ドアの向こう

日々のメモ書き 

隠り国の泊瀬

2009-02-28 | 道すがら

 2月27日

 

  三室のやま みつつゆけ 吾が背子が い立たしけむ 厳橿イツカシが本  額田王 
                                         (巻一・九)     
 静かな家並みとにぎやかな門前町へとつづく。 参道に歌碑がある。 
  小さな水音に、 古代人のこころを重ねてあるく

  泊瀬川 流るる水脈ミヲの 瀬を早み ゐで越す波の 音の清けく   七・一一一二

 

   めざす長谷寺
  仁王門をくぐると全長200m、399段の登廊ノボリロウを進む。
  屋根がついて何やら大蛇のお腹のなかにいるような感覚。 両脇いたるところ牡丹が芽吹き、 足もとの福寿草が微笑む。 枝垂れ梅も満開。 銀世界を期待したが、 四季折々の愉しみ方がある。

         春の夜や籠り人(コモリド)ゆかし堂の隅          芭蕉

 薄暗い堂のすみにひっそりと籠もっているひとの、 ゆかしい姿に心ひかれる…と。  御堂のすみの薄暗がりに、 昔の絵巻物にあるような女性の姿が見えてくる、臨場感あふれる絵のような句である…
 静謐、清冽で、しかも濃艶な気配も漂う春の夜の不思議な気分… 
 能舞台の 調べ…
              「おくのほそ道 花語り」 轡田隆史  (抜粋)
 
   

  仁王門    

  真言宗豊山派総本山  
   西国観音霊場第八番   長谷寺

 
     ご本尊  十一面観世音菩薩

  近江国高島から来た樟の霊木を用いて三日間で造り上げた。 御身の丈3丈3尺(約10m)、右手に錫杖を持つ。現在の御像は天文7年(1538)作。     (写真 パンフレットより)

 


本堂 大悲閣・礼堂まえ
 舞台も雨に濡れすがすがしい。 霧があたりを隠し、冷気に身も心もひきしまる。   この場所の霊気なのかも知れない…
  
  兎に角 人が少ない。
 
 時折 お百度参りの方とすれ違う。 あとは朧な山々に囲まれて   境内くまなく歩いた。

            -☆-

  昼食は偶然みつけた長谷路で。 古風な佇まいがすばらしく、 吸い寄せられるように入った。 雛飾りもうれしい。 にゅうめん、にしんそば。それぞれ柿の葉すし付。 文化庁登録文化財指定とは後で知った。 許しを得て襖や欄間の写真も撮る。 赤膚焼も売っている。 土蔵は版画の美術館。 

 

 

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冬の室生寺

2009-02-27 | 道すがら

  2月27日(金) 連れは奈良で誕生日を迎えた。 おめでとう。 あいにく雨だが駅はホテルの目の前にある。 JR桜井線に乗った。 
  車窓より大鳥居に気づく。 反対側にご神体の三輪山、 電車はその真ん中をごうごうと走り抜ける。 一礼しカメラに納めた。 以前読んだエッセイをもう一度読もう。 大神オオミワ神社のササユリ、 三枝サイクサ祭の笹ユリ、 狭井サイ神社の狭井も笹ユリ…… どんどん繋がってゆく。

  桜井より近鉄大阪線で「室生口大野」下車、 室生寺までタクシー。 宇陀川沿いに高さ11.5m、日本最大の弥勒大磨崖仏もみえる。

  

  室生 龍穴神社は杉の巨木に囲まれて昼なお暗い。 冷たい雨が降りしきる。 こんな日にここまで来るひとはなかった。 荘厳な雰囲気に畏れをなして本殿の奥まで行かず。 龍は穴から出て大口を開け待ち構えているに違いない。 蛙なんかひと飲みにされるに決まってる。 

  さて、 女人高野 室生寺。  せせらぎを耳にして太鼓橋を渡ると深い山中に凛と建つ、 花時もよいけれど冬も格別、 静かに拝観できた。  

  奥の院まで710段。 金堂内陣特別拝観は3月1日まで。 堂内は撮影禁止。 須弥壇に中尊の釈迦如来像、 左に薬師如来、地蔵菩薩像、 右に文殊菩薩と十一面観音像 (国宝・重文、平安時代前・中期)。 前列に十二神将像(重文・鎌倉時代)。  光背の鮮やかさと、華やかさを室生寺HPでご覧ください。 

