習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『フリージア』

2013-04-30 21:03:23 | 映画
熊切監督の映画で、これだけは見逃していた作品だ。玉山鉄二と西島秀俊主演。低予算の作品だが、こういうタイプのSF映画はめずらしい。ちゃんと世界観が伝わらなくては成立しないタイプの作品なのだが、低予算ゆえ、それが不可能になっている。すべての責任をその一点に帰するのはよくないことだと思うし、原因はそれだけではないが、まずその一点がすべての原因だと思う。やっぱり。それにしてもどうしてここまで惨い映画にな . . . 本文を読む
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『きっとここが帰る場所』

2013-04-27 08:51:53 | 映画
 なんだか説明不足で置き去りにされる。そんな映画だ。でも、風景が圧倒的に美しく、そんな場所に置き去りにされるのだから、まぁ、それはそれでいいかぁ、とも思う。異常な化粧を施したショーン・ペンの姿のインパクトにひきずられて、この映画は一見なんだかとても異常な物に思える。だが、そうではない。これはちょっとしたロードムービーだ。ダブリンからニューヨークへ。30年間まるで音信のなかった父の死。父との確執。死 . . . 本文を読む
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橋本紡『ふれられるよ今は、君のことを』

2013-04-27 08:47:01 | その他
『ふれられるよ今は、君のことを』というタイトルに心魅かれた。特に「今は」という部分。そこにはきっと「今だけ」というニュアンスを秘める。そんな気がした。小説は期待以上によく出来ていた。というか、今の僕の気分にぴったりでそれにも驚いた。  これは、とても切ない。ひとりで生きるということの痛みが、これでもか、これでもか、といった感じで綴られる。主人公は40前後の独身女性。中学の教師をしている。学校では . . . 本文を読む
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『トガニ 幼き瞳の告発』

2013-04-27 08:25:35 | 映画
 こんなにも怖い話はない。それをここまでストレートに見せる。凄い映画だ。もちろん、これはホラーではない。ホラー以上に怖い事実だ。聴覚障害を持つ子どもたちに暴行や性的虐待を行い、それを隠蔽する教育者たち。ありえないような目を覆いたくなる行為が生々しく描かれる。こんな話の映画に挑戦した3人の子供たちがすごい。彼らの体を張った迫真の演技がこの恐ろしい映画を成立させた、と言っても過言ではない。絵空事ではな . . . 本文を読む
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『最愛』

2013-04-27 08:06:19 | 映画
 HIV感染者たちの隔離施設(というか、村の閉鎖された学校なのだが)で出会った男女が、「絶望の中で愛し合う様子を繊細に描く」(と、どこかの解説には書いてあった)。監督は、あの傑作『孔雀  我が家の風景』のクー・チャンウェイ。あの映画が大好きだから、ただそれだけでこの映画を見たのだが、ちょっと残念な出来で、がっかりした。切実さがまるでない。どうしてこんな映画にしたのだろうか。  売血を通してエイズ . . . 本文を読む
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『最終目的地』

2013-04-27 07:57:17 | 映画
 ジェイムズ・アイボリー監督の新作は、こんなタイトル(原題もここまま)が付いているけど、映画自体はなんだか摑みどころのない作品で、なんともゆるい空間で主人公たちは、ずっとまどろんでいるばかりだ。これでいいのか、と思うくらいになんだかよくわからない映画である。でも、その何とも言い難い世界がとても不思議で心地よい。思いもしない映画で意外性が何よりも魅力的なのだ。でも、ほんとに、ここが人生 . . . 本文を読む
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DRY BONES『どらいのなつゆめ』

2013-04-23 21:11:21 | 演劇
 竹内銃一郎さんによる『夏の夜の夢』である。彼がこのシエイクスピア作品をどう料理するのか、興味深々で劇場に向かう。正直言うと、僕はこの話があまり好きではない。でも、竹内さんの見せ方が気になるから、とても楽しみだった。  とてもたわいもない笑劇として、この作品をとらえる。2組の男女を中心にした恋の駆け引き。そこにいろんな人たちが入り乱れて、しまいには何が何だか分からなくなる。オリジナル自体も、惚れ . . . 本文を読む
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『アウトレイジ ビヨンド』

