ドアの向こう

日々のメモ書き 

演じるひと

2012-08-31 | こころ模様

 親戚が多いとなかなかだ。 106歳まで生きた義母は男ばかり5人育て、 彼らの伴侶を従え、 孫12人、ひ孫13人に囲まれた。 それだけで個性豊かな集団だが、 これほどそろえば何かできそう、 なにか始まる… そう思うこともしばしばだった。

 一族そろえば、 会話は果てなくジャンルを問わず楽しみである。  サラリーマンが多いなかに、 学者もいればラクダの飼育員さんもいる。 かくて女優Mの誕生である。 彼女は義母のひ孫、 つまり私からみれば血の繋がらない姪の子供を何と呼ぶのだろう。 又姪?  で、 あちらからは義理の大叔母と言うこと? わからなくなった。

 さて  六本木・俳優座劇場  最前列で感激の観劇がはじまった。  

 企画・製作・主催 
   シアタープロジェクト羽鳥
 ミュージカル 孤児 マリア
  脚本・作詞・演出 羽鳥三実広

 チャールズ・ディケンズ原作 「オリバー・ツイスト」を下敷きに創作された新作ミュージカル。 原作の オリヴァー・ツイストは 孤児マリアに  窃盗団は 芸術的に贋作工房になっている。 逆境にあっても力づよく生きる少女マリア  夢や希望を抱え歌声は澄んでいる。

 

 志を高く 道は険しくても 雲は晴れる いつの日か 
  涙を拭いて生きて行こう… 

 孤児院を追放されたマリアは偶然助けられ 贋作工房へ… そこにMさんも登場する。 

 ミュージカルは何年ぶりだろう。 のびやかな歌声、 一気に引きこまれた。 劇中にわが身も置く感じで。
 稽古をつんだ俳優の演技をみるのは快く、 いつも昂揚する。 熱唱は感情を盛りあげ、 ときにしずかに語り、 場面をふかく繊細にいろどった。 
 
 暗転ではさりげなく小道具が運ばれスムーズな展開だ。 壁の装置は話に即して街角や地下室に思える。 そこは孤児院の部屋なのか想像でき、 筋もつながった。 イーゼルが立てられ孤児たちが描く、 絵具の匂いまで感じられるのも幸せであった。  それぞれの衣装をみるのも楽しみ。

 お話しは過去と現在を行ったり来たりしながら進む。 おなじ背景が違う場面になるのもふしぎ。 想像力で室内になり屋外になり、 窓枠は額縁になる。 ギャラリーには数点の作品が飾られ、 マリアの母親がモデルになった肖像画もある。 かつて父親が描いたものだ。 額の中の俳優陣は作品となり微動だにしない、 絵の中の人物になりきっている。 照明や音響が、 舞台と観客が響き合う、 こころ一つになった。 充分に愉しんだ。 

 人間は与えられた試練を乗り越えたとき、 生きる意味に気づく…


 中央にあらすじを追い、 ときどきはMさんをみる。 一列8番の席で表情やしぐさ、 流れに沿っているか、 緊張してないかどうか、 じかにみようと真剣になった。 が、 彼女は堂々と演じ、 共演者の動きやこころに呼応し、 集中し、 じつに明るくのびのびしている。 うれしかった。 こちらが知らぬ間にびっくりするほど成長し、 力を発揮している。 心配なんて余計なお世話だ。


 ベテランの余韻、 せなかの演技を感じる。 絵画の余白のように、 見えないところに つづいている物語り。  構成もすばらしかったミュージカルに、 大きな拍手を贈った。
 たいせつな一員として立派につとめたMさんも 称えたい。 きのうまでこちらに並んでいたはずが、 舞台で演じているのも、 たのしくておもしろいじゃない。 精進して、 すてきな女優さんになってください、 たのしみにしています。

 やはり ここでも ゼロから立ちあげる 心を一つに
 ものを作ったり 何かを造る 築く  創ることって  何てすばらしい… 
  こころから実感し堪能した。 

 

