プロ野球 OB投手資料ブログ

昔の投手の情報を書きたいと思ってます

徳武定之

2016-11-24 21:38:37 | 日記
1962年

逆転の満塁ホーマーを打った徳武はムッとしたような顔でホームをふんだ。「三振したときはニコニコ。ホームランを打ったときはおこったような顔というのがぼくのモットーで・・。ほんとうをいえば満塁ホーマーになって自分でもびっくりぎょう天していたんですよ」最近の徳武はとぼけることをおぼえた。試合前もションボリした顔をしながら「ダメですよ。当たりないから野球をやめたくなっちゃう」などといっていたものだ。ところがゲームのあとになると「決して当ってないとは思っていないんですよ。しかしぼくは精神が悪いんです。はじめに一本打つとなんか安心してしまってたいていヒット一本で終わってしまう。だから一本も打ってないときは、こんどこそ打たんといかんと真剣になっていいんです。きょうもホームランまでは二打席ノーヒットでしょう」とすました顔をした。徳武にいわせるとだんだん気合いがのってきた結果が満塁ホーマーということになったのだそうだ。「試合がはじまったときは雨で中止するんじゃないかと思ったりして気合いがはいってなかった。それがあの五回ごろは、この回に点をとらなければ負けてしまうという気にもなったし、ファウルを打つごとにだんだん打てそうな気分になってきて・・・。2ストライクになったときも大石が全然こわくなかった。高目のストレートでしょうね、あの球は大和田さんがぐんぐん走るし、とられるんじゃないかと思った。ヘイにでも当ってくれれば上出来だという感じだったですね。しかし、もう満塁ホーマー二本目なんて気味が悪いな。なんか起こるんじゃない?このごろ王のヤツがボンボン、ホームランを打つでしょう。あいつもオレを意識しているし、早実の先輩としてのこっちも負けるわけにはいかないや」二十二日から徳武は魔法びんに自家特製の飲みものを持ってきている。「暑くなってきたのでなま水を飲むといけないと思って・・・」魔法びんの中は母親心づくしのカルピスとハチミツのカクテル。逆転満塁ホームランのもとは案外これだったのかもしれない。
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河野旭輝

2016-11-24 21:20:27 | 日記
1962年

河野の打球が右翼席に消えた瞬間、一塁コーチス・ボックスの濃人監督はおもしろいかっこうをした。左手をふり上げ、小さなからだをちょんととびあがらせた。まるで小学生がバスケットボールのシュートをしたようなポーズだ。この瞬間を権藤はこう説明した。「ゾーッとしたね。このリードを死んでも守らないといけないと思って・・・」ゲームが終るとマイクが一本、河野の前に突き出された。江藤によると河野は中日きっての理論派だそうだ。マイクの前で河野は静かにしゃべり出した。「まっすぐだと思います。真ん中寄りだと思うけどコースははっきりわかりません。当っていないって?そうでもないと思います。いい当たりをしてもここのところ野手の正面が多いんです。あせってもしようがないですよ。のんびりやってます」かえってアナウンサーの方が声が上ずっているようだ。理論派の河野は当っていないといわれたのは心外だといわんばかりに説明を加えた。「去年の方が活躍したとよくいわれるけど、けっして中日二年目の生活に安心しているわけではない。このところいい当たりが十本ほど正面へとんでいます。そのうち半分の五本でも右か左へはずれていれば二割五分の打率になっているはずです。去年のいまごろのぼくは二割二、三分のアベレージでした。そうすると去年よりことしの方がいいという計算になります。ちょっと運がないというだけだと思いますが、どうですかね」この計算は本多コーチも認めているそうだ。理論派であると同時に温情派でもあるらしい。最後は敗戦投手の城之内をほめた。「五回ごろまですごいピッチングだった。あまりにいいんで、ぼくは審判の人にすごいですね。打てませんねと聞いたくらいです。しかしその城之内を打ったおかげで、ことし初めてといっていいくらい記者の人に囲まれましたよ」河野がバスへのったとき先にすわっていた濃人監督が黒い顔をほころばせて、一塁コーチス・ボックスでとびあがったときよりももっと目ジリが下がっていた。
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ジェームス・マクマナス

2016-11-24 21:08:05 | 日記
1962年

「ずいぶんスマートになったじゃないか」マックの横顔をみたネット裏のファンがいった。一ケ月ぶりに後楽園に登場したマックのホオはややこけ、胴mわりもひとまわり小さくなっている。「やっと汗がどんどん出るようになってね、ゼイ肉がとれてきたんですよ」人なっつこい目もちょっとくぼんだ感じだ。試合前「サウスポー・カネダ」と口ずさみながらロッカーの前にある大鏡の前で真剣な構えで素振り・・・。完調でないだけに準備運動は慎重そのものだ。そんなマックが久しぶりに報道陣にかこまれた。開幕戦にやられた金田から二安打、そして十回には鈴木(皖)から右前へ決勝打。三本とも右へ引っぱったものだが猛打賞は四月二十二日、下関での対広島二回戦(五打数四安打)以来二度目だ。「決勝打?まっすぐか、スライダー。いやシュートかな・・・(ちょっと考えて)よくわかりません」決勝打よりもよくおぼえているのが金田からの二安打だ。「ファースト、カーブ。セカンド、ストレート。二つども真ん中よりやや外角寄り」手まねでくわしく説明したあと「うまく攻めてきたね」と金田の配球をほめた。-日本の野球にだいぶ慣れた?「うん・・・。でも内野がローン(芝)じゃないからね。まだ面くらうこともあるね」三原監督は「外人にしては珍しく神経質できちょうめんなところがあるんでね。どんどん慣らしていくことが力を引き出すいちばんの方法だと思うね」といっている。報道陣をちょっと見渡したマックは腰を浮かして「モウイイデスカ」単語集で一日一つずつ覚えたというタドタドしい日本語だ。マックがいま一番望んでいるのはチャンピオン佐田の山の優勝(マックは佐田の山のファン)とロング・ヒットだそうだ。
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