素描の一枚

久しぶりにか？
そう思っていたのにわずかな一滴
それはないだろうと思う。

素描、
久しぶりの一雨、久しぶりに見る雨空、
この灰色から搾り出される小雨、一粒の涙となって私のさらされている部位に当たって砕け散る雨の一粒、その一粒にいつもの切れはなく、
秋の本格化を告げる、あの冷たさを感じない温い初夏の雨。
まだこんな所でうろついて、遊びながら道草を食っているのか、そう思う雨に、
いつまでも未練がましく居座る価値は何なのか、そう雨空に語りかける私。
一枚の絵

今日の太陽
分厚い灰色に覆われて
一筋の光の漏れる裂け目さえない

奪われる
青
光
風
一枚の静止画像

拾う微か振動
耳を澄ましながら追う虫の声
吹奏楽の季節が伝わる

そろそろスケッチが描きあがる頃
季は未だにおぼろげな輪郭
素描の一枚がそこにある。