ドアの向こう

日々のメモ書き 

ふたつの星

2007-08-30 | 別所沼だより


           「ヴァイオリン」  1929年5月22日 立原道造 パステル画 。


  14才の作品  卓抜した才能を目の当たりにする。 大人びて、なんとモダンなこと。 少年の不思議に  落ち着いた色。 前後、左右、 重なるいろの快いリズムと 曲線の妙なる調べ。  キュビスムについて学んでいたか、 眼にしたのか。 残された絵のほとんどが中学時代の作品。  驚くのは、 どの絵もすばらしく、完成しているということ。


  中学2年生になると「猫」「蛙」「犬」「鳥」など真鍮の置物かと思われるものを描いています。この鉛筆デッサンは彼の建築設計に大いに助かったと思います。立原道造記念館の方から、 道造は蛙に特別な興味を持っていたと聞きました…
              
「美術教育から見た道造の絵  横澤 茂夫」 より 


  
  蛙に興味…     感激だ!  そんなことではないらしい。


  


           赤いバイオリンのある静物 1920年 ル・コルビュジエ   油彩


  33才の作品 本名はシャルル=エドゥアール・ジャンヌレ。 この年 ダダの詩人ポール・デルメ、 ピュリスムの画家、アメデ・オザンファンとともに 雑誌「エスプリ ・ ヌーヴォー」 を創刊、 ル ・ コルビュジエの名前をはじめて使う。 


  沼のほとりと、 カップ・マルタンの海辺を照らす。 どこか似ている とても大きな星がある

                                  写真: 絵はがきより 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ヴィクトリアン レース

2007-08-28 | こころ模様

 やさしい花のお便り
 一年に いちど 
 かわすだけになった

 変わらず繊細  女らしいなって

 そんな評価は  望まないと思う
けれど  つい… 
 持ち合わせないものだから 

  同い年なのに いくつになっても 
爽やかさを感じる


 花の名は

 ヴィクトリアン レース だって

  韮の花に似ている

  絵も 字も さり気ない内容の
手紙も  力を抜いて  いつも
すてき  木綿のドレスがよく似合うように   

  ああ元気なんだ…   アメリカに住んでも 生き生きと 何かをつかんで。 
   ところ変われど  自分をだいじに  和をたいせつに。

  ああ…  喜ばせるサイン!  流麗なイニシャルに つけたポッチの… 
   
  「これって あれでしょう?」   『そうよ!  あたり! 』   茶目っ気たっぷり
  笑顔も浮かぶ…   わたしたち 20年以上も 会ってないね。

  粋なセンス!   生き方も  おしゃれも  
  何もかも…  洗練されて

  あのころ真っ先に入選した彼女に  
  まだまだ追いつけないでいる 

   また バッグを作ってよ

  

  これって  韮の花じゃないの?   

  和紙にくるんだような 蕾が揺れる    
       遠く離れても 逢えなくても  真の友だち

  

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夕暮れの時

2007-08-26 | 自然や花など

   投票を終えると 日が暮れようとしていた。  そうだ 夕焼けを見にいこう…

   見晴らしのよいところに出ると  すでに 薄いブルーの帳がおりはじめ 

    きょうの名残りを惜しむように  あかね色が熔けてゆく

     帯のような水辺を染めて   墨絵のように暮れなずむ街…

       空が小声で歌うのを   じっと見ていた         

                                                                              17:51

   

    夕ぐれの時はよい時   かぎりなくやさしいひと時  (堀口大學)

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

侘びの中に宇宙

2007-08-25 | アートな時間

  長いプロローグ   風炉のUP、 炭火が赤々と熾っている。 盛んに爆ぜる  炭の風情。
  暁。 軽やかな切り妻屋根、  天井の雰囲気  窓のようす。 つくばい、 生い茂る羊歯がそよぐ。 青々とした苔。。 何もかも新しい朝…  霧が流れ けむる外庭。  朝顔の花が浮かぶように、 いくつも白く灯っている。 

