きのう フェルメール展 へ行った。 長雨がようやくあがって、 青空に 「デルフト風景」 のような雲が湧いている。
丹念に描かれた絵は こころを惹きつけてやまない。 光と翳の効果、 空間の処理、 慎重に考え抜かれた構図。 入れ子のように奥へ誘い、 衣裳の襞や翳の豊かさ。 なにより色彩の美しさに息を呑む。 時間がとまる。 静謐な絵に心安らぐ。
真珠の耀き、 ヴァージナルやリュートも聴こえそうだ。 思いがけず小さな作品でおどろく。 描くように観て 勝手な想像をめぐらせる。
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「小路」 1658~1660年頃
画家がふだん見慣れている何とない眺めを、 考え抜かれた構図や色彩で豊かなものがたりにしている。
右の建物が画面を分割しそうだが。 薄曇りの光の中、 手をついて遊ぶ子ども、 刺繍をする女性、 露地を片付けるもうひとりの女性。
細部まで見ていくと、 窓ガラスの格子にも夏の陽が散らばる、 煉瓦の描き込みもこまやか。 赤や黄色の味付け。
見飽きない、 壁やアーチの白がリズムを生んで 露地をぬけ 空き地を抜けて 遠くの空へと運んだ。 フェルメール・ブルーは、 甃に、木戸に、 女性のエプロン、 木立や屋根のうえに。 隠し味のようにこぼれている。 雲間の遙かなるウルトラマリンブルーもあった。 縦約54㌢・横約44㌢
「リュートを調弦する女」 1663~1665年頃
押さえた色合いのなかにも、 無量の、 いぶし銀のような魅力がある。 好きな作品。 手前に椅子の飾りだろうか。 無造作に置かれたものと。 不思議な陰が均衡を破る。 翳は微妙にトーンを変えて。
外光に浮かびあがる人物が調弦の合間、 ふと見せる横顔、 耳飾りのまろやかな光り、 その頬にも触れてみたいと思った。 縦約51㌢・横約45㌢
「ワイングラスを持つ娘」1659~1660年頃 「手紙を書く婦人と召使い」1670年頃
(左) 赤がここにも効果的、衣裳・ステンドグラス。ターバン。 耳飾り。 テーブルのオレンジ、 黄色。 縦約78㌢・横67㌢
(右) 机にかけてある厚地の布 壁の絵 一方からの光り 複雑に分けられる画面 それぞれの質感 床の模様 丸めた手紙 印章?など 約72・約60㌢
![ヴァージナルの前に座る若い女](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/18/16/bd058f705c6cb282f5b32ad6846f8dcf.jpg)
「ヴァージナルの前に座る若い女」
1670年頃
真贋取りざたされたが、 椅子の背もたれのウルトラマリンブルー。 1670年前後に流行したらしい髪飾りも決め手となって◎
髪型も似ている
「レースを編む女」 に 制作年が一致。 キャンバス地の縦糸横糸のムラまでよく似ている、 絵の幅もほぼ同じ と。 縦約25・横約20㌢
前後したが 2階がフェルメールコーナーで、 一番目に展示されている。 珍しく宗教画
「マルタとマリアの家のキリスト」 1655年頃
縦約160㌢・横約142㌢
フェルメールの作品中最大かつ 最も初期に描かれた
やわらかな筆致に惹かれる。 マルタを中心に。
かいがいしく働く… 女性の美徳とされた。
「ディアナとニンフたち」1655~1656年頃
← 修復前
月と狩りの女神
神話による
明るい背景(空)は別人により後世加筆されたもの という。 今回展示された修復後の作品↓。
洗浄の結果、 背景は暗くなっている。 全体の色も落ち着いている。
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まず フェルメールの絵ばかり並べてしまった
光の天才画家とデルフトの巨匠たち フェルメール展
ほかに レンブラントに天才と称され、フェルメールの師であったと伝わるカレル・ファブリティウスや、デルフトに特有の技法を確立させたピーテル・デ・ホーホなど展示 (チラシによる)
フェルメールに影響を与えたデルフトの巨匠たちの作品
さらに すぴかさん(1) (2) 、 Takさん(1) (2) のページに 詳しく載っています。
図録は買わなかった。 実物の色は 胸に留め、 絵はがき 号外など参考に