別所沼だより

詩人で建築家 立原道造の夢・ヒアシンスハウスと別所沼の四季。
     

ふたつの星

2007-08-30 | 別所沼だより


           「ヴァイオリン」  1929年5月22日 立原道造 パステル画 。


  14才の作品  卓抜した才能を目の当たりにする。 大人びて、なんとモダンなこと。 少年の不思議に  落ち着いた色。 前後、左右、 重なるいろの快いリズムと 曲線の妙なる調べ。  キュビスムについて学んでいたか、 眼にしたのか。 残された絵のほとんどが中学時代の作品。  驚くのは、 どの絵もすばらしく、完成しているということ。


  中学2年生になると「猫」「蛙」「犬」「鳥」など真鍮の置物かと思われるものを描いています。この鉛筆デッサンは彼の建築設計に大いに助かったと思います。立原道造記念館の方から、 道造は蛙に特別な興味を持っていたと聞きました…
              
「美術教育から見た道造の絵  横澤 茂夫」 より 


  
  蛙に興味…     感激だ!  そんなことではないらしい。


  


           赤いバイオリンのある静物 1920年 ル・コルビュジエ   油彩


  33才の作品 本名はシャルル=エドゥアール・ジャンヌレ。 この年 ダダの詩人ポール・デルメ、 ピュリスムの画家、アメデ・オザンファンとともに 雑誌「エスプリ ・ ヌーヴォー」 を創刊、 ル ・ コルビュジエの名前をはじめて使う。 


  沼のほとりと、 カップ・マルタンの海辺を照らす。 どこか似ている とても大きな星がある

                                  写真: 絵はがきより 

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ヴィクトリアン レース

2007-08-28 | こころ模様

 やさしい花のお便り
 一年に いちど 
 かわすだけになった

 変わらず繊細  女らしいなって

 そんな評価は  望まないと思う
けれど  つい… 
 持ち合わせないものだから 

  同い年なのに いくつになっても 
爽やかさを感じる


 花の名は

 ヴィクトリアン レース だって

  韮の花に似ている

  絵も 字も さり気ない内容の
手紙も  力を抜いて  いつも
すてき  木綿のドレスがよく似合うように   

  ああ元気なんだ…   アメリカに住んでも 生き生きと 何かをつかんで。 
   ところ変われど  自分をだいじに  和をたいせつに。

  ああ…  喜ばせるサイン!  流麗なイニシャルに つけたポッチの… 
   
  「これって あれでしょう?」   『そうよ!  あたり! 』   茶目っ気たっぷり
  笑顔も浮かぶ…   わたしたち 20年以上も 会ってないね。

  粋なセンス!   生き方も  おしゃれも  
  何もかも…  洗練されて

  あのころ真っ先に入選した彼女に  
  まだまだ追いつけないでいる 

   また バッグを作ってよ

  

  これって  韮の花じゃないの?   

  和紙にくるんだような 蕾が揺れる    
       遠く離れても 逢えなくても  真の友だち

  

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夕暮れの時

2007-08-26 | 自然や花など

   投票を終えると 日が暮れようとしていた。  そうだ 夕焼けを見にいこう…

   見晴らしのよいところに出ると  すでに 薄いブルーの帳がおりはじめ 

    きょうの名残りを惜しむように  あかね色が熔けてゆく

     帯のような水辺を染めて   墨絵のように暮れなずむ街…

       空が小声で歌うのを   じっと見ていた         

                                                                              17:51

   

    夕ぐれの時はよい時   かぎりなくやさしいひと時  (堀口大學)

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秋の声

2007-08-24 | 自然や花など

  日盛りに  夏と秋とがせめぎ合い  畑中の道を駈けてゆく。

  蝉は絶唱し   暑いひかりを援護した。
    凌霄の朱  百日紅の紅  モミジアオイのあか・あか・ … 

  
    ひとすじの風が  初めの秋を 運んできた
       陽は 鱗粉を混ぜたような  白い耀きで 
          
 芋茎のかげの蟋蟀
 本箱の後ろでカネタタキが チン チン チン チン  カンタンがル ル ル ル
   目を閉じてきく虫のこえ  秋はしずかにやってくる                         
                                                           (音量調節してください)

 

       爽やかな  秋の空  秋の雲     
      葉擦れの音に  そよぎにも   なんとなく  秋の声して

          秋は夏のおわりです 


    げに   男心と   秋の空…        
                       はて  女心と ……  
 

 
 
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ことば ことば…

2007-08-22 | こころ模様


 

     ポローニアス     ハムレット様  なにをお読みで?
     ハムレット       ことば、 ことば、 ことば。
     ポローニアス     いえ、 その内容で?
     ハムレット       ないようで?  おれにはあるように思えるが  
                            シェイクスピア   小田島雄志訳  

 

                    -☆-

   なにを書こう   何が伝わる?  何かを拾い  感得して   ことばに変える。    
   写真だけでもえぇんじゃない?  えぇ・ えぇ・・

 

 

 

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片蔭

2007-08-20 | 自然や花など


 連日猛暑…

 信号待ちも 身を細くして
電柱の蔭に隠れている 
 

 

 犬行くや一筋町の片かげり
             青邨

  舌を出してトボトボと…

 

八方の灼けてたヾ刻 経つばかり
            暮石


 焦げそう…
じっと がまん! 

 

 炎ゆる日の甍の上にとヾまれる 
            秋を

 

  みなさま   おだいじに…              

 
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十三通の手紙

2007-08-15 | こころ模様


  今朝 あらためて 父の遺言状  戦地からの手紙  従兄弟の追悼文など読み返す。  目の前が涙で曇った。  くやしい せつない…  とめどなくあふれた。 父からの 重いことば。 記憶の底に 一度も聞くことのなかった声をさがしに。 

  春 四月  好きだった桜が咲く頃 父は出征しました。

  遺言状は万一のため  母宛てと 子それぞれに 十四・五になったら見せるようにと。  出征の日の写真が 家族だった証し。  父を思えば わたしは たちどころに二歳に戻る。   父は…  父はいつまでも二十八のまま。  自然におろした指先が 私の頭に触れている。 かすかな重み・感触、 ぬくもりを どうしても 思い出せないのだ。
  理不尽な戦争のため  一変したせかいに まだ取り残されている。  忘れられない   
  生涯 忘れてはならぬこと! 

 人格も 希望も容赦なく踏みにじられ  愛するひとと突然別れ、 行き先で目にしたものは   言葉に尽くせぬ程 つらく 悲しいことばかり  地獄絵だったに相違ない。  真面目で 純粋  話をすると 激しい感情が余って  眼をいつも光らしていたという。 
  情が深く 詩文を愛した父は  全くそぐわない戦場で どんなにか思い 悩んだことだろう   
 どんなにか 苦しんだことだろう

                -☆-
 
 十三通のてがみは  どれも 檢閲濟の印がある
      「元気に奉公して居る…」   「自分は元気でいる… 」  

 人目を意識した内容に 家族は文字よりも  行間を読んだ       
   たったひとつのよりどころ  いま命ある証しとして届く 極限の便りだった
          
  母が 何遍も読みかえした痕がある  戦地からは日付がないが 受信日を記し  懐中に… 
  肌身に着けて ぼろぼろになったハガキ  涙で滲んだ箇所もある  

  ひたすら 家族を案じ 
  「丈夫で家を守り給へ  AもSも元気だろうか?  写真入手せり  皆よく撮れて居る 可愛らしい  寝冷えをさせぬよう  児らの腹具合悪くせぬよう 呉々もたのむ」 と。
    「里に引きこもるもよし 浦和に居るも御前の意志にまかす…」

 どんなに会いたくても  会えない。  一日千秋の思いで待つ 手紙だった。 
 飛んでいって 慰めたくても  それもかなわない  遙かなる戦場で  どれほど涙を流したことか  家族をどんなに思ったことか… 
 やりきれなさを 何にぶつけただろう  どんな気持ちで ハガキを書いたのか  
  家を守る母にしても  おなじことだった