 鎧坂

金堂 弥勒堂 鎌倉時代・重文  灌頂堂(本堂) 鎌倉時代・国宝  九輪の上に注目 宝瓶、宝鐸、天蓋   奥の院 御影堂   

  ゆっくり流れる時間、 小雨に煙る森、 静寂のせかいに佇めば、 濁世を離れ身も心も清められる気がする。 仏像に向き合い、自分を見つめることとなった。

  その他詳細はこちらへ    

 

  午後から 長谷寺へ向かう。

 

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古代ロマン

2009-02-26 | 道すがら

橿原神宮前から万葉文化館まで乗車。 バスを降りて 秋の旅のつづきである。

  今城イマキなる小丘ヲムレが上に雲だにも著シルくし立たば何か嘆かむ (日本書紀)     
  飛鳥河水漲ミナギラひつつ 行く水の 間アヒダも無くも思ほゆるかも  (日本書紀)

  崩御された夫の舒明天皇を偲び、
八歳でなくなった孫を思う女帝 斉明皇后は、 
大土木工事を好んだ という。 
 「宮の東の山に石を累カサねて垣とす」 まずは 酒船石遺跡 から。

  
   亀形石造物 

  導水施設か 
 天皇祭祀にかかわるものか 
 当時の土木工学を想像するのも
面白い

 
 酒船石
  酒をしぼる槽 あるいは
 油や薬をつくるための道具        庭園に水を引くために造ったか
 謎は深まるばかり。 
 飛鳥にはこのような石造物が 
    約20体点在する

 
  うらうらと 畦をゆけば、 蜜柑の木に寄せて バイクが停まる。
 微笑み交わした農作業のひと。

 梅の香が誘い 
      一面の 仏の座。 
  拡大 


  岡寺
  龍蓋寺リュウガイジとも称す

   本尊  如意輪観音。
  我国 塑像中最も大きい。

 旧寺跡は 仁王門の西方治田ハルタ神社境内にある。
  先刻 通りかかった。

 急な登りを行き、 竹林をいくつも抜け、 棚田を眺め石舞台へ。 その大きさに驚き。  入り口 
  蘇我馬子の墓?

 午後から飛鳥川のほとり。
  耳を澄ませば 
 明日香川 行き廻る岡の秋萩は
    今日降る雨に散りか過ぎなむ
  明日香川 瀬々に玉藻は生ひたれど しがらみあれば靡きあはなくに
名も知れぬ歌人も 浮かんでくる。 

 
  橘寺 聖徳太子御誕生所 
 田道間守タジマモリが中国から持ち帰ったという橘。  
  蓮華塚 (太子は勝鬘経ショウマンキョウを三日間ご講讃になると大きな蓮の花が庭に1mも積もってそれを埋めたところ。畝割塚ともいう。大化の改新で、これを一畝の基準とす
約100㎡)。 ほかに 黒の駒、
 五重塔跡。 阿字池。 二面石。 
  向かいに 川原寺跡がみえる。
 
  亀石を経由、 高松塚へ 

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遠くへいきたい

2009-02-26 | 道すがら


 向き合うひとは恢復も早く、 術後はじめての遠出をした。
 本人たっての希望で、旅路は前回のつづき、奈良である。 父親そっくりな明治の男は(と、秘かに呼ぶ)… 案の定、黙々とひたすら歩いた。 連れがあるのも忘れ、振り返りもしない。 
 
 こちらもかまわず立ちどまる。 心の風景がある… 歓声をあげシャッターを押す。 見失い、走っては追いかけ、また無我の境地に立ちつくす。
 人生も旅に似て ひとそれぞれの旅をする。


まずは飛鳥 こころに残る風景をご覧ください
<
 モネに積み藁…
  故郷では藁ぼっちと呼んだ。森蔭も美しい
  鶯が鳴いている。
   道を挟んで鬼の雪隠、鬼の俎。
    
