蝉しぐれと車輪の音 沼の南側をバスが通る。 騒音も木立に和らげられて遠のいていく。 まったく気にならなかった。
ハウスの窓を開け放つ。 蛾が待ってましたとやってきて、縞柄のうえで休んでいく。揺すっても、振りまわしても動じない、クッションから離れない。 よほどここが気にいったらしい。 大きな蜂まで飛び入りして大騒ぎになった。
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つかのまをここで過ごした、ここの空気を吸った。 寝ころんで雲の行き来を眺めたに違いない。
「そこはよい見晴らしであつたから 青空の一ところををくり抜いて皿をつくり 僕たちは雲のフライなどを料理し… 花粉と蜜は 僕たちの調味料であつた。
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さて、このささやかな食事のあとで、きれいな草原にねころぶと、僕の切り抜いたあとに晝間の月があつた。 それをあなたはハンカチに包んで大切さうにうちへお土産にした… 」 一日 立原道造
道造を追体験する。これほど長く沼の畔にいてもまったく飽きない。 指南役のkさんも、 この草を刈りとって、道造のように寝ころんでみたい。 と言った。
初めてあったkさんと 意気投合しガイドを終える。 来場者6名
日誌をみると 多かった日は500名以上とある (数え切れない、多国籍言語とメモ書きしてある) はとバスの方が来た日、など 団体さんが来ると300名とか 特別なのだろう。
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昼食は交代で。 塩鮭の匂いは道造の詩に似合わない、 持参のお弁当を外のベンチで食べた。 沼風が気持ちいい。 ミズスマシが泳ぐ。 向かいの店から蒲焼きの匂い。 浦和はむかし、 ウナギがたくさん捕れた…
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kさん 昨日はお世話になりました。 ご希望の職業に就いて この紙魚クンとも友好的なお付きあいをつづけてくださいね。 あなたの企画展を拝見する日を楽しみにしています。 ヒアシンスハウスでいっしょに過ごした夏を、 ずっと覚えているでしょう。 またお会いできたら幸せです。