大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・ライトノベルセレクト№89『ヒョウタン島物語・1』

2016-07-24 06:57:57 | ライトノベルセレクト
ライトノベルセレクト№89
『ヒョウタン島物語・1』
     

 【バルタンハン半島と、モラッタ島の間にはヒョウタン島という小さな島があります】

 バルタンハン半島にはバルタン合衆国、モラッタ島にはモラッタ国という中くらいの国があります。
 古来から人や物の行き来が盛んで、有史以来、この二つの国にいさかいなど起こったことはありませんでした。

 ところが、この二つの国の間にはいくつも島があり、その中のヒョウタン島が、前世紀の半ば過ぎから領有権をめぐって争いが起こるようになりました。
 バルタン合衆国は、古代から「我が国に帰属する島である」と主張しはじめました。理由は「ヒョウタン島」の名前にあります。バルタン合衆国に古くから伝わる神話の中に出てくる「ひょうタン」という神獣に姿が似ているというのです。ひょうタンというのは、豹というネコ科の動物の一種で、バルタンハン半島が統一される過程で活躍した神さまを手伝ったという伝説の生き物です。なるほどバルタン側から見れば、獲物を狙ったひょうタンが背中をまるめた姿に見えます。

 モラッタ国は、こう主張しています。

 前世紀の半ばに、ヒョウタン島の周りの海底に大量の地下資源が眠っていることが明らかになり、それから、バルタン合衆国は領有化を言い出したのだと。ヒョウタンの由来も、モラッタ国の側から見ればヒョウタンそっくりで、ヒョウタン島というのだと主張します。

 両国とも、古代からの資料を集めて学会や国際社会で発表しあい、世界が注目する問題になりました。

 しかし、長い歴史研究や、科学的な調査の結果、わがモラッタ国の領土であることは揺るがぬ事実です。

 モラッタ国 小学生用教科書より抜粋 2013年モラッタ書房 検定2032


「なんか、ええ映画の企画はないんかいな!?」
 TOKO映画の企画室では、毎日新企画についての会議がひらかれた。TOKO映画は『某国のイージス』や『宇宙戦艦ヤメタ・実写版』など、少し社会性とスペクタクルの中間を狙って、今世紀の初め頃までは、そこそこの興行成績をあげてきた。
 しかし、ここ数年はスタジオヅブリのアニメにおされて、「アニメ如きの後塵を拝するのか!」と社長の怒り、すなわち株主の不満も高く、ヒット作が待ち望まれていた。

 その日も会議は、なんの実りもなく終わり、高階監督は憮然とペットボトルのお茶を飲み干した。これで、三本目である。
「ハハ、豪華三本立てだ!」
 ペットボトルにひっかけて、洒落を言ってみるが、もう会議室にはだれもおらず、一人虚しく笑い、オナラをかまして、部屋を出ようとした。

「おや……」

 会議室の片隅に古ぼけた、今時めずらしい日記帳が忘れられていた。
 その日記帳は、ヒョウタン島出身の助監督、ココヒコのもので、高階監督は、なんの気なしにページをめくってみた。

 これが、ヒョウタン島帰属の大問題になるとは、誰も思わなかった……。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする