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映画・演劇のレビュー

『ベルリンファイル』

2013-07-26 06:45:52 | 映画
 『シュリ』から14年、というキャッチフレーズに心惹かれて劇場に向かった。現在の韓国映画の原点となる『シュリ』の衝撃は大きい。スケールの大きなハリウッドに負けないエンタメ・アクションを韓国映画が作った、というあの映画の意義は大きい。そしてそれは日本人を驚かせ日本でも大ヒットを記録した。あの作品の後、韓国映画の怒涛の攻勢が始まって、現在に至ることは周知の事実だ。ただ、ここにきて韓国映画は日本で以前ほどヒットしていないのも事実だ。作品がつまらなくなったのではない。面白いことが、ただの常識になり、もう以前のような驚きはないからだ。そこで表現はさらなるエスカレートをたどることになるのだが、表面的な派手さだけでは、難しい。

 そんな現状の中、今、再び、ハン・ソッキュを主演にむかえて、(彼が主演する映画が日本で公開されるのは久しぶりだ。とは言えこの作品の本当の主演はあの『哀しき獣』のハ・ジョンウがなのだが)オール・ベルリンロケによるポリティカル・アクション映画の誕生である。韓国と北朝鮮の問題を中心に据えて、息をもつかせぬ怒濤の展開、という意味でも、これは『シュリ』の後を継ぐ作品だろう。

 だが、先にも書いたように、あの頃と今とでは事情が違う。もう、ちょっとやそっとのお話やアクションでは誰も驚かないからだ。派手なカーチェイスや、爆破シーンを盛り込んでの、スパイ合戦である。誰が、誰を嵌めたのか。敵と味方とが入り乱れ、裏切ったのは誰で、どんな陰謀が隠されていたのか、謎が謎を呼ぶ展開。あっと驚くエンディング。

 監督は『シティ・オン・バイオレンス 相棒』のリュ・スンワン。なかなかよくやっていることは確かなのだが、今の時代、もうちょっとやそっとの映画では驚かない。作品としても、先日見た『殺人の告白』には及ばない。韓国映画の大作映画は、これでもか、これでもか、と過剰な展開で驚かしてくれるのだが、この映画は、結末部分が弱いから、最後で少し尻つぼみのなるのが、惜しい。さまざまな組織、情報が錯綜し、その中で真実に突き進むというお決まりの展開なのだが、しかも、話はわかりやすくて、派手なアクションの連続で、飽きさせないのだが。何かが足りない。


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