伯母さん、 庭のノウゼンカズラが トントンつっつーと咲きました。
かがやく朱です。
『帰っておいで… 』
ノウゼンカズラが揺れる夏の日。 8歳から過ごしたその場所には、15年間はちみつ色の、賑やかで、 みにしむ時間がありました。
こころこめてお礼申しあげます。 ありがとうございました。
母には実家でも、伯父・伯母さんの心遣いや、慈しみがなければ、弟も私も、くじけていたに違いありません。いとこ達と、へだてなく育てられたことを、とても感謝しています。 競いあい成長した5人とふたり、まるで兄弟のようです。
なつかしい風景がうかびます。
パノラマのなかの白い往還 屋敷をめぐる用水路。
ぐるり囲んだみどりのトーン 綿羊の毛のよごれ。
道造の詩のような 蜘蛛の念珠… 夕暮れは妖しい花に見えてくる。
にわとりの合唱団 四角いいなごの顔… サイロの乾し草、すえた匂い。 七面鳥が猛スピードで追ってくる。 伯父さんは養蜂もして、花追いの旅にいき、一斗缶16本もの蜜。 そのとろみも、むせる甘さも 薫りも。
あおい梅の実、モモの樹液にカブトムシ。 玉虫の背に虹がある。ゴマダラカミキリの口元、長い髭も。
特許をとった育雛器は海外へ輸出され、生産が追いつかない。養鶏場と工場にむらがる人間もよう。おとなの汗のにおい。母と25人分のゆうげの支度。卵と蜂蜜だけでつくる蒸しパン。
かや葺きのふき替え… 黴びた味噌べや… 卵をねらう蛇。
のどかな水車… クローバー畑。 楠と すばらしい森…
蜂蜜いろの風が吹く… みんな忘れない。
こころ豊かなくらしを、ありがとう伯母さん。どうお礼を言ってもいい足りないくらいです。 ふるさとは、そこにある。
9月、卒寿のお祝いに伺います。
ふかい感謝をこめて いつまでもお元気でいらしてください。
季節は風と光に乗る。
凡ては流るる、有りの儘に。
まかせよ、さながらの薫りを、
まかせよ、寂びと撓りと。
白秋 風景は動く
コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )
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みなさま ありがとうございました)
「蜂蜜の」 (虚庵) 2005-08-22 00:17:16
蜂蜜の トロリと垂れる とうとさは 香りこそすれ 昔の思いに
尊い時間 (蛙) 2005-08-22 13:14:05
思いかえせば、いつの日もかけがえのない、愛しい時間です。
七面鳥は羽をふるわせ追いかけてくる、怖いですよ。羊の毛は外側は汚れていますが、中はふかふかで生成のいろがとても綺麗だったこと。さわった手のひらが脂でべっとりしたこと。
蓮華や菜の花の蜜に、ところどころネギの香りがしたこと。隣り合わせのネギ坊主の蜜を集める蜂もいるのです。
伯父は愉しい人で、ダチョウを飼ったこともありました。特大の卵焼きができました。
虚庵さんの歌から、さまざまを思いだします。ありがとうございました。
なんと豊かな時間なのでしょう! (ルピナス)2005-08-22 23:20:14
蛙さんのブログの持つ感性の豊さの秘密が少し分ったような・・・、本当にかけがえのない愛しい時間をを過ごされてきたのですね。
そして、あのカンナの花も?すべてが、今への構成員。
近所の花好きおばさんは、七面鳥も飼っていたので、私も経験あります。追いかけられると、雄鶏だって、こわかった。
心の原点 (boa !) 2005-08-23 05:58:54
豊かな自然に抱かれて育まれた蛙さんの原点ですね。日本とも思えない牧歌的な風景と人間らしい暮らし。この原風景が今の蛙さんのおおらかで、素直なものの見方、とらえかたの感性を培っているのですね。
あたたかく、感動的な生き方をお手紙を通してみせていただきました。
七面鳥 (蛙) 2005-08-23 15:16:58
ルピナスさん やはり、体験者
尾羽を扇子のように広げ、翼を下げてふるわせながらザー、ザーと音を立て近づいてくる。すごい迫力! にらまれて顔も怖い。おまけに頭の飾りをぶるぶるさせて。
思い出しても、ほんとうに豊かな時間です。
自然が育てた (蛙) 2005-08-23 15:38:46
boa!さん つづけて、ありがとうございます。
ひとは、知らず知らずに育てられているのですね。関わった人や、自然に。
そして忘れられないのは祖父母です。若い母を、その子を、いつも慈愛ふかく見つめていました。だから今があり、blogのお仲間にもお会いしたのだと。豊かな自然と、豊かな人のこころです。