  茶席の準備。 利休は 垣のたくさんの花の中から 吟味して たった一輪を剪り取る。
  弟子に  「あとは全部つみ取っておけ!」
  
  お点前の準備も整った。 打水に 緑も敷石も すがすがしく待っている。

  やっとタイトルが出た。

  心逸らせ待庵タイアンにやって来る秀吉…  いつも小走りだ。 つくばいで手を洗い口をすすぐ。 開花した花のすべては摘みとられ 露地の緑だけが 静かに迎えた。 あっけにとられ、 いらいらしながら向かう茶室。  にじりあがる秀吉、
 その眼が釘付けになった。  一本の茶花となった、 清廉な純白の朝顔。  瑞々しい葉と 蔓の鬚がたおやかだ。
  ほの暗い茶室の花、 美しさに息を呑む。  目が覚める。 花は野にあるように

  客人をもてなす花、凛と 気品に充ちている姿。 利休の心。  秀吉は感銘を受け、 落ち着いて  閑寂なせかいへと誘われる、 茶の湯。 しみじみと 深まっていく。 

  水を運び、薪をとり、湯を沸かし、茶をたてゝ、 仏に供へ、人にも施し、吾も飲み、 
  花を立て、 香をたく
  利休が説いた精神は   いまこそ心に問いかける。 無駄のない所作、 美しい。。
  ものの美しさも、 こころの美しさも必要である。 

  (秀吉と利休の関係、 その変化。 赤楽  黒楽茶碗。 朝鮮出兵に口を出したために、ますます秀吉を怒らせてしまった。  堺に閉居。 妻りき。  曲がった障子 叶うはよし、叶いたがるは悪しし )

 エピローグ  竹のインスタレーション   利休は自刃する。 天正十九年二月二十八日

  一枚の絵のような場面。 色、 空気、 音、 活け花はすべて監督の作品。 

               -☆-

  8月24日(金)   夜の美術館にはじめて入った。  17:30~  
 映画 「利休」     監督 勅使河原宏  音楽 武満徹
 絢爛豪華な衣裳    高台寺の傘亭や 時雨亭らしき風情、 城のセットに多分、 彦根城など映った。 
 映画を見ながら、 茶室に 必要以上の飾りがない。  座ったひとがつくる(醸し出す)せかいなど考えた。 

  目の前の席に むかし習った草月のS先生がいらした。 家元の展示をとても喜んでおられ、 会場入り口のインスタレーションに、 ボランティアで、完成まで10日かかった由。 いままで、 お願いしても美術館で活け花を取り上げることは全くなかった と感慨深く仰った。。   
 「絵画、 書、 文学、 彫刻、 活け花も、 表現に変わりはないです。 残念ですね」 と申しあげた。 花につく虫や 水を扱うことなど 問題もわかった。 

  絵をはじめ、 2年くらいでやめたお花。 これほど時間が経っても忘れず、 何処でお会いしても、 いつも先生のほうからお声を掛けてくださる。 ぼんやり歩いている証拠で、 申し訳なく ありがたく 小さくなっていた。

  花道、茶道とも  様式の美。 若い頃はその良さも分からずにいた。 おなじことのくり返しを疎んで。  今こそ しみじみわかる。 簡素なこと。 しかし、 心静かな侘びのせかいに、宇宙がある…  と。

  (映像の記憶  もし間違いがありましたら ごめんなさい。 お道具の正しい名前など分からぬままに) 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

秋の声

2007-08-24 | 自然や花など

  日盛りに  夏と秋とがせめぎ合い  畑中の道を駈けてゆく。

  蝉は絶唱し   暑いひかりを援護した。
    凌霄の朱  百日紅の紅  モミジアオイのあか・あか・ … 

  
    ひとすじの風が  初めの秋を 運んできた
       陽は 鱗粉を混ぜたような  白い耀きで 
          
 芋茎のかげの蟋蟀
 本箱の後ろでカネタタキが チン チン チン チン  カンタンがル ル ル ル
   目を閉じてきく虫のこえ  秋はしずかにやってくる                         
                                                           (音量調節してください)

 

       爽やかな  秋の空  秋の雲     
      葉擦れの音に  そよぎにも   なんとなく  秋の声して

          秋は夏のおわりです 


    げに   男心と   秋の空…        
                       はて  女心と ……  
 

 
 
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ことば ことば…

2007-08-22 | こころ模様


 

     ポローニアス     ハムレット様  なにをお読みで?
     ハムレット       ことば、 ことば、 ことば。
     ポローニアス     いえ、 その内容で?
     ハムレット       ないようで?  おれにはあるように思えるが  
                            シェイクスピア   小田島雄志訳  

