大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・145『修学旅行・二日目の残り』

2024-11-16 14:49:00 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
145『修学旅行・二日目の残り』   




 奈良は壮大な田舎だ。

 四方を山に囲まれてるんだけど、ついさっきまで居た京都よりも広い。

 でもね、京都はお寺や神社だけでなく、ビルもけっこうあった。五階建てぐらいのね。駅前ビルやらデパートやら大学やらホテルやら、少しは会社とかも。そういうものの間にはビッシリと平屋や二階建ての瓦屋根が、それこそ甍の波で、その点ではけっこうな大都会。

 だけど、奈良は一面の田んぼや畑やら。そういう田畑の中にお寺の大屋根がや塔が覗いている。奈良の主役は田んぼと畑。宮之森や大浜くらいの家並も見えて、ガイドさんの説明だと奈良市の中心らしい。
 うちの街をそれほどの田舎とは思わないけど、奈良を田舎と感じてしまうのは、元々は平城京という日本の都だったという知識があるからなのかもしれない。

 いや、高校生の気まぐれな印象です。気に障ったらごめんなさい(^_^;)。

「でもさぁ、京都ほど人が多くないのは嬉しいかな」

 東大寺近くの駐車場にバスが停まって呟いたら、みんな「うんうん」と頷いた。

 その京都でも、令和の半分ほどの混雑でしかないんだけど、それでも京都はくたびれた。令和のインバウンド爆発の京都に行ったら死んじゃうね。

「うわあ、鹿ですよ、鹿の団体ですよ!」

 駐車場を出ると、もう鹿が列をなして歩いていて、感動!

「鹿と遊ぶのは明日、今日はこのまま宿舎だからね!」

 花園先生に叱られて、そのまま興福寺近くのホテル。


「おお、奈良盆地が一望できるよぉ!」


 真知子が声を上げ、みんなで窓辺に寄ってみた。

「ああ、ほんの三階なのにねえ」

「でも、宮之森も三階の教室から街の向こうまで見えますよぉ」

「そうだけど、なんだか落ち着くわねえ……」

「あ、佳奈子、なに食べてんのぉ!?」

「あ、お茶うけ置いてあるよ」

「あ、お茶淹れます!」

 京都のホテルにお茶うけは無かった。ここもホテル形式だけど旅館の雰囲気がある。

「落雁だねぇ」

 ラクガン? 

 イミフだけど、下手に聞いたら昭和人間でないことを疑われるような気がして止しておく。

 ラクガンをポリっとかじる、口の中に栗の味わいと控えめな甘さが広がって、ほうじ茶によく合う。

「ねえ、五重塔も雰囲気だけど、興福寺って全体としては取り留めないねえ」

「うん、京都のお寺って塀で囲まれててまとまりがあったのにね。興福寺は町との境目が分かりにくいねえ」

 真知子とたみ子は高尚だ。

「それはですね、廃仏毀釈の影響ですよ」

「え」「ああ」

 ロコが入るとさらに高尚になる。

「明治の初めに神仏分離令が出て、お寺や仏像がずいぶん壊されたんです。京都はそれほどじゃなかったみたいですけど、奈良は、けっこうやっちゃったみたいで、興福寺はあれこればら売りされましてね。あの五重塔も町の風呂屋さんが焚きつけ用に買ったんですけど、大きすぎて壊せないんで、しばらく放っておいたら神仏分離令が撤回されて、ああやって無事に立ってるんですよ」

「「「「ほお」」」」」

 ロコの取材能力はますます冴えてきてる。

「あ、なんか香ばしい……」

 たみ子がほうじ茶のことを言ったのかと思ったら、わら焼きの匂いがほのかにしてくる。

「なんだかうっすらと霞が漂って来ましたよぉ」

 若草山や、その向こうの山々がシルエットになって、興福寺の伽藍もこころなし霞んできたような気がする。

 どこかで、稲刈りの後の藁を焼いてるんだ。

「なんだか万葉の昔から漂ってきたみたいねぇ」

「雰囲気ですねえ」

 ラクガンとほうじ茶にわら焼きが加わって、五人揃って時空を超えそうと思ったら、館内放送。

『ええ、夕食の準備が整いましたので、宮之森高校の生徒さんは一階の大宴会場までお集まりください』

 万葉の昔から引き戻されて、なんだかおかしくなってクスクス笑いながら、みんなで大宴会場に向かった。


 その夜は、布団を☆形に並べ、いろいろ来し方行く末について話したんだけど、長くなるから、またいずれ。


 明くる三日目は、地図とスタンプカードをもらってグループ単位で周る。それぞれのポイントには先生が立っていて、スタンプを押してくれる。

 移動手段は歩くかバスかタクシー、場所によっては電車という手もある。

 うちのグループは話題になった興福寺から始めて、東大寺、春日大社、志賀直哉旧居とかを周る。


☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!63『拓美とクララの助けを借りて』

2024-11-16 07:14:38 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
63『拓美とクララの助けを借りて』 