 

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暑さにもめげず

2012-08-29 | 自然や花など

 午後3時 陽に灼かれながら 友だちの家まで歩いて本を届けに行った。 
 街道の花たちが元気だ。   

 

 花期の長い金盞花。  でも これは春の季語 
 やはり 朱色に惹かれる。

 まだまだ サルスベリの花  
 熱風に煽られている

  ブラシの木が 見おろしていた

 小花が集まって毬のようなの 何だったかなあ
 ゴマシジミ蝶が ひとやすみ

  春に咲いてた定家葛 まだ咲きついで… と思ったら
 
 7月頃 花はいったん途絶えるが
   新しい枝に開花しているのだって  (季節の花 300より)

  知らないことだらけ…

 

 

 

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91歳の人生塾

2012-08-28 | こころ模様

 

   清川妙  91歳の人生塾  小学館 

 本書は「人生塾」と銘打ってはいるが、私が塾長となって生きかたを伝授しようというものではけっしてない。 91歳という、自分でもびっくりするような歳になった私が、 年齢の重圧に負けず、 昨日と今日と明日のひと続きの道を歩きつづけている日々のありようを、「人生塾」と名づけたのである。
 
 私にも、眠れぬ日々、 涙を噴きこぼした日々があった。 あまりの悲しみにその頃のことを思い出せない、そういうこともあった。 しかし、そのつらい思いをプラスの方向に切り替えられたとき、 私の前にはまた、ひと続きの道があらわれたのだ。 

 本書には、私が人生の経験から得て、いつもたいせつに守っている塾則というか、 心得のようなものを記した。 もしいくつか心に響くものがあれば、ぜひ実行に移していただきたい。 すぐには効果があらわれないかもしれないが、確実にあなたは変わる。 私も変わったのだから。


 新刊は 帯をはずすとシンプルな赤い表紙   それだけに胸を打った。
  つらい経験にもくじけないで 乗り越えてきた著者にふさわしい おとなの赤だ。
赤は自分への熱いエール 亡き息子さんへの想い、 ひたむきな努力と底知れぬ葛藤があった。 体験が人生を厚く、 輝かしく彩っていると思えた。  読めば生きる喜びが湧いてくる。
   幸福に老いるために   経験から生まれた 秘策を知ることとなった。 

 老いを怖れない心の持ちかた  あなたの人生は、いつだって今が始まり。 
 頭の中は見えないからこそこわい  だから毎日鍛えるのです。
 人生は可能性を信じる旅    それを教えてくれた息子へ。

 作家生活の原点となる 「聞こえない葦」 掲載

 初めて授かった息子が耳が聞こえないとわかったときの衝撃、その手塩にかけた息子が、夫に続いて亡くなったときの絶望感。 しかし著者は、その思いを乗り越えて今まで生きてきました。 (編集者のことばから 抜粋)  


 


  人生は変えられない、だから自分を変えるのだ…

  年月という地面の上を いのちを持って延び すすんでいくつる草のように 

 つよくなろう。  まだ読み始めだが  楽しみな一冊だ。
  
  我が師は  御歳91歳。  いつも若々しく 何より心がしなやかだ。  
   生き方を真似て すてきな人生を送りたい。 
 いづれ 父に逢ったら褒めてもらえるように。

 
 
  

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白き扉

2012-08-25 | こころ模様

 猛暑の日々、 軽く冷房をつけて読書する、 至福の時だ。

 俳句の鑑賞は好き、 でも自分で詠むことはしない。
 秀句に出逢って共感しワクワクする。 17文字にこめられた大いなるものを感じ、見、聴いている。 匂いや触感に震え壮大なものがたりに気づいて感動するばかりだ。 
  ある日 句会に誘われ 予習にと萬燈ゆき句集 「玉虫」(角川書店)を拝借した。 なかに