 

                    -☆-

   なにを書こう   何が伝わる?  何かを拾い  感得して   ことばに変える。    
   写真だけでもえぇんじゃない?  えぇ・ えぇ・・

 

 

 

コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

片蔭

2007-08-20 | 自然や花など


 連日猛暑…

 信号待ちも 身を細くして
電柱の蔭に隠れている 
 

 

 犬行くや一筋町の片かげり
             青邨

  舌を出してトボトボと…

 

八方の灼けてたヾ刻 経つばかり
            暮石


 焦げそう…
じっと がまん! 

 

 炎ゆる日の甍の上にとヾまれる 
            秋を

 

  みなさま   おだいじに…              

 
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

水をよむ

2007-08-18 | アートな時間

   水と生きる (そのⅡ)

  むかしから 雫  露 が好き…    露・ ♯ ・… 滴 ・・♪  雫・・!♭・!!
    
  ・王朝文学と水  ・伊勢物語と水  ・西行物語にみる水  ・御伽草子にみる水
  
  三十六歌仙から 歌人の姿と水面と月の歌
   
水のおもにてる月なみをかぞふれば こよひぞ秋のもなかなりける  源順 ミナモトノ シタゴウ

  ・水が絡んだ情景を 意匠に。   焚殻入 など 工芸にも文学が
  例えば  小倉山蒔絵硯箱 (室町時代)。 幅22.8×奥行25.5×高4.2㎝ と 小さいが 込められる世界のなんと豊かなこと。 

         

   写真 上左から  

蓋表  吹きはらふもみぢの上の霧晴れて 峰たしかなる嵐山かな (藤原定家・眺望・拾遺愚草)
蓋裏   住吉のまつがねあらふしき波に いのるみかげは千世もかはらじ (藤原定家・神祇・拾遺愚草)
見込   大井川岩浪たかしし筏士よ 岸の紅葉にあからめなせそ  (金葉集・秋・源経信)

  つぎはお馴染み ……・・

            

   

 
    秋草にとまるを蒔絵で   
文箱 櫛箱 角盥 茶碗  伽羅箱 料紙箱 

   ・鈴虫蒔絵湯桶 

 跡もなき庭のあさぢにむすぼほれ 露のそこなる松むしの声   (新古今・秋・式子内親王) 
  黒漆地・細い葉が茂る中に鈴虫が鳴いている。葉の上や隙間に多くのちいさな露を結んで。 (カタログより)

   ・秋草蒔絵茶碗 
 
  
置くとみし露もありけり儚くて 消えにし人をなににたとへん  (新古今・哀傷・和泉式部) 
  側面を三面に分け、それぞれ  萩と芒、菊と芒、女郎花・藤袴と芒の組み合わせ。  
   
ため息が出そう  ほかも 全部お目にかけたいくらいです。

 消化しきれないものを あれも、 これも伝えたいと。  時間もなくてお目汚し。 絵巻など これからゆっくり学びたいと思います。  人生いくらあっても足らないくらい…

 

  さて、気になるエピローグは  水色づくし   色調ごとに名前が変わる藍染を展覧。  絲と裂。

  上布に染め上げた藍の一生を、 人生や水との関わりに重ねてみる思いです。  
 
   白藍色 水色(水縹) 空色  甕覗  水浅葱  浅葱色  縹色  瑠璃色…
 … 藍 (深藍コキアイ 中藍 浅藍)

    微妙に変化するそれぞれの色、 一点を吊した布は  緩やかに三角錐となり 落下する水のようにも見えます。 高さ3mくらいあったでしょうか。 流れを表現したと今頃思いました。 十条スジはあったか、 ナイアガラです。
  「水といきる」 展、   最後まで楽しい水遊びでした。
  メモしてこなかったので色名に間違いがありましたらごめんなさい。

  水と生きる そのⅠ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

納涼

2007-08-17 | アートな時間

  サントリー美術館      水と生きる  
 8/8の 記憶をもとに。

   展覧プロローグ  
   
  すてきな演出だ

  床の上 つまり鑑賞者の足下に 丸や楕円の石を円く(直径2m位か) 敷き詰めてある。 (ここからは見立て) 

