ふらんすからくる烟草タバコのやにのにほひのやうだ
そのにほひをかいでゐると気がうつとりとする
うれはしい かなしい さまざまのいりこみたる空の感情
つめたい銀いろの小鳥のなきごゑ
春がくるときのよろこびは
あらゆるひとのいのちをふきならす笛のひびきのやうだ
ふるへる めづらしい野路のくさばな
おもたく雨にぬれた空気の中にひろがるひとつの音色
なやましき女のなきごゑはそこにもきこえて
春はしつとりとふくらんでくるやうだ ……
萩原朔太郎 詩集「青猫」 より
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白い花は 100歳のマーヤ
気持ちの良い日だまりで
とろとろしながら
小鳥のうたを聴いている
そして
一日中 夢を見るのだ
クリスマスローズが やわらかくそよいでいる
沈丁花も鼻をくすぐる