   観世音彫り出さんと月の鑿   萬燈ゆき  

 作者の鋭い感性が胸をえぐった。 はじめ鑿の字が読めなかった。 辞書にあたって「のみ」と知る。 工具のノミである。 ノミのように 鋭い細い月影、 いまにも菩薩像を彫り出す鑿のような月光だ。 弓なりの細い月は、 白々とした神々しいまでの冷たいかがやきである。  

 相変わらず 俳句は自分なりに読んで愉しむ。  

 句集「玉虫」は  巻頭にいただく

   玉虫の玉の光のおのづから   長谷川 櫂    


 心に響く句がたくさんあった。  萬燈ゆき句集から 時節に合うのをすこし

     太陽の落としてゆきし朱欒かな
     大いなる瀧うつりけり露の玉
     町一つしだれ花火のその中に  

  太陽なのか 朱欒(ザボン)なのか
  大いなるものと 小さなものと  

  どれも絵が浮かぶ、 蛙も手を伸ばし仰ぎ見た  


    
     秋といふ白き扉を開きけり  
   
                    

 こころなしか 朝晩は秋の風が吹いてくる。 
 あすも猛暑、 そう思いたい。 

 


 

 ちなみに     ノミ         朱欒 ザボン

    どちらも むずかしい字ですね。

 

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ルリタテハ

2012-08-20 | 夢見鳥

 夕暮れの庭に 瑠璃いろのラインが印象的な ルリタテハがいた

 翔を閉じると   枯葉のように地味

  食草のホトトギスにとまる   紺地に瑠璃色がめだつ

 表と裏 こんなにも違う翔の模様  質感もまったく変わる

 ↓ は 2009年7月31日  野分の朝 燈籠のうえに横たわるチョウ  

 閉じた翔が 樹皮にも似て凹凸まであるようにみえる

 開いてみると 鮮やかで深い青の瑠璃色が現れてルリタテハと判明した

 

 

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遊歩道の

2012-08-18 | 自然や花など

  初秋の花 芙蓉   一日花

   逢ひにゆく袂(タモト)触れたる芙蓉かな  草城  

    枝をひろげて  通せんぼ…

 

  野葡萄を曳けばこぼるる露一縷   紀美

     白 紫 碧 淡紅…   色づきはじめて

 

  サルビア・グアラニチカに寄る キアゲハ 
  初めて撮れたが 遠くてぼけた

  ほとんどがナミアゲハ 
   キアゲハはめずらしいのに

 

 

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秋の雲

2012-08-15 | こころ模様

  残暑厳しい一日   墓参りにゆく
 

 ふるさとへ向かう車窓から 秋の雲がみえた
 
 ダイナミックな雲海  
  万朶の雲に心奪われた  

 


 
  眼を凝らすと
  地平より湧きあがるいくつもの雲が 
   大地からゆっくり立ちあがる人のようにも思えた

 慈愛に満ちた祖父母  
  優しかった伯父 伯母…  お礼をこめて冥福を祈る
 
 


  

 

   秋雲の晴間かがやくおもひごと    龍太

  終戦記念日  

  平和を知らず若くして逝った父に
      見せたいようなうつくしい雲だ  

    こんなにも ささやかな幸せがある
  
  

 


   
    

 

  

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熱い一日

2012-08-05 | アートな時間

真珠の耳飾りの少女  

  3日 マウリッツハイス美術館展の少女に会った。 蝉時雨を浴びて 9時15分東京都美術館到着。
 幸い混雑も無くゆっくり観られた。 瞳がどこまでも追ってくる、 心を静かにノックする。