  滴り落ちる点滴、 ピチャン! 澄んだ音色 深山で聞くごとく。  余韻を味わう。
  どうやら石は川か沼底にあるらしい、 想像してみて下さい。  雫は水面に輪を描いて、 波紋をつぎつぎと広げる。 コローの絵のような水辺に、 木洩れ日が射しこむ、 チロチロと輝き、 揺らぐ。
  実際は水もなく  落ちてくる雫もない。 ただ、 天井から石のスクリーンに光や波を映写する。 雫の音。 揺れるひかり。 照り返し、波紋に木洩れ陽と翳を感じて。 
 これだけで涼しくなった。  映像に、 空想を加え、 森のなかを散策するような気分になる。 

・ 「清楓瀑布図」 円山応挙。(右写真) 落下の勢いを直線で。 滝壺で流水に洗われる黒い岩。 渦巻く水、 対する若葉の色。 爽やかさも増し、 枝先が小刻みにふるえる。  =神、 人間を超える力を感じて。 畏敬の念で見つめる滝。 近づくと飛沫を浴びる。 北斎の 滝見巡礼 も浮かんでくる。

 ・ ひとは水と共に生きる。 水の恩恵。 水に関わる暮らし。 
  広重ブルー東海道五十三次(保永堂版)より、 橋 ・ 船渡 ・ 人足による徒歩渡しのもよう、 水の上の生業… 漁師、筏師、煮売船など。 浜松、草津など 水の名所を浮世絵に観る。

 ・ 流れる水の模様。  能装束の流水。  、 硯箱や香合・櫛、キセルなどのデザインに表れる。 青海波など。 ・北斎の図案集  さまざまの波が 押し寄せ散っていた。 ・蒲団地の柄  扇は水の流れにのって舞うように。

  ・の表現  広重の見事な雨づくしで、 東海道五十三次より 「土山 春之雨」 「藤枝」 「大磯 虎ヶ雨」 「庄野 白雨」など。   

  ・雪  浮世絵の雪景色 (広重)   ・蒲団地に  植物に積もる雪… 雪持文  丸い周囲に窪みをつけた雪輪紋   

  ・染付の青 徳利や深鉢  ・ガラスの青 切子藍色船形鉢 杯  切子藍色酒瓶 ちろり デカンタ …

         

 写真、 図録より   左 染付雲雷文大皿    右 藍色牡丹唐草文栓付酒瓶 及び  藍色瓶

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

葯の大事な役目

2007-08-16 | イーゼルのうた


  絵は 先週の続き。 百合も種類が多く、 求めるたびに違うモデル。 葯が除かれて  百合らしくないものでした。  今日は ここまで。 

   もう一息。

 


        

  左 1回目のモデル  モナ・リザさん       右 2回目のモデル  種類も風情もまったく違う  難しいわけだ。 下の一輪のみ 前回の名残り花  蕾の付き方もまるで違う
   これで 仕上げるとは…  乱暴なこと!  葯のはなし おまけ

 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

十三通の手紙

2007-08-15 | こころ模様


  今朝 あらためて 父の遺言状  戦地からの手紙  従兄弟の追悼文など読み返す。  目の前が涙で曇った。  くやしい せつない…  とめどなくあふれた。 父からの 重いことば。 記憶の底に 一度も聞くことのなかった声をさがしに。 

  春 四月  好きだった桜が咲く頃 父は出征しました。

  遺言状は万一のため  母宛てと 子それぞれに 十四・五になったら見せるようにと。  出征の日の写真が 家族だった証し。  父を思えば わたしは たちどころに二歳に戻る。   父は…  父はいつまでも二十八のまま。  自然におろした指先が 私の頭に触れている。 かすかな重み・感触、 ぬくもりを どうしても 思い出せないのだ。
  理不尽な戦争のため  一変したせかいに まだ取り残されている。  忘れられない   
  生涯 忘れてはならぬこと! 