  亀石を過ぎて間もなく 菜の花に見とれる
   いきなりの爆音に驚いた。
  焚き火にくべる青竹が燃えて
  パン! パン!!
    破裂音がこだまする。 
     色調の関係で順不動です。
   高松塚古墳にたどり着く
    紅白の梅や馬酔木が迎える。
     石舞台古墳に向かう途中
   長閑な田園風景が広がる
   2月26日 ポカポカと暖かい 
  田道間守タジマモリが持ち帰った秘薬、
  トキジクノカグノコノミを蒔いて育てた由。
   聖徳太子御誕生所 橘寺
 ひとの心の善と悪、二面石をみる 
  
    飛鳥川瀬瀬セセの珠藻のうち靡き 
      情ココロは妹イモに寄りにけるかも
                (巻13・3267)
    川を渡り竹林を抜け
      起伏のあるコースを岡寺へ
      拡大写真
<
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かわいらしい

2009-02-24 | こころ模様
  

   うつくしきもの。 
     瓜に描きたるちごの顔。 雀の子の、鼠鳴きするに踊り来る…

  なにもかも小さいものは かわいらしい。
  お菓子の箱に納まった おひな様は、 介護の合間に手作りされた。 
   愉しみじょうずな友からの贈り物。
  
  春は名のみの 風の寒さに 凍えがちなこころがかすかに解ける。
    よい匂い  ちいさな喜び…
 
                   -☆-

  彼女のおひな様は  古い日記にも登場した。 

      

     春日和     2006-02-25

   愛さんのおくりもの。 いぜんのもあるけれど、 色褪せしたのを気にして、 また届けられた。 貝のおひな様は お嬢さんの着物を解いて衣裳にしている。 
  幼い思い出に染まった愛らしい柄を、 雛のせかいに旨くはめ込む、 試行錯誤されて品よく決まっている。 これはセンスがものをいう。  
  
   なかのお香が 雅びやかに薫った。                         

  

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春の思い

2009-02-22 | こころ模様

  
  図書館から北鎌倉の東慶寺さんへお訊ねいただいて 春さんの謎がわかりました。   
寺の宝蔵が所蔵する 「木下春句集」にこの句が収録されており 木下春の句であると確定されました。
 
   「木下春句集」牧羊社 昭和43(1969)年刊 p113 より
   
        籠りゐて はげしき心 春をまつ    木下春    


    句集では 「待つ」 ではなく 「まつ」となっているそうです。

       お調べくださいました Y様  東慶寺様 ありがとうございました。

               -☆-

   はげしき心…  
         これほど大きな決意などないけれど
          春来りなば  心をこめて よい絵を描こう。

         春愁の襟紫に掻きあはす       かな女  

             入院中の妹に 寄りそう君へ   幸あれと祈ります

 

 

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茶筅梅

2009-02-18 | 自然や花など
薄紅の萼もいじらしい

  風はまだまだ冷たい、 春は戸惑いながらやってくるようだ。 百花の魁。 梅の香に包まれて、 万葉の歌人たちに思いを馳せる。 白梅、紅梅、八重や枝垂れなど雅に咲き乱れて。

  大宮梅まつりでめずらしい品種をみつけた。 すでに 花は終わりと見まがうばかり。 吸い寄せられるように近づく。 
  華やぎをよそに静かな佇まいのこれは…
 花弁が退化し、 雌蘂や雄蘂だけが咲く、 茶筅梅(チャセンバイ)というそうだ。 なるほど茶筅の先に見えた。 しかもかなり使いこんでいる。 寂びた色も奥ゆかしいが、 茶目っ気たっぷりに意表をついて驚かせる。 地味な花を見落とさないでよかった… 写真を見ながら心底そう思う。 

遠州糸  

   園内は 白加賀が多い。 45品種650本もあるらしい。 「豊後」 「八重野梅」ヤエノバイ、 青みがかった「月の桂」、紅白染め分けの「春日野」、「遠州糸」。 ずばり 「見驚」ケンキョウなどというのもある。

  
  古今集から
 
   色よりも香こそあはれとおもほゆれ たが袖ふれしやどの梅ぞも  よみ人しらず
   君ならで誰にか見せむ梅の花 色をも香をもしる人ぞしる      紀友則

    
    やはり  紅梅…  逆光の中で 胸が痛むほど美しかった。 
     陶器祭りも賑わった。 ことしは 湯冷ましをゲット。 

 

