あれほど温かだったのに、出かけてくれば急に風向きが変わって、 強風がごぉーごぉと唸りをあげ幹をしならせた。 すっきりした樹形はポプラの仲間だろう。 冷たい横風が煽るのでペダルが重い。
冬は葉をすっかり落として見晴らしがよい。 澄みわたる空気、 昆虫の背のようにひかる屋根は埼玉スタジアムの銀色。
凩が叫ぶ。
木の葉落ちつくせば、数十里の方域にわたる林が一時に裸体(ハダカ)になって、蒼ずんだ冬の空が高くこの上に垂れ、武蔵野一面が一種の沈静に入る。 (国木田独歩 「武蔵野」)
遠い物音があざやかになる…
ここまで急な坂道をなんども登り下りしてきた。 やがて下の方から太鼓の音がする。 風に舞いあげられてドンドコドン!! 大層威勢がいい。 広場に幟やテントが小さく現れた。 白地に黒く 「冬まつり」の文字が読める。
冬まつり… か。 寒さも楽しんで駐車場は埋め尽くされ 人影がかたまりになって望める。
それにしても なんて寒い~
北風にあらがふことを敢へてせじ 風生
胸中に抱く珠あり空ツ風 風生
瞬間風速20m、 よろよろしながら家路につく。 何となく選ぶ句がどれも風生ということがたのしい、 きっと感性がよく似ているのだ。