱いている。それが無邪気というのではなく . . . 本文を読む
わかりやすい芝居だ。ひとりよがりで観念的な芝居とは対極を成す。だからといって単純ではなく、人間の意識の底にある複雑なものを、しっかり掬い上げていこうとしている。病んだ傷つきやすい心の中に潜む魔と向き合いエンタテインメントとして、組み立ててある。芝居は3話からなるオムニバスというスタイルを踏む。それぞれの短編は連作になっていて、独立しつつも、通して1本の長編作品として完結する。
主人公は最初の . . . 本文を読む
岡部耕大による2人芝居にせすんが挑戦。定年退職になった男(秋田悟志)が本州最南端の断崖の上に佇んでいる。高度成長期の昭和30年代後半から2006年まで、40年にわたって勤め上げた。ひたすら真面目に働き続けた結果、残ったものは、ボロボロの心と体だけ。何の喜びも楽しみもなく、ひとりここに佇む。会社にも棄てられ、妻にも相手にされず、何のために今まで頑張ってきたのか、と思う。夢も希望もなく、ただあるのは . . . 本文を読む
15年間走り続けたアグリーの最終公演である。とてもシンプルな2人芝居で、Wキャストになっている。僕は春眠ヴァージョン(出口弥生、ののあざみ)を見たのだが、冬眠ヴァージョン(吉川貴子、村上桜子)のほうも見たかった。同じ台本からかなりテイストの違うものを作り上げたらしい。もともと演出プランを変えようとしたわけではなく、役者に合わせていくうちにいろんなことが変わってしまったらしい。それって面白い。
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「村上春樹インタビュー 1997年―2009年」とある。これは、この20年間に村上春樹が受けた数少ないインタビューの集大成である貴重な1冊だ。主に海外のメディアからのオファーを受けたものが掲載されてある。もしかしたらこれが彼が受けたインタビューのすべてなのかもしれない。国内が少ないのは、日本のメディアを軽視したからではない。大体彼は基本的にマスコミに露出することを好まないからインタビュー自体をは . . . 本文を読む
トラン・アン・ユン監督の『ノルウエイの森』はまるで原作に似ていない。20年以上前に書かれた村上春樹のベストセラー小説がついに映画化される。出版されたときにもいくつものオファーがなされたのに、許可されなかった。村上春樹は自分の小説の映画化を好まない。長編小説が映画化(というか、それだけではなく映像化でもある)されることは、これが初めてのことである。(『風の歌を聴け』は例外)
さて、こんなにも原 . . . 本文を読む
リドリー・スコットがなぜ、今、ロビン・フッドを映画にしなければならなかったのか、その一番大切な部分が全く伝わってこない映画だった。作品としてはとてもよくできているし、ラストの海岸でのイングランドと、海から押し寄せてくるフランス軍の対決シーンのスペクタクルも凄い。彼にとっては、『グラディエーター』『キング・オブ・ヘブン』に続く歴史スペクタクルであり、その流れの先にこの映画があるのは、当然のことなの . . . 本文を読む
最初はかなりおもしろかった。小説自体はいつものよしもとばななで、なんの新味もないのだが、この優しさが好きだ。だから新しいことなんか何もいらない。いつも同じ話を、同じ語り口で見せてくれたならいい。そうすると、落ち着く。そんなふうに思いながら読んでいたのだが。
父親を事故で亡くした(と、言ってもただの事故ではなく愛人との心中である。しかも、無理心中)女性と、彼女の母親の話である。事故の後、傷心の . . . 本文を読む
イサム・ノグチの母親であるレオニー・ギルモア(エミリー・モーティマー)の生涯を描く大河ドラマ。20世紀初めのアメリカと日本を舞台にして、彼女の波瀾の人生を描く。こういうTVドラマは数あるが、最近は、映画ではこういうものは作らない。お金ばかりがかかって、あまり儲からないからだ。
松井久子監督は、自力で13億円(だった、と思う)という破格の制作費を調達して、日米で大がかりなロケーションを敢行し、 . . . 本文を読む
アメリカで大ヒットした低予算ホラーの続編を、なぜか、日本映画として撮ったという作品。こういうのって大丈夫なのか。ただの猿マネではなく、ちゃんとした続編として、了承してもらい作ったみたいだ。しかも、本家の方にもちゃんと続編があり、それは来年の2月に日本でも公開される。予告編もこの映画の本編前に上映されていた。殊更有難がるような斬新な企画ではない。
こういう安手のホラーはどこにでもある。オリジナ . . . 本文を読む
この手のSFアクションは発想のおもしろさと、アクションのキレが命だ。『アドレナリン』の監督がB級テイストで挑むこの93分の作品に誰も多くは期待しないだろう。だが、激しいバトルとそれなりの視覚効果で一気に見せるこの映画はなかなかの拾いもので悪くはなかった。華やかな大作の並ぶお正月映画の中に、こういうワイルドな映画をひっそりと潜ませるなんて、なかなか趣味がいい。
死刑囚の体を借りて、ゲーム感覚で . . . 本文を読む
作、演出はいつものように梶原俊治さんなのだが、今までの梶原さんのタッチとはかなり違う作り方をしている。ストーリーが明確なストレート・プレイである。しかも、暗い。こんなにも暗い自由派DNAの芝居は初めてではないか。
どんな悲惨な状況にあろうとも、最後まで夢をあきらめないで、自分の身を犠牲にしてでも、みんなのために生きようとする。梶原さんは今までもそんな姿勢を崩さない「バカな男たち」を描いてきた . . . 本文を読む
殺し屋たちが東北新幹線の中でトランクを奪い合うというお話自体には何の意味もない。伊坂幸太郎3年ぶりの新作なのに、なんとも力の抜けた小説だ。最初はいつものように複数の主人公たちがバラバラに行動する姿をコラージュさせて描き、やがてそれらが1本の話にまとまっていくという新味のないエンタメ。ワンシチュエーション、閉じられているけれど、動く車両、限定された時間、というふうに、とてもシンプルに設定させてある . . . 本文を読む
この世界にはもう夢も希望もない。だけど、ここに止まっているのではなく、この先にむかって旅しなくてはならない。そこにはきっと何かがある。
この手のタイプのSFは枚挙に暇がない。『ザ・ロード』や『ウォーカー』という終末を描いたSF映画が今年も公開されている。荒涼とした世界を旅する親子や男たちを主人公にした人間ドラマやアクションは70年代からずっと作り続けられてきた。今回、三角フラスコが描く近未来 . . . 本文を読む