2013-04-23 20:43:45 | 映画
 今回の北野武の方法論はとてもわかりやすいし、徹底している。前作で見世物としての暴力シーンを極めた以上、今回、もう同じことはやらない。それどころか、今度は、一切見せない。表面的には何も起きないことで、暴力を描こうとした。何もないし、何も起きないのに、とんでもない緊張感を孕む展開を見せる。それが全編を貫くのだ。何かが起こる予感だけで1本の映画を見せきるのである。もちろん暴力シーンはあるにはある。だが . . . 本文を読む
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コトリ会議『にくなしの、サラダよ』

2013-04-23 20:36:30 | 演劇
コトリ会議が不妊治療の話を芝居にするなんて、それだけでもう驚きだ。そのための費用が200万というのも驚き。その内訳は1回で60万、大体3回くらいで何とかなるものだということらしい。知らなかったぁ。(まぁ当然かぁ。)  カフェを舞台にした芝居を、カフェで公演する。今までよりさらに小さな空間で、いつものような1時間45分の芝居ではなく(いつもコトリは同じ上演時間なのだ)1時間20分の芝居にする。し . . . 本文を読む
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『藁の楯』

2013-04-21 09:06:50 | 映画
 こんなにも画数の多い漢字を映画のタイトルに使うのはよくない。しかも、漢字を読めない人もいるだろうし。人は自分が読めないタイトルの映画を見には行かないから、その時点で興行的にはこれは失敗である。来週末からロードショーなのだが、大丈夫だろうか。とても心配だ。こんなにも気合を入れた大作映画なのだから、そこそこにはヒットしてもらいたい。  でも難しいだろうなぁ、というのが実感だ。映画の内容には文句はな . . . 本文を読む
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本田有明『歌え! 多摩川高校合唱部』

2013-04-21 08:37:25 | その他
今年の課題図書が決定した(らしい)。本田有明さんの『歌え! 多摩川高校合唱部』という本である。(らしい。たぶん) そこで早速読んでみた。(えへん。今年から学校図書館の館長になったのだ。)僕は「クラブもの」の小説にはかなりうるさい。しかも、大体この課題図書に選ばれる作品はいつもつまらないというのがパターンなので、今回もまるで期待せずに読み始めた。案の定、つまらない。読みながら、ほっとした。(なんで . . . 本文を読む
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『家族の庭』

2013-04-21 08:35:58 | 映画
 マイク・リー監督の新作。(とは言え2010年作品)4話からなるオムニバス・スタイル。ある初老の夫婦の1年間の出来事を春夏秋冬の4つのお話で見せる。これは本当にさりげなくなんでもないスケッチなのだが、その中で、彼らの喜びや悲しみが確かに綴られる。  日常のスケッチでしかない。特別なドラマはない。でも、2人と彼らを巡る友達の話は見ていて胸に突き刺さる。家族であること。ただそれだけのことがこんなにも . . . 本文を読む
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『シュガー・ラッシュ』

2013-04-19 22:00:52 | 映画
 ディズニー映画なんて大嫌い、と昔は思っていた。なのに、『トイ・ストーリー』くらいから、だんだんディズニー映画の魅力にとりこまれている。今では、新作の公開を楽しみにしているくらいだ。今回だって、まるでゲームなんかには興味ないくせに、これがディズニー映画だというだけで、ついつい見にいってしまった。なんだかディズニーは麻薬のようだ。  これは『トイ・ストーリー』とテイストが似ている。主人公のラルフが . . . 本文を読む
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中脇初枝『きみはいい子』

2013-04-19 21:56:47 | その他
これはキツイ。5話からなる短編連作なのだが、いずれの話も痛ましい。ここに登場する子供たちと、大人たちが、それぞれ今ある状況の中で、ただあるがまま受け入れて生きている。 給食費を払えない(払わない)親を持つ子供。家でも満足な食事を与えられていないから、給食が一番の楽しみなのだが、心ないクラスメートは、おかわりする彼を糾弾する。そんな生徒を持つ担任は、やがてクラスを学級崩壊させる。子供を虐待する . . . 本文を読む
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『舟を編む』

2013-04-17 20:11:47 | 映画
 石井裕也監督がこんなちゃんとした映画を撮れるなんて驚きだ。皮肉でも何でもない。本当にこれがあの石井監督の作品なのか、と見終えた後である今でも、なんだか信じられない気分だ。今まで、自主映画レベルの作品をたくさん作り、それはそれで面白かったのだが、商業映画監督としても、職業監督としてもまだまだ未知数だっただけに、たった1本でここまで急成長されると、うれしいを通り越して、今までの自分の目は節穴だったの . . . 本文を読む
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