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お菓子のような

2009-02-17 | こころ模様

        

 でも 食べられない。 手にとって…  独特の油性の香りをかぐと、 なんとなく幸せ。 皮膚についた匂いは しばらく消えない。

  おみやげの正体は、 クレオラのクレヨンです。 ずいぶんむかしに 家族から贈られた64色。 その色名を確かめるだけでも楽しい。 

  ネーミングは子供を中心に公募したそうだ。 「熱帯雨林」 「アスパラガス」 「クローバー」 「マカロニ&チーズ」 「森のオオカミ」など。 ユニークな名前から その色を想像するのも愉快です。 「熱帯雨林」とは どんな色になるだろうか。

   

  箱の底部に削り器がある。 巻紙をほどいて鉛筆のように削れる。 
  500色の鉛筆もあるらしいが、 これで満足。 そんなに使いこなせないとおもう。 でももし手に入ったりしたら  宝物として仕舞っておくだろうな。
   ときどきは出してきて  陽に当てて ニンマリする。

 

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ミモザ

2009-02-16 | 自然や花など

 

   ミモザが咲いた
 
 
   小さな にぎりこぶしが

      パフのように開く

   銀鼠の葉が 

      羽根のように翻る

 

  

  ミ モ ザ     たとえば

    ☆ 星屑   ☆ 檸檬味の金平糖   ☆ 人形の耳飾り  ☆ 月の雫

       

     

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今朝の客

2009-02-14 | 夢見鳥

  暖かな朝です。  やあやあ  しばらく… 
   お元気でしたか、  お待ちしてました。 ことしはもう来ないかと…

    太ってる   覆面してる…  やはり鋭い目つきの シメさん。 

 しめしめ…

 腮アゴが黒くて 髭のよう。 おかげで強そうに見えるけど  とても臆病。 あたりを気づかって、 慎重にようやく向日葵を銜えました。 種をバチッと割る音がしばらく続いて

  淡いきれいな衣装から、 お客は雌と判定。  首巻きはグレー、 つばさに青みがかった黒と白や暗褐色。 嘴は淡い肌色で、 尾羽の先が真っ白です。 雄は頭と頬に濃い茶褐色がある。

 

 

  ようやく目が合ったね! いつも 独りね     メジロさんも ようこそ

     この方のページに  鮮やかなシメの写真があります。     

   ご近所の河津桜がことしも見頃です。

   去年のご紹介はこちらへ

 

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梅暦

2009-02-11 | 自然や花など

  

  いただいた絵はがきから     福田平八郎   「梅と竹」
  
  木の花は、 濃きも薄きも紅梅 に 竹、 変化する色と配置。 見えないところを想像する。 

   梅に思いをめぐらせて…
 梅返し 濃い桃色の小紋を染め返したもの。  
 襲の色目 梅襲、 表は濃い紅、 裏は紅梅色。 ほかにも 表は白で、 裏は蘇芳スオウともいう

 梅つ五月…梅の花咲く 陰暦二月の異称。  
    梅の色月イロヅキになると梅は青くて五月。 
 
 梅にも春  梅にも春の色添えて  若水汲みか車井戸 音もせわしき鳥追いや 朝日に繁き人影を もしやと思う恋の慾 … 
                          三味にあわせて  唄ってみて

こんなのも  
  梅の木学問  … 梅の木は早く生長するが大木にはならないところから、 進み方は早いが学問を大成させないで終わる人。 身に沁みる。 
  家紋に 梅鉢

 

  写真は去年の。  それぞれ 二木屋、 玉蔵院で 

  
    梅といえば名文がある。   

  梅の花の雄蘂を見るのは生れて初めてだった…
  彼等は一本一本が白金の弓のやうに身を反つていた 雄蘂の弓が 新月のやうに青空へ矢を放つた         (川端康成全集 第21巻「梅の雄蘂」 新潮社版)

  何度読んでも 感嘆する。 これいじょうの表現はない。 

 ・初花草 ・春告草……これほど親しまれ待ち望んでいる 春よ来い 早くこい 

    参照  古語類語辞典

 

