トトロの棲む森
「東京都現代美術館」で開催中の「男鹿和雄展」。
始めて見るのに、懐かしい。
月明かりの里山、夕焼けの町並み、木漏れ日の深い森。
湧き上がる入道雲、澄んだ風が吹く高原........。
造成地や、電信柱が林立する町角さえ美しい。
平面なのに奥深い。
写真のように細密だが、対象を取捨選択し、写真より多くを語る。
上・「となりのトトロ 月下の大木」
下・「もののけ姫 シシ神の森」
男鹿和雄は「隣のトトロ」「魔女の宅急便」「千と千尋の神隠し」等アニメ映画の美術監督である。
監督と言っても、大声で叱咤指揮する監督ではない。
机の上でアニメ映画の背景をじっくり描く「職人」である。
背景画だから人や生き物など動くものは、別に描かれて、合体してアニメになる。
つまり生き物や動くものは何も無い絵。だが見ていると、勝手に動く物が見えてくる。
雲や水が動き始める。自分が絵の中に入ってゆく。
人垣の間から垣間見た作品は、咽喉から手が出る素晴らしさ。
目移りする。展示作品を減らして欲しいくらいだった。
上・「おもひでぽろぽろ 早朝の紅花畑」
下・「平成狸合戦ぽんぽこ 早春の休耕田」
会場は、TV映画時代、アニメ映画別展示、撮影技法、トトロ折り紙会場など。
夫々の部屋はほぼ満員だった。
ただ、苦情がある。
夏休みを外し平日に行ったのだが、くっ付きあっている男女に邪魔されて、絵が良く見えない。
小さい絵が人の目の高さに展示されているので、見にくいのである。
常識外れかもしれないが、頭の上の高さで展示して欲しかった。
説明カードは字が小さくて、全然読めなかった。
広い特設売店は押すな押すなの大繁盛。レジを6台並べても長い行列だ。
品切れが目立つ。
「おもひでぽろぽろ 夕暮れの商店街」
会場の9割は20代前半の男女で、高嶺者は殆どいない。
都営美術館なのに、今展は割引無しの所為か。
それとも、高嶺者はアニメ背景画を「美術品」として認識していないのだろうか。
だとしたら、遅れてますよ。
この展覧会は本物を知らぬ若輩者だけでなく、もっと幅広い年齢層にもお勧め出来る。
非情に素晴らしく、しかも懐かしい展覧会でした。
A4版103頁、ブログネタ満載
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