ドアの向こう

日々のメモ書き 

春の感情

2007-02-28 | こころ模様


      ふらんすからくる烟草タバコのやにのにほひのやうだ
      そのにほひをかいでゐると気がうつとりとする
      うれはしい  かなしい  さまざまのいりこみたる空の感情
      つめたい銀いろの小鳥のなきごゑ
         春がくるときのよろこびは
      あらゆるひとのいのちをふきならす笛のひびきのやうだ
      ふるへる  めづらしい野路のくさばな
      おもたく雨にぬれた空気の中にひろがるひとつの音色
      なやましき女のなきごゑはそこにもきこえて
      春はしつとりとふくらんでくるやうだ   ……  

                       萩原朔太郎   詩集「青猫」 より

  
            -☆-

   白い花は 100歳のマーヤ 

  気持ちの良い日だまりで 

         とろとろしながら

   小鳥のうたを聴いている 

    そして 

   一日中 夢を見るのだ 

    クリスマスローズが やわらかくそよいでいる 

        沈丁花も鼻をくすぐる  

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黒と白のシンフォニー

2007-02-24 | アートな時間
  

    マネのベルト・モリゾを模写したのは4年まえ。 彼の微妙に変わるゆたかな黒の表現を真似する。 質感に苦心した。 ターバン風の帽子はオルセー美術館展で、喪のそれと知った。 
 原画の上品さにひかれる。  印刷には無い色を見て、 もう一度描こうと決めた。


    灰色と黒のアレンジメント第1番 画家の母の肖像  ホイッスラー
 

黒の色相や彩度にこだわっている。 バランスの良い空間と色と。 
 ここにはなかったが、対極の色を主題にした絵もある。 日本趣味も窺える 白のシンフォニー№2 ホイッスラー。

 好みのグウェン・ジョンを思う。 彼女はホイッスラーに学んでいた。 黒猫を抱いた若い女バスケットの桃など 手紙の絵もある。 独特の抑えた色づかいは ホイッスラーの教えに基づいている。 微妙な色の変化や調和をたいせつにした。

  黒にこめる画家の思い、鋭い感受性をもって描かれた絵にすっかりうなされている。 瀬戸黒も、志野の白も、 おなじ雨の日に鑑賞した。 
  他の作品はこちらで  №1   №2

    模写はこちら  表情も硬いですね  

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誰が袖

2007-02-23 | アートな時間


  志野と織部-風流なるうつわ (出光美術館)を見に行く。  雨。 思った通りすいている。

  上写真       「重要文化財 鼠志野茶碗 銘 峯紅葉 桃山時代」
 この色、 風合い たまらなく好き。 亀甲の文様も絶妙の配置、 顔を近づけじっと見つめる。 縁のカーブも柔らかく箆で削ったあとが味わい深い。 門外漢にも美しい量感が分かる。

 少し先で 鑑定団でおなじみのN氏も鑑賞中。 あっと声をかけそうになるが、やめます。  

   案内により とくに器の形や文様に注目する。 
 四方形、 菱形、 扇面形、千鳥形。 州浜形などスケッチした。 
 模様には 亀甲、千鳥、網干アボシ、籠目、 草樹、車輪、橋、 結界を意味する門木や垣根 など。 

 楽しいのは 「吊し」と呼ぶ干し柿が下がったような、しめ飾りのような。 瓔珞ヨウラク、枝垂れ、揺らぎなど。 それらは着物の柄にもなっている。 絵巻や屏風のなかにも発見する。 
            -☆-

 下の写真  織部千鳥文誰ヶ袖形鉢  桃山時代   (絵はがきから)

   誰が袖 が気になって、 さっそく調べた。 やっぱりこの歌
 
  色よりも香こそあはれとおもほゆれ  たが袖ふれしやどの梅ぞも 
           古今・春上  

  室町時代、この歌をもとに名づけた匂い袋 「誰が袖」が流行ったそうだ。 
 片袖を忌むことから、二つを長い紐の両端につけ、 着物のなかを通して両方の袂に入れていた。 

 深いみどりの淵に 柳が揺れる 千鳥が遊ぶ水面  この誰が袖に惹かれます。
 匂い袋の形からうまれた 誰が袖形。 その風雅な趣。   

 大胆で自由な造形、 歪みや奇抜な意匠にあこがれた。 温度が決める黒織部や黄瀬戸などにふれ 刺激を受けた。  詳しいことは Takさんの頁へ、たくさんの 写真が見られます。 おなじことを書いてもこれほど違う…

    おなじ日 上野でベルト・モリゾにも会った

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月の桂

2007-02-22 | 自然や花など


 先日 梅まつりに行った。 そこで開催中の陶器市も楽しみに。
 ここには紅梅、白梅、しだれ梅、野梅等約650本、 45品種もあるらしい。 馥郁たる香りに包まれた。 うす紅や白 ペールホワイト 青みがかった白など惹かれる。 それぞれに名札が附いている。 

