暑かりし夏も過ぎ、秋は来ぬ。
天麩羅の衣も厚くになりにけりで、それが分かる。
華奢な海老は厚手のロングコートを身に纏い、尻尾はフードを冠っている。
(いや、おむつを付けてるのかな)。
つい尻尾まで口に入れてしまい、口中を海老がガサゴソと動きはべる。
海老の鎧(よろい)にはケラチン含まれおり、お肌スベスベ効果があるとぞ言ふ。
踵(かかと!)の皸(あかぎれ!)予防に効くはず、結構結構。
「病院れすとらん」の今日の職員定食は天丼だった。
天麩羅は海老、烏賊、薩摩芋、人参牛蒡他野菜の掻き揚げに、長芋胡瓜納豆の中華サラダ、なめこ半熟卵の和え物、お漬物、味噌汁が付き、僅か580円!
天晴れである。
味は良し。夕飯まで口中に匂ひが残る。
天麩羅が厚着しており、森男等若い衆は満腹になりて、あな嬉し。
秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども
海老の衣(きぬ)にぞ 驚かれぬる
猫額亭森男朝臣
あのぅ、病院れすとらんを批判しているのではありませぬぞぇ。
飽きが来た、なぞとたわ言は申しておらぬ。
どうかこのまま続けてたもれ。
不思議なことに気分がいいときはカラッと上手に揚がって、
気が乗らないときは重た~い衣になっちゃうんですよ。
おばさん、今日は家でいやなことがあったのかな?
許してたもれ。
天麩羅はゴルフ場で何度も揚げた他は揚げたことありません。
気分によってコロモの出来不出来があるとは知りませんでした。
病院のコロモは天汁が沁み込んでいて、コロモ自体ががおかずになり満足しましたが......。
なんか、天麩羅ってコワイ食物なんですね。