 人格も 希望も容赦なく踏みにじられ  愛するひとと突然別れ、 行き先で目にしたものは   言葉に尽くせぬ程 つらく 悲しいことばかり  地獄絵だったに相違ない。  真面目で 純粋  話をすると 激しい感情が余って  眼をいつも光らしていたという。 
  情が深く 詩文を愛した父は  全くそぐわない戦場で どんなにか思い 悩んだことだろう   
 どんなにか 苦しんだことだろう

                -☆-
 
 十三通のてがみは  どれも 檢閲濟の印がある
      「元気に奉公して居る…」   「自分は元気でいる… 」  

 人目を意識した内容に 家族は文字よりも  行間を読んだ       
   たったひとつのよりどころ  いま命ある証しとして届く 極限の便りだった
          
  母が 何遍も読みかえした痕がある  戦地からは日付がないが 受信日を記し  懐中に… 
  肌身に着けて ぼろぼろになったハガキ  涙で滲んだ箇所もある  

  ひたすら 家族を案じ 
  「丈夫で家を守り給へ  AもSも元気だろうか?  写真入手せり  皆よく撮れて居る 可愛らしい  寝冷えをさせぬよう  児らの腹具合悪くせぬよう 呉々もたのむ」 と。
    「里に引きこもるもよし 浦和に居るも御前の意志にまかす…」

 どんなに会いたくても  会えない。  一日千秋の思いで待つ 手紙だった。 
 飛んでいって 慰めたくても  それもかなわない  遙かなる戦場で  どれほど涙を流したことか  家族をどんなに思ったことか… 
 やりきれなさを 何にぶつけただろう  どんな気持ちで ハガキを書いたのか  
  家を守る母にしても  おなじことだった

   松の木ケの並ナみたるみれば家人イハビトの我れを見送ると立たりしもころ 

 防人のこの歌は 他人ごとではなかった。 松の木の並んで立っているのを見れば思い出す。 家族が私を見送るために立ち並ぶようすが 浮かんでくる。 

 あれは妻   ここに母   そして 子どもたち…  
   長谷川等伯の 「松林図」も こころの絵になった。       

                      -☆- 

  お父さん   どんなにか 苦しかったでしょう
     恐ろしかったでしょう   怖かったでしょう       

  最期の時  手をとることも  肩を抱いて  さすることも  
      その名を呼ぶことすら  できなくて…  

  顔も 声も まったく覚えていない  おとうさん
    一年生になって 「お父さんのしごとは、 くつみがき です」 と書いた 
      おかっぱ頭で 真剣に考えて よく見かけた職業を書いた
   居ないなんて 言えない  友だちに知られないように 
        頑なに ほかと違うことが嫌だったあの頃
                 … 担任は驚いて  母を学校へ呼び出した

   ごめんなさい お父さん
  父のこと 何も覚えていない…  哀しいけれど 何も思い出せないのです

                      -☆-

    秋 十月。 戦死の公報。   粗末な紙切れ一枚が。  父のすべて。 

  暗くて冷たい海のただ中へ 放り出され  苦しかったでしょう 
   ほんとうに 寂しかったことでしょう  情けなくて  声の限りに叫んだでしょう…  
  何も悪いことなど していない…   なぜ  虫けらのように 死んだんだ。

                      -☆-

  弟の成長を見せたかった。  母のもとへ  包みこむ笑顔に もういちど逢わせたかった。  教えて欲しいことが 山程あった。 詩をよんで 一緒にコンサートにも行って。  一緒にできることなら  何でもいい。

   連れだって歩く  作文の批評もして   いっしょに笑って…  歌って
    一度くらい甘えたかった…   あなたを   胸を張って紹介したかった 

  ささやかな夢  これぐらいの夢の なにひとつ かなえることなく
    楽しみも知らず  父は   戦場に消えた。

                       -☆-   

  九月十四日着 (最終便)
 「…… ふるさとの 柿の実、笑み裂けたふかしたての さつまいも、 大相模の梨、瓜、ハチミツを想ふ…   … では又  火の用心。 さようなら。 便りを待つ 」 
  
   蝉時雨も うら哀しくひびく、 暑い終戦記念日だった。 
   私の戦争は いつまでも終わらない  お骨もなく  信じがたく                                                                                        
    母を思えば 父を想い  父を思えば  母を想う 
      戦争はむごい     戦争は絶対に許さない   
                         ずっと  忘れてはいけない 

   過去の8月の日記                (39.2℃)

 

 