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昇華する美

2009-02-07 | アートな時間

  6日の東京は、冷たい北風が吹き荒れてとても寒かったのですが、 春の陽につよく押されて出かけました。 

  ご招待をいただいてから、 蝦蟇もこの日を待ちわびていました。 暖かな落ちついた美術館で、 陶芸のせかいにゆっくり浸る。  いつしか 眼も心も忙しくなっていましたけれど。

  菊池寛実記念 智美術館(キクチカンジツキネン トモビジュツカン)
「加藤唐九郎・重・高宏-窯ぐれ三代」 展

 「やきもの」 について ほとんど知らないので いつも彫刻や絵をみるように楽しみます。 
 加藤唐九郎… これほど厳しいものとは…  知れば知るほど何も書けなくなってきましたが、 忘れないようにメモします。 

  二年まえの衝撃的な展観 も思い出され。 予習で 「やきもの」は、 土をつくるところから始まり轆轤をひき、 絵付けし、 釉をかけ、 不眠不休で(火入れから30時間、 ときには1週間も)焼き上げ」。 釉薬や炎の関係で思いがけない面白味がでる、 窯のなかで 何かが起る。 

  チケットの画像 上から
    唐九郎  志野茶盌  銘  貫道
    重    鼠志野茶碗  
    高宏    黄瀬戸花器
    

          -☆-

 意図するものと、 偶然がもたらす面白味、 窯変は物理や化学だと思える。                         神の手業も それを掬いあげる目やこころがなければ。 唐九郎は 何千も焼いたうちの、 これとおもう一点を残し、全てを壊してしまった。 
  いつか 絵を描くことは生きることに値する と読んだ。 鬼気迫る陶芸もおなじ。
 「古い窯の発掘調査をし、 膨大な資料を調べあげ、 権威も常識もくつがえした野人、 著した「陶器大辞典」のこと」 すべてが昇華される作品の群れ。 鳥肌が立ちました。 余計なことばはいりませんね。 どれをとるか 迷いますがご覧ください。  

    

  志野茶碗「鬼ヶ島」  唐九郎

 形、大きさ、厚み、肌合い、色。 縁の曲線。 量感。

  これを日本一の茶碗と言ったひとがあって 「桃太郎」 とつけたがった。 その銘は 既にほかにあったそうで 鬼ヶ島になる。「唐九郎のやきもの教室 新潮社」

  ほか 唐九郎の 唐津茶碗が好み。     「唐津片口水指 銘 緑野リョクヤ」 
「絵唐津向付」 

     

   志野茶碗 「氷柱」 
            唐九郎

  つらら… つかの間にきえてしまうもの。 禅の修行が一番厳しい季節である冬に、 形があってなきがごときもの…
  (銘をめぐって 唐九郎)


    「鼠志野茶碗」  重 

     藍と 寂朱のいろ 

     窓にぬける景色
              好きです。

 

 
  展示の中に  boa!さんの所蔵品をみつけました。 

  「志野水指」   重

 やさしい丸みのある姿、 近づいて 角度をかえて。ふわり、やわらかな乳白に貫入が走り、 錆朱が見えかくれ、 陶工のこころ模様を浮かべます。 身近におかれ、季節ごとに醸しだす羨ましき空間を想像しました。 愛らしい耳たぶ。 

      -☆-

柳や花、蕪などあしらう、 草木の素朴な線描、 勢いのある剛い線に託された想いを重ねます。こころに余裕がなければ生まれない遊びや形。 釉薬による変化を楽しみ、 無造作にみえる芸術の、 作家の葛藤の痕をたどりました。 篦で削り、 盛り上げたりする、 自然に走ったような線 …こころのうちを覗きます。 触れてみたいけれど…  しばらく、 観る力を蓄えていかないと。
  伝統を超え、父を超え、祖父を超え… 三代の響き合いが楽しみでした。 
どことなく似てると思ったりしながら。           