 第1章 美術館の歴史 マウリッツハイスはオランダ語で「マウリッツ邸」、 17世紀に建てられた個人の邸宅。 上質な作品800点所蔵、建物は「絵画の宝石箱」と呼ばれる。
 第2章 風景画 ヤーコブ・ファン・ライスダール(漂白場のあるハールレムの風景) 
 第3章 歴史画(物語画) ペーテル・パウル・ルーベンス(聖母被昇天(下絵)) 
  フェルメール(ディアナとニンフたち)
 第4章 肖像画と「トローニー」 トローニーとは、 モデルに似せるのではなく、 人物の表情や性格をさぐるため、 画家が自由に創作した人物画。 ヨハネス・フェルメール(真珠の耳飾りの少女) 訴えるような瞳。 2004年4月に見た映画のこと。 肖像画が残っていないフェルメールの顔。 十数人の子供…
 第5章 静物画 ヤン・ブリューゲル(父)(万暦染付の花瓶に生けた花)カレル・ファブリティウス(ごしきひわ) アーブラハム・ファン・ベイエレン(豪華な食卓)
 第6章 風俗画 ヤン・ステーン (恋わずらい) ピーテル・デ・ホーホ(デルフトの中庭)
  ヤン・ステーン(親に倣って子も歌う)

朝一番に出かけて正解。 11時こちらが帰るころ、 ロビーに長蛇の列が渦巻いて 
熱気を伝えた。 外では灼熱の太陽が待ちかまえている。 
  真珠の耳飾りの少女を いちど模写してみよう。 
画家とモデルの声が聴きたい。


 

 旧岩崎邸(重要文化財 設計ジョサイア・コンドル)庭園


   洋館(北側)と 棕櫚の佇まいに情緒がある。 もっと下がって撮れば良かった。

 南側 列柱が並ぶベランダ イスラム風デザインのタイル。
  1階列柱トスカナ式、 2階列柱 イオニア式装飾。

  
 壁紙は 金唐革紙…  桜材の版木棒、 和紙に打ち込み。 
 随所で見られる 17世紀ジャコビアン様式、 全体はイギリス・ルネサンス様式 

 広いお庭をまえにして、 抹茶金時白玉かき氷を頂く。 座敷をそよ風が抜けた、 それとも庭園を吹く「時の風」。 ギョウジャニンニクの真っ白な花がポツポツと揺れた、 黒い実も出来ている。 ヒマラヤスギが陰をつくって、 青紅葉が爽やかに映る。  
 
 不忍池に蓮がチラホラ  明日の開花を待っている、 陽のかたまりが背中を押す。  

 


 

 ※ 河鍋暁斎より日本画を学ぶコンドル、 師より贈られた「大和美人図屏風」のこと

 

 

 

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炎暑

2012-08-02 | こころ模様

  酷暑のいま 蝉の声がしない  
 広い公園で大樹を見あげても 姿は見えず 
   ようやく ミンミンゼミのデュエットを聞いた

 どうしたのかな  ずいぶん少ない
   驟雨のような蝉時雨を待っている

  

 北浦和公園のカイノキと学生像
  マントに高下駄…  木陰が涼しい

  噴水のまわりで生まれた蜻蛉が、 影の低木に休んでいる
  何匹も なんびきも  

  アスリートの ポーズで

 ロンドンオリンピックを観ながら 8月がきた
   
 百葉箱のなかは恵まれている、 温度計も湿度計も快適な環境で暮らしている。
 風通しの良い鎧戸は 白く塗られ日光をはね返す… 
 住宅密集地の我家  三方は接近し、 外壁の反射光と蓄熱にて 連日35度以上、 気象庁発表より2.3度高めだ。  肩に力をいれて 昼夜、 暑さと戦っている。 
 そんな感じがする。 雨も降らない。


 こうなったら 暑のつくことばに立ち向かう

 炎暑  日照りでたいへんな 旱暑カンショ。  激暑  劇暑  厳暑  猛暑
 酷暑 極暑 溽暑  甚暑  大暑…  一度に攻めてきたようだ。  暑い! 

     念力のゆるめば死ぬる大暑かな  鬼城

     蓋あけし如く極暑の来りけり     立子   

     うまや路の炎暑に高き槇一樹    蛇笏

 

 

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