眠れねば香きく風の二月かな 水巴
二月の雲象カタチかへざる寂しさよ 多佳子
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晴ればかりつづいたが めずらしく曇った。 昼頃は淡い光が雲間を透かしてみえていたが、 4時過ぎて鈍色の空から白いものが落ちてきそうなくらい冷えてきた。
このあたり、 1か月以上 雨も雪も降っていない。 乾ききった大地や鳥のさえずりに春の予感はするけれど、 ほんとうの寒さはいつもこれからなのだ。
去年は 二月二日が初雪。 二月一三、 一八日。 三月十日 霙。 そして最もおそい雪が四月一七日に降った。 どれも淡雪で大騒ぎすることもなかった。
豪雪に見舞われる方たちの ご苦労はいかばかり…
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銀行の窓の下なる舗石シキイシの霜にこぼれし青インクかな 啄木
霜を染める青インク… はっきりした藍の 冷たい匂いがするようだ。
職場のペン先はスプーン形をしたのや Gペンと呼ぶのもあったと思いだす。
先端にインクをつけて 慣れない手つきで帳簿をつけた。
机を並べた友はもういない。
それからボールペンが流行った、 でも手紙用は万年筆を求め、 インクの色や匂いになじんだ。 油彩の匂いとインクの匂い。 どちらも好き。 インクの匂いに気持ちがあらたまる。 ボールペンの殴り書きをやめて、 きちんと書こうと思う。
溶き油の匂いがすれば背筋がピンと伸びて こころ踊るいろで全部埋めたいと願う。
霜に遇い色の濃い冬薔薇 葉も花も深い色になった。
いつのまに はや二月 春待つこころに待ったをかけて