親戚が多いとなかなかだ。 106歳まで生きた義母は男ばかり5人育て、 彼らの伴侶を従え、 孫12人、ひ孫13人に囲まれた。 それだけで個性豊かな集団だが、 これほどそろえば何かできそう、 なにか始まる… そう思うこともしばしばだった。
一族そろえば、 会話は果てなくジャンルを問わず楽しみである。 サラリーマンが多いなかに、 学者もいればラクダの飼育員さんもいる。 かくて女優Mの誕生である。 彼女は義母のひ孫、 つまり私からみれば血の繋がらない姪の子供を何と呼ぶのだろう。 又姪? で、 あちらからは義理の大叔母と言うこと? わからなくなった。
さて 六本木・俳優座劇場 最前列で感激の観劇がはじまった。
企画・製作・主催
シアタープロジェクト羽鳥
ミュージカル 孤児 マリア
脚本・作詞・演出 羽鳥三実広
チャールズ・ディケンズ原作 「オリバー・ツイスト」を下敷きに創作された新作ミュージカル。 原作の オリヴァー・ツイストは 孤児マリアに 窃盗団は 芸術的に贋作工房になっている。 逆境にあっても力づよく生きる少女マリア 夢や希望を抱え歌声は澄んでいる。
志を高く 道は険しくても 雲は晴れる いつの日か
涙を拭いて生きて行こう…
孤児院を追放されたマリアは偶然助けられ 贋作工房へ… そこにMさんも登場する。
ミュージカルは何年ぶりだろう。 のびやかな歌声、 一気に引きこまれた。 劇中にわが身も置く感じで。
稽古をつんだ俳優の演技をみるのは快く、 いつも昂揚する。 熱唱は感情を盛りあげ、 ときにしずかに語り、 場面をふかく繊細にいろどった。
暗転ではさりげなく小道具が運ばれスムーズな展開だ。 壁の装置は話に即して街角や地下室に思える。 そこは孤児院の部屋なのか想像でき、 筋もつながった。 イーゼルが立てられ孤児たちが描く、 絵具の匂いまで感じられるのも幸せであった。 それぞれの衣装をみるのも楽しみ。
お話しは過去と現在を行ったり来たりしながら進む。 おなじ背景が違う場面になるのもふしぎ。 想像力で室内になり屋外になり、 窓枠は額縁になる。 ギャラリーには数点の作品が飾られ、 マリアの母親がモデルになった肖像画もある。 かつて父親が描いたものだ。 額の中の俳優陣は作品となり微動だにしない、 絵の中の人物になりきっている。 照明や音響が、 舞台と観客が響き合う、 こころ一つになった。 充分に愉しんだ。
人間は与えられた試練を乗り越えたとき、 生きる意味に気づく…
中央にあらすじを追い、 ときどきはMさんをみる。 一列8番の席で表情やしぐさ、 流れに沿っているか、 緊張してないかどうか、 じかにみようと真剣になった。 が、 彼女は堂々と演じ、 共演者の動きやこころに呼応し、 集中し、 じつに明るくのびのびしている。 うれしかった。 こちらが知らぬ間にびっくりするほど成長し、 力を発揮している。 心配なんて余計なお世話だ。
ベテランの余韻、 せなかの演技を感じる。 絵画の余白のように、 見えないところに つづいている物語り。 構成もすばらしかったミュージカルに、 大きな拍手を贈った。
たいせつな一員として立派につとめたMさんも 称えたい。 きのうまでこちらに並んでいたはずが、 舞台で演じているのも、 たのしくておもしろいじゃない。 精進して、 すてきな女優さんになってください、 たのしみにしています。
やはり ここでも ゼロから立ちあげる 心を一つに
ものを作ったり 何かを造る 築く 創ることって 何てすばらしい…
こころから実感し堪能した。