コメント (10)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

空蝉

2007-08-11 | 別所沼だより


 
        天界に散華きらきら蝉の昼         誓子



  別所を、 怒濤のような蝉時雨が見舞った。  暑さに負けずハウスガイドをする。 おびただしい脱け殻がメタセコイアの枝先や 幹に連なるように留まっている。 そんななかを、 流汗淋漓を気にもせず、 せっせと 「ぬけがら」を集める人あり。 大きなゴミ袋に、かなり貯まっていた。   すわ  佃煮…    唐揚げ…  
    せみの種類と分布を調べるのだそうだ。     あな 恥ずかしや~



         空蝉の一太刀浴びし背中かな       朱鳥



  背中の痛々しい傷口を、 厳粛な気持ちで眺めた。  手の平の空蝉は、 短い命の誕生を意味していた。  なんと切なく、 はかないことだろうか。 



  彼にもへその緒はあるか、 殻の中に白い紐のようなものがくしゃくしゃとまとまっている。 
  殻とからだを固定していたのか。  
   


  これほどじっくり見ることはなかった…
  裏に返すと人の指紋のように、 腹の襞や起伏、 手足そのままの形が、 そっくりのこっている。 種類によって襞の間隔など異なるのだろうか。 目の部分だけが透明で、 電球のようにきらきらと光る。 その異様さに身震いした。 眼の痕だけが生々しく、 空蝉は訴えるように迫ってきた。


  騒音だと思えた蝉の声も、 なにやら愛しく、 精いっぱいの謳歌が身にしみた。 じっと聴いていると、 自分の頭のなかが鳴っているような感じなのだ。     



  梅雨が明ける頃  まず小形の「にいにい蝉」 がお出ましになり、 次に大きな「油蝉」 がジージーとつよく唱いはじめ、 みんみん蝉も伴奏してくる。  最近では別所に「熊蝉」 も加わったらしい。 
  シャーシャーと喧しいというが、 まだ聞いていない。 



    室内  気温35℃ 無風    来訪者 5名  
  
 
        夏雲の湧きてさだまる心あり        汀女


 
 
  
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

花笑み

2007-08-10 | イーゼルのうた

   

          きのう百合を描きました

         天使の花にもならず

           スカーフの柄にしたい百合の花

          ときめきを残して まだ描きはじめ

            来週仕上げます

 

           品種 モナ・リザ?  と。

          ご存じでしたらお教えください
                                                                                           6F  油彩

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夏やすみは

2007-08-07 | こころ模様

                 「忘れもの」

             入道雲にのって
             夏休みはいってしまった
             「サヨナラ」のかわりに
             素晴らしい夕立をふりまいて

              けさ 空はまっさお
              木々の葉の一枚一枚が
              あたらしい光とあいさつをかわしている

              だがキミ! 夏休みよ
              もう一度 もどってこないかな
              忘れものをとりにさ         高田敏子

              
                        -☆-

 
         おとなになると   手ぶらの夏がやってきて…
         遠い夏やすみを思い出し  焦燥感にかられた
         試験の夢などみたりして…

       夏休みは  長くても  
          あっという間に 終わってしまう

                今は  自分で決めた宿題が 山積している
 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

おぉ寒!

2007-08-05 | こころ模様

  こちらは 本日 雪もようで…  
  目黒川にかかる太鼓橋を 
 急いできました
 背を丸め 肩をちぢめて

  寒いですね…

 
 足がもぐって  
 指先に感覚なんかありません 
  懐手して  ほのかに温もっても  そのうち 足袋も 着物も湿ってきましょう 

   おぉ  寒ぅ~

  こんな日は 黙々と…    
 喋ったりしたら 口のなかまで 凍えます     用があれば小声で 

  静かな雪の日… 
 

  シンシンと冷えて 何の音もしない
  梢の塊が ばさっと落ちる音はしますけれど              <歌川広重>

  とめどなく降る雪を見あげていると 体が吸い込まれ 上へ昇っていきそうですね

      降る雪のかなたかなたと眼があそぶ    爽雨

    限りなく…  
   雪が降る  まるで時間の束がふってくるようだ と詠んだひとを思い出します  
 これだけ降れば ちょっとは涼しくなりますかねえ     …さて

   こちらの 最高気温は 36度   予報では…
    外はもっと暑い   いえ  寒いでしょう  
    これから 冷えますので みなさまくれぐれも  おだいじに
              省エネも お忘れなく

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする