名残りの薔薇 は
はかなくて 寂しげ
薔薇の想いをよそに 野鳥は賑やか
棕櫚の木で 日向ぼこ
-☆-
冬近し草にかくれし榻一つ 万太郎
榻は トウと読むのでしょうか 枯草のかげに忘れ去られた椅子ひとつ、 そこはかとない秋の終わりの情趣をかさねているのでしょう。
そういえば 切手趣味週間の記念切手に山口蓬春の「榻上(トウジョウ)の花」がありましたね。 上品でモダンな作品。
また 榻はシジ゛ともいって、牛をはずしたときに、牛車の轅ナガエの軛クビキをのせたり、また、乗り降りするときの台にもした。
となれば、 この句は やはり 「とう」と詠んだのでしょう。
榻の字に見覚えがあって、 どこかに写したはず… ノートをめくると 「榻上の花」 がありました。 さらに
榻(シジ)の端書き(ハシガキ) 昔、男が女に思いをかけ、百夜続けて通ったら承知すると女に言われ、九十九夜通って、そのしるしを榻に書きつけたが、百夜目に支障があって通えず、思いを遂げられなかったという故事。 深草少将と小野小町の伝説などとして流布。 熱烈な恋のたとえ、 また思いどおりにならない恋のたとえとされる。
能 通小町(雨夜之伝)ですね。
榻一つから とうとう 残酷な恋の試練 「百夜通い」まで転がってしまいました。
能すみし面(メン)の衰へ暮の秋 虚子
秋の夜は更けて…