    
    黄瀬戸花器
   高宏

  これに 大きな枝ものを活けたい。
        裾に 野草など散らして

     モダン、 若いエネルギー 

           -☆-

 レストラン「ヴォワ・ラクテ」のランチも美味しく。 胃が小さいひとにも、 ほどよい量です。

 午後の庭園を眺めながら クロムツのソテーはサフランソースで香りよく、 その黄色は木漏れ陽にとても映えました。
  夜ともなれば 満天の星でしょうね。

  boa!さん

  素晴らしい 一日をありがとうございました。

 学習も blogのおつきあいも NETのおかげです。  帰りは 大使館の間を抜けて 鳥居坂をくだり中学校を垣間見て、 麻布十番稲荷神社まで吹き飛ばされる。 とても偉い蛙さんに遇いましたよ。

    

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春の謎

2009-02-06 | アートな時間

        

  
  何と こまやかでやさしい色、 この絵は見ぬ世の友を彷彿とさせました。 作者がとつぜん目のまえに現れたようで心がふるえます。 筆づかいは人柄を伝えました。

 先日 引用の句は  

           籠りゐてはげしき心春を待つ      春


  はげしき心… 胸を打ちました。  作者の「春」 とは…  気になって調べましたが手がかりもなく、 とうとう図書館のレファレンスをお願いしました。 これまで何度かお世話になっています。 
  担当の方は資料を当たり、 関係先へ尋ね中間報告をくださいました。 ありがとうございます。 さらに、お調べくださるようなので楽しみにしています。

  詠んだのは、 画家の 「木下 春」 らしいとのこと。
  
木下 春(1892~1973) 福島出身 前田青邨門下の女流日本画家
  
 鎌倉東慶寺ゆかりの前田青邨 (1885-1977) 、 門下の 木下 春、 やがて俳人 富安風生に絵を教えるようになり、 春も句を詠むようになった。 詳しくはこちら

 東慶寺の離れに住んでいたこともあるという、 繊細な目は句にも表れている。 是非とも訪ねて、 作品が拝見できたらなんと嬉しいことでしょうか。 

     画像は 東慶寺HPより拝借しました。                           

 

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春の情

2009-02-05 | こころ模様

   
  ・ 郵便受けのハガキは介護の只中にある友だちから。 朝いちばん、 わざわざ自分で届けにきたものだ。 あえて顔を合わせぬ思いやり、 やさしい手紙には椿の切手が添えられていた。        

  ・ 「受かりました!」  「おじいちゃんの所へしばらく行けなかったけど ごめんなさい…」  改まって すこし大人びて、 受話器のむこうに小学生の声がはずんだ。 瓶の水仙がふわり香る朝  真新しい春のページ。

  
  ・ ひさしぶりに髪を切った。 美容室の窓辺にガーベラが活けてある。 その鴇色が春の陽にさり気なく溶けこんで、 ほんのり温かい。  冬ざれよ さようなら、 軽くなった髪に そよ風が抜ける。  

       窓の枝揺るるは春意動くなり         風生                 

 
 ・ 確定申告を終える。 ていねいな応対だった。 

 

                                    

 

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手が思うこと

2009-02-01 | こころ模様

   
  二月は強い風とともにやってきた。 冷たい空っ風が身にしみる。    
 
    二月の靴の片方は菫で、 もう片方は白い霜のクリスタルでできている… 

 
などと聴いた。 春らしい色やひかりを想像するだけでも麗らかになれる。 それでも手袋だけは外せない。 なぜって 防寒以外に手套こそ人生のたいせつな飾りだから。

      けもの臭き手袋呉れて行方知れず        三鬼

   おやおや… 

      冷笑をこらへ手袋はめゐたり            かな女
  

      手袋の十本の指を深く組めり            誓子

   どれも 意味深い。 

                       -☆-

  ことし朱い手袋をバーゲンで買った。  見栄を張って手にいれたものの、 ずっと黒できめてきたので、 何となくはずかしい。  派手すぎないか…  赤い口紅のそこだけが目立つように、 手袋だけが主張し過ぎないか。
  肝心なのは手そのものだ。 

  じょうずに字を書いたり、 よい絵が描けたり、 美味しいものを作ったり、 やさしく差しだしたり。  傷みを手あてするやわらかな手。  現実は、 マニキュアの変わりに絵の具が染みて、 荒れ放題の手である。 字もうまくない。 
  それならカバーをかけて 変身だ!
  
 着けただけで有能な手になれるのならば、 これをはめて大手を振って歩こう、 袋のなかの手は心底そう思っていた。 

  
          

 

 

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