大橋むつおのブログ

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巡(めぐり)型落ち魔法少女の通学日記・003『ええ! 1970年!?』

2023-01-21 10:10:45 | 小説

(めぐり) 型落ち魔法少女の通学日記

003『ええ! 1970年!?』   

 

 

 しまった!

 

 杖を振ろ下ろしたお祖母ちゃんは、目と口をまん丸にして固まった。

「ええ! 1970年!?」

 わたしも、お祖母ちゃんの倍ほど目を丸くして固まってしまう。

 旧制服ということだけが条件だったから、数年遡るだけで十分。

 それが、仮想インタフェイスに出た年代は半世紀以上も昔の1970年・昭和45年!

 お母さんでさえ生まれていない大昔だよ!

 

 どうするぅ?

 

「ま……これでいいよ」

 気軽に返事したのは、時間遡行魔法というのはずいぶんと力を使うから。

 最近血圧と血糖値高めのお祖母ちゃんに無理は言えない。

 それに「十年くらい前がいいかなあ(^_^;)」なんて注文を付けたのはわたしだ。

 一二年前くらいだったら、学校とかご近所の知り合いがいる。まあ、亜世界だから、全て同じ人間じゃないらしいけど。四人に一人はうちの中学から行ってるから、絶対に知り合いがいる。三つ上に女ジャイアンみたいなのが居る。こいつ、見かけよりは勉強できて宮之森に進学してる。こういうのとはいっしょになりたくない。

 だから「ま……これでいいよ」にしておく。

 三年ずっと昔に居続けはヤだけど、放課後になったら今の時代に戻れるしね。

 

「スマホは手鏡に擬態させてあるけど、あんまり人前では使わないでね」

「え、スマホ使えんの!?」

「うん、MG仕様だから普通に使える」

「NG?」

「MG、Magical Girl」

「ああ、英語で魔法少女。いいじゃん(^▽^)」

「お金も、このお財布に入っていれば1970年当時のお金になるからね。教科書代とか制服代は、必ず、このお財布に入れてから支払うんだよ。型落ちだけど、機能は変わらないから」

「え、がま口!?」

 それはサザエさんのお母さん(フネさんだっけ)が持っていそうな古典的な、それこそガマガエルの口に皮の袋が付いたようなやつ。

「昔の魔法少女がタイムリープするときに使った奴だからねぇ」

「アハハ、まあいいや……あれ、変わらないよ?」

 さっそく、いまの財布から移し替えたけど、千円札は相変わらず野口英世のまま。

「橋を渡らなきゃ昔のお金に変わらないから」

「うん、分かった」

 回れ右して歩き出したら呼び止められた。

「そっちじゃないわよ」

「え、だって、橋は向こう……」

「こっちこっち」

 お祖母ちゃんは、家の筋向いの川辺を指さす。

「え、ここ?」

「ここにMが見えるだろ」

「え……ああ」

 護岸のコンクリのところに、うっすらとMの掘り込み。

「この50センチ以内に近づくと橋が現れる……ちょっと、まだよ!」

「ごめん」

「向こう側にはGが彫ってある。帰る時は、そこからね」

「うん」

「くれぐれも、人に見られないようにね」

「見られたらどうなるの?」

「写真に撮られてSNSに投稿される」

「ああ、それはヤバイよね(^_^;)。向こうで見られたら?」

「鬼太郎の友だちだと思われるだろうね」

 ああ……わたしって、目が大きくって、微妙につり上がってるから猫娘に間違われるかもぉ。

「いろいろ珍しいだろうけど、寄り道なんかしないで帰って来るのよ」

「うん、任しといて!」

「よし、今だ!」

 

 ポンと背中を押されて前に踏み出すと、目の前に橋が現れた。

 田舎の川に掛かっていそうな、軽自動車がやっと渡れます的な古びたコンクリートの橋。

 橋の右には『寿川』左側には『戻り橋』と字が彫り込んであった。

 

☆彡 主な登場人物

  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女

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