   松の木ケの並ナみたるみれば家人イハビトの我れを見送ると立たりしもころ 

 防人のこの歌は 他人ごとではなかった。 松の木の並んで立っているのを見れば思い出す。 家族が私を見送るために立ち並ぶようすが 浮かんでくる。 

 あれは妻   ここに母   そして 子どもたち…  
   長谷川等伯の 「松林図」も こころの絵になった。       

                      -☆- 

  お父さん   どんなにか 苦しかったでしょう
     恐ろしかったでしょう   怖かったでしょう       

  最期の時  手をとることも  肩を抱いて  さすることも  
      その名を呼ぶことすら  できなくて…  

  顔も 声も まったく覚えていない  おとうさん
    一年生になって 「お父さんのしごとは、 くつみがき です」 と書いた 
      おかっぱ頭で 真剣に考えて よく見かけた職業を書いた
   居ないなんて 言えない  友だちに知られないように 
        頑なに ほかと違うことが嫌だったあの頃
                 … 担任は驚いて  母を学校へ呼び出した

   ごめんなさい お父さん
  父のこと 何も覚えていない…  哀しいけれど 何も思い出せないのです

                      -☆-

    秋 十月。 戦死の公報。   粗末な紙切れ一枚が。  父のすべて。 

  暗くて冷たい海のただ中へ 放り出され  苦しかったでしょう 
   ほんとうに 寂しかったことでしょう  情けなくて  声の限りに叫んだでしょう…  
  何も悪いことなど していない…   なぜ  虫けらのように 死んだんだ。

                      -☆-

  弟の成長を見せたかった。  母のもとへ  包みこむ笑顔に もういちど逢わせたかった。  教えて欲しいことが 山程あった。 詩をよんで 一緒にコンサートにも行って。  一緒にできることなら  何でもいい。

   連れだって歩く  作文の批評もして   いっしょに笑って…  歌って
    一度くらい甘えたかった…   あなたを   胸を張って紹介したかった 

  ささやかな夢  これぐらいの夢の なにひとつ かなえることなく
    楽しみも知らず  父は   戦場に消えた。

                       -☆-   

  九月十四日着 (最終便)
 「…… ふるさとの 柿の実、笑み裂けたふかしたての さつまいも、 大相模の梨、瓜、ハチミツを想ふ…   … では又  火の用心。 さようなら。 便りを待つ 」 
  
   蝉時雨も うら哀しくひびく、 暑い終戦記念日だった。 
   私の戦争は いつまでも終わらない  お骨もなく  信じがたく                                                                                        
    母を思えば 父を想い  父を思えば  母を想う 
      戦争はむごい     戦争は絶対に許さない   
                         ずっと  忘れてはいけない 

   過去の8月の日記                (39.2℃)

 

 

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空蝉

2007-08-11 | 別所沼だより


 
        天界に散華きらきら蝉の昼         誓子



  別所を、 怒濤のような蝉時雨が見舞った。  暑さに負けずハウスガイドをする。 おびただしい脱け殻がメタセコイアの枝先や 幹に連なるように留まっている。 そんななかを、 流汗淋漓を気にもせず、 せっせと 「ぬけがら」を集める人あり。 大きなゴミ袋に、かなり貯まっていた。   すわ  佃煮…    唐揚げ…  
    せみの種類と分布を調べるのだそうだ。     あな 恥ずかしや~



         空蝉の一太刀浴びし背中かな       朱鳥



  背中の痛々しい傷口を、 厳粛な気持ちで眺めた。  手の平の空蝉は、 短い命の誕生を意味していた。  なんと切なく、 はかないことだろうか。 



  彼にもへその緒はあるか、 殻の中に白い紐のようなものがくしゃくしゃとまとまっている。 
  殻とからだを固定していたのか。  
   


  これほどじっくり見ることはなかった…
  裏に返すと人の指紋のように、 腹の襞や起伏、 手足そのままの形が、 そっくりのこっている。 種類によって襞の間隔など異なるのだろうか。 目の部分だけが透明で、 電球のようにきらきらと光る。 その異様さに身震いした。 眼の痕だけが生々しく、 空蝉は訴えるように迫ってきた。


  騒音だと思えた蝉の声も、 なにやら愛しく、 精いっぱいの謳歌が身にしみた。 じっと聴いていると、 自分の頭のなかが鳴っているような感じなのだ。     



  梅雨が明ける頃  まず小形の「にいにい蝉」 がお出ましになり、 次に大きな「油蝉」 がジージーとつよく唱いはじめ、 みんみん蝉も伴奏してくる。  最近では別所に「熊蝉」 も加わったらしい。 
  シャーシャーと喧しいというが、 まだ聞いていない。 