 掲げた写真は  「月の桂」。  川端康成 「白金の弓矢」も、 とくに見事である。
 桂の木を調べたことがあった。 新緑の頃 丸い若葉が涼やかだ。 枯葉はお醤油の匂いとあったけれど、まだ確かめられない。 花も見たことがない。

  中国では、桂は月にあるといわれる想像上の木だそうである。 
 …月の 桂


  カツラ科の落葉高木。高さ約30メートル。樹皮は灰色、 葉は卵心形。雌雄異株。春、葉に先立って紅色を帯びた細花を房状につける。 実は円柱形の袋果。 木は軽く軟らかで加工しやすく家具や彫刻などにむいているようだ。

 
  かつら-おとこ -をとこ (桂男) 
 月に住むという中国古代の伝説上の男。 また、月を擬人化した異名。 かつらお… 辞書から 美男子 のことと分かった。 月の桂を忘れずにいよう。



   右は 「豊後」。  まるで

  
  梅の花夢に語らく
  みやびたる花と我れ思ふ
  酒に浮かべこそ 
           大伴旅人


 の風情。 
 花びらをふるわせ小雨のなか凛と立ちつくす。 晴天下より 愁いをおびていて好もしい。
  月影の美男子と ほろ酔いの美女に出会った。


  全国大陶器市で織部の皿を求めた。 翌日、 同じものをデパートでみたら3倍の値が付いていた。 ウキ・ウキである。 

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たづたづし

2007-02-18 | イーゼルのうた

 
 春浅し 冴返る 余寒 春北風ハルナライ 薄氷ウスライ。 季語もなかなか 春遠し。
 せっかくの日曜も 寒気がぶり返し雨となった。 

  夕闇は道たづたづし月待ちて行ませ我が背子その間にも見む (巻四・709)
  
 先日の講座で習う。夕闇になると道がはっきり分からないので…  松本清張の「たづたづし」も紹介される。  「たまたま本屋によって万葉集をひらいたとき、偶然、この歌が目にふれて頭に残ったのだ… 奇妙にわたしの頭に印象を刻んでいる… 」  
 月が出るまでの暗がりの路、 たどたどしくて分かりにくい… 万葉のうたに導かれるミステリーもおもしろかった。「点と線」など読んだが 推理小説は久々。

           -☆-

 鏡のまえ 20F  古い絵にPCで加筆した 雨の日のお慰み

  …うつろう季節  たづたづし           
            
           -☆-

清川 妙先生がTVに出演されるそうです  楽しみ!
 NHK総合 英語でしゃべらナイト 23日(金)午後11:00  
 
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繋がる楽しみ

2007-02-12 | アートな時間

即位直後の乾隆帝 4年程まえ。 中味より、 意匠が気に入って香港の空港で買ったジャスミンティー。 この肖像がずっと気になっていた。

 昨日 NHKTV 夢の美術館 世界の至宝 工芸100選を見る。(再放送らしい。 後半は12日)。 
 なかに「竹糸纏枝番蓮チクシテンシバンレン 多宝格圓盒タホウカクエンコ」が出てきた。 台北の故宮博物院で見逃したもの。 図録で確かめる。

 小さな、しかも精緻な玉を収める箱である。 25歳で即位した乾隆帝ケンリュウテイ、 10回に及ぶ遠征で敗れたことは一度もない。 100万点を超える文物を収集。 以下に NHKTVより引く

 乾隆帝は戦いに明け暮れるなか30代半ばで、 皇后と、 ふたりの王子を相次いで失う。 最愛の家族を亡くしたかなしみ、 小さな宝物への思いは一層深まっていく。
  高さ24㎝の筒の(多宝格は開閉式で閉じると円柱形、 逆に閉じると方柱計になる 右写真)外側表面は数百本の竹で覆われ、 精巧な細工がほどこされている。 いくつにも区切られた、わずか5㎝の棚は回転し、 お気に入りの玉を収められる。 乾隆帝はいつ、どこでもミニチュアを鑑賞し、 ときに沈みがちな心を満たしていた。 

  まさに乾隆帝はジャスミンティーのお方であった。 ようやく解ったうえに驚くのは、以前書いたコオロギ入れも おなじ皇帝のものと知ったからである。

  豪華で美しい衣装に惹かれ 帰国間際のドル精算に、 何気なく求めたジャスミンティーはコオロギ入れへ、  さらに竹糸纏枝番蓮多宝格圓盒チクシテンシバンレン タホウカクエンコへと、 次々につながる不思議。  わくわくしてくる。 拡大してご覧下さい  
   

  

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くわい ・こわい!

2007-02-10 | イーゼルのうた
 
   

 
  写真では ほんとうの色が出ません。  なんど撮っても やはり実物より濃い。  よりおさえた色味。  4Fで  楽しかったです。  水につけておけば3月頃まで持つので次回は水彩で。

    氷はる慈姑の藍に驚きぬ    下村槐太

             この温かさでは…

    

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