あこがれの一村芸術に出会う旅はいよいよ大詰め
建物もすてきな美術館だ。 館内は広く展示室を繋ぐ回廊をあるくとき
明るいひかりは水面をチラチラと照らして、 まるで離れ小島にいるような感覚をもつ。
潮の香りもとどきそうな 水上のコテージで緩やかなときを過ごしたい。
簾越しの空や雲の、 絵のような調和をシックで素朴なデザインのベンチで、 いつまでも眺めていたい。
展覧は時代ごとに
第1章 東京時代(大正3年~昭和13年)
14歳の 「蛤図」
第2章 千葉時代(昭和13年~昭和33年12月) 白い花(ヤマボウシ) ずしの花(花ウド) 山村六月 翡翠図 秋日村路 千葉寺(春 杉並木 麦秋)
第3章 奄美時代(昭和33年12月13日~昭和52年9月11日)
ビロウとコンロンカ 海辺のアダン (いずれも絵葉書から
どの作品も色彩は、 画集の写真より爽やかで落ちついている。 波の音がきこえ風がそよぎ動物の息づかいを感じる。 実際、 画家がすぐ隣にきてひかえめに、けれど信念を持って、 どうしても譲れないことなど教えてくれる。
精神的にも肉体的にも削ぎ落として…
「飢餓が創作意欲をかきたてる…」
それは見せるために描いたのではなく
私の良心を納得させる為にやったのですから… (田中一村)
身も心も極限において描く。 ちょっと押せば倒れそうな家に住んで、 食事も衣服も 徹底したきびしさで… 自然と対話する、 画壇に背を向けて
樹が話しかけてくるようだ
ビロウがこんなにも美しくつよく しなやかなこと、 知らなかった。 実物より本物らしい作品を通して自然を観た。 カメラなら一瞬に写す、 絵はじっと観て感じて… 3年もかかった作品もある。 一村がこめる思いがひしひしと伝わってくる、 彼の魂や生き方までもかたちや色にして活き活きといまも残っている。 澄んだ色と のびやかな美しい線とで
左)ビロウ ムサシアブミ ネズミモチ コンロンカ サンダンカ タマタケラン アサギマダラ(画像はいずれも部分)スキャンにより作品のイメージが薄れましたらごめんなさい
つよい個性の、一村その人のような作品群、 とくに枇榔 グレーの繊細な階調に魅かれた。 鑑賞はゆっくりと、のこり時間のすべてを当てた。 奄美の郷など全体をみわたす余裕もなく。 奄美の黒ウサギのユニークな子育てなど、手つかずの自然と島唄など魅力がいっぱい。 いつか世界遺産になる前にもういちど訪ねようと思う。
資料 奄美パーク 田中一村記念美術館 パンフレット 絵葉書
NHK日曜美術館 黒潮の画譜 田中一村作品集
※ 記事を書きあげて展示室のモチーフは穀物倉の高倉ではないかと気づいた。