    室内  気温35℃ 無風    来訪者 5名  
  
 
        夏雲の湧きてさだまる心あり        汀女


 
 
  
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夏やすみは

2007-08-07 | こころ模様

                 「忘れもの」

             入道雲にのって
             夏休みはいってしまった
             「サヨナラ」のかわりに
             素晴らしい夕立をふりまいて

              けさ 空はまっさお
              木々の葉の一枚一枚が
              あたらしい光とあいさつをかわしている

              だがキミ! 夏休みよ
              もう一度 もどってこないかな
              忘れものをとりにさ         高田敏子

              
                        -☆-

 
         おとなになると   手ぶらの夏がやってきて…
         遠い夏やすみを思い出し  焦燥感にかられた
         試験の夢などみたりして…

       夏休みは  長くても  
          あっという間に 終わってしまう

                今は  自分で決めた宿題が 山積している
 

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おぉ寒!

2007-08-05 | こころ模様

  こちらは 本日 雪もようで…  
  目黒川にかかる太鼓橋を 
 急いできました
 背を丸め 肩をちぢめて

  寒いですね…

 
 足がもぐって  
 指先に感覚なんかありません 
  懐手して  ほのかに温もっても  そのうち 足袋も 着物も湿ってきましょう 

   おぉ  寒ぅ~

  こんな日は 黙々と…    
 喋ったりしたら 口のなかまで 凍えます     用があれば小声で 

  静かな雪の日… 
 

  シンシンと冷えて 何の音もしない
  梢の塊が ばさっと落ちる音はしますけれど              <歌川広重>

  とめどなく降る雪を見あげていると 体が吸い込まれ 上へ昇っていきそうですね

      降る雪のかなたかなたと眼があそぶ    爽雨

    限りなく…  
   雪が降る  まるで時間の束がふってくるようだ と詠んだひとを思い出します  
 これだけ降れば ちょっとは涼しくなりますかねえ     …さて

   こちらの 最高気温は 36度   予報では…
    外はもっと暑い   いえ  寒いでしょう  
    これから 冷えますので みなさまくれぐれも  おだいじに
              省エネも お忘れなく

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森の芸術

2007-08-01 | 自然や花など

 
   ショパン弾き終へたるままの露万朶(バンダ)     中村草田男

  雨あがりの見沼を歩いた。  浮いているか、 流れてゆくか…
      雨だれのうたが止む、 落ちんとす   神秘の♪。
    五線紙の音符が 入りみだれ  おびただしい滴になった 

   白玉を 糸に貫ぬいたような  
  はやりのビーズも  ちいさな音色でもどってきた 
 

 秋の野に置く白露は玉なれや貫きかくる蜘蛛の糸すぢ   
                      文屋朝康フンヤノアサヤス(古今集)  

 
 真珠をかがったように見えるのも たいそう風情があって おもしろい 
    とも言われ

     露燦々胸に手組めり祈るごと          石田波郷
     瞬くや露は睫毛にあるごとし           目迫秩父
  

  漂う露の
清らかなヴェールのまえで  爽やかになった。 

     雨あがりのしづかな風がそよいでゐた  あのとき
     叢は露の雫にまだぬれて  蜘蛛の念珠オジュズも光つてゐた
     東の空には  ゆるやかな虹がかかつてゐた
     僕らはだまつて立つてゐた  黙つて!
                       (立原道造 虹とひとと) 抜粋

  

 

 

 
      うつくしきもの…    瑠璃の壺。  枕草子

   かわいらしいもの ガラスの壺。 粒が りんりんと鳴っている 
          
                  -☆-
         
     蜘蛛の囲の遮る径は返すべし      富安風生

   御簾の向こうに広がる風景  シャワーを浴びて徐々に甦る、 みずみずしい色の見本帳をめくってみた。    

    

  蜘蛛の種類によって 網の形も変わる。 店網タナアミ ・ 丸網 ・ 籠網など、さまざまだ。  立派に造った主はだ~れ?  黒と黄色のタイツを 穿いて、 まだ 隠れているのだろうか。



      2007.7.31

 

 

 

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