 マユの姿をした拓美が手伝ってくれるんだけどな、めちゃくちゃ恥ずかしい(>△<)。

 便座から滑り落ちねえように拓美が体を支えてくれる。悪魔というのは何からでもエネルギーを摂ることができる。人間みてえに飯も食う。でも、食ったものは百パーセントエネルギーに代わるんで、排泄ということをしねえんだ。

 でもよぉ、ケルベロスは犬だからな、豆柴の姿になっても、飯を食えば子犬らしくポコンとお腹も出るし排泄もしちまう。

 ア アァ~~~~

 屈辱と快感を同時に感じて、思わずため息が出ちまう。


「楽になりましたか……」


――いやはや、なんとも(-_-;)――

「え……?」

 犬語なんで、さすがに通じねぇ。

「犬に化けてるけど、マユさんなんでしょ?」

 そう言いながら、クララがウォシュレットのボタンを押した。

「キャイーン (✹Д✹ノ;;) !」

「「おっとぉ!」」

 水圧で吹き飛ばされるところだった! 拓美が支えていてくれたんで、なんとかこらえることができたんだけどなあ。これじゃもたねえ!

――化け・てる・ん・じゃな・くて犬のか・らだ・を・借りて・んだ!――

 思念でこれだけのことを伝えんのに、五分もかかっちまったぜ。

 仕方がねえんで、ケルベロスの魔力で人間の姿に化けた(''◇'')!

 ドロン!

「「わ……!」」

 豆柴がいきなり人間の姿になったんで、個室はギュ-ギュー……おまけに、その姿はスッポッンポン。マユは慌ててトイレットペーパーで最低限のところを隠したぜ!

「天使の雅部利恵ってのが、なんか企んでてよ、AKRに対抗しようとしてやがんだ。だから緊急事態! それで、魔界の犬の体を使って、ここに来たわけ!で、犬の姿じゃ、意思の疎通もムツカシイから、犬の魔力で、人間に化けてる! でも犬の悲しさ、化けても服までは手が回らねえ。で、お願いなんだけど……」

「あ、服ですか!?」

「ううん。便器の中のモノ流してくれる。ここからじゃ、レバーに手が届かなくって……」

 クララがレバーを押して水を流した。

「でも、裸でいいんですか?」

「いいんだ、またすぐにポチに戻るからよ。利恵は、ルリ子の欲望を、純真な向上心と思いこんで、このAKRに対抗してきてやがるんだ。下手をするとAKRが潰されっちまう。やつらの動きはここのスタッフも掴んでるぞ。この世界ってクサイ臭いで満ちてるからな」

 拓美が、思わず鼻を押えやがる。

「その臭いじゃねえ!」

 その五分後、マユはポチの姿にもどってよ、トイレの通気口からダクトに入って黒羽たち幹部のいる部屋を目指したぞ。ここのスタッフたちが、どれだけオモクロの情報を掴んで、対策してやがるか知るためにな(`△')。

 拓美とクララは、衣装部屋に行って、マユが人間の姿に戻ったとき、困らねえように服を探しに行ってくれた。

「どれも、ステージ衣装だから派手ねぇ……」

 拓美がため息をついた。

「これがいいよ!」

 クララが一着の衣装を取りだした。

 それはAKRのデビュー曲『最初の制服』に使った衣装で、ほとんど、女子高生の制服と変わりなかったぜ。

 二人は、それをトイレの通風口下の用具入れの上に目立たねえように置いてくれた。

「でも、クララ」

「なに?」

「マユさん、人間に化けたとき、クララに似てなかった。なんとなくだけど」

「わたしは、なんとなく、あんたに似てるような気がした」

 ポチの悲しさ……人間に化けるときは見本がいる。つまり、その時見えた人間の姿を真似てしまうんだ。だから、マユの姿をした拓美と大石クララを足して二で割ったような姿になったわけなんだ。


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  



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