巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
連絡します連絡します、本日6限のホームルームは中止、本日6限のホームルームは中止、部活等も中止、生徒諸君は5限終了後ただちに下校するように。5限終了後ただちに下校するように。
お財布を掴んで学食に行こうと階段を下りかけたところで生指部長の若杉先生の放送が入った。
いつもなら放送部の『宮之森アフタヌーン♪』がのんびり始まる時間なので、みんな――なにかあったな――という気持ちになりながらも、良くも悪くも羊の群れみたく穏やかにランチタイムに移って行った。
学食でもランチの列に間に合おうという熱気はあったけど、ことさら若杉先生の放送について話題にする声は聞こえなかった。
「ねえねえ、新聞社の車が正門の前に並んでますよ!」
ロコが目を輝かせてランチのトレーを置く。いつものことだけど『情報屋ロコ』は早耳頭巾だ。
「なにぃ穏やかじゃないわね」
メンチカツにソースをかけながらのたみ子も、みんなのお茶を淹れている真知子も、やっと席に着いたわたしも、動きは停めないけども聞く態勢になっている。
「それがですねぇ……」
ロコの話の中身に、四人は動きが停まってしまう。
「ええ、またぁ!?」
たみ子が声を上げるけど、真知子が――あとでね――という目配せをして、とりあえずAランチやBランチをかっこむ。
南館とグラウンドの間、文化祭で【ウェディングパラダイス】をやった雛壇に腰掛ける。教室では憚られるし、中庭も人が多いからね。
「二年の女子だそうです」
ここに来るまでに、また自殺した子が出たというところまでは分かった。
なんせ、学食の窓からでも見えるところにA新聞の車が停まっているのが分かる。学食の噂話からもA新聞の他にもMやYやS新聞がズラッと並んでいて、教頭先生と若杉先生が――生徒が動揺するから学校の周囲に停めないでくれ――と苦情を言いに行ってるのが見えた。
さすがに新聞社の車は校内からは見えないところに移動したみたいだけど、やっぱり――たいへんなことが起こったんだ――という空気は隠せない。
入学以来、生徒が亡くなるのは三件目だ。
一年の時の栗原さん、この六月には三年の金原さん、そして今度の二年生の女子。去年の栗原さんは病気だったけど、今年は自殺が続いている。
「いえ、実はもう一件」
「「「ええ!?」」」
「実は、夏休み中に一年の男子が……これは未遂だったらしいですけど」
「はあぁ、そりゃあ新聞社も来るはずだぁ」
「「「…………」」」
真知子がため息ついて四人は言葉が無くなってしまう。
タタタタタ
グラウンドへのスロープを佳奈子が部室に駆けていく。
放課後の部活ができなくなったので、調整とかがあるんだ。部室棟の前には見覚えのある運動部の部長たちが集まり始めていた。
けっきょく、この日はマスコミや教育委員会、PTAなんかの対応と職員会議で先生たちは大変みたいだった。
おそらく、明日は臨時の全校集会で黙祷。
多少の事情説明はあるかもだけど、あたしたちもMITAKAとかで話し合ってみようということになった。
☆彡 主な登場人物
- 時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
- 時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
- 滝川 志忠屋のマスター
- ペコさん 志忠屋のバイト
- 猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
- 宮田 博子(ロコ) 2年3組 クラスメート
- 辻本 たみ子 2年3組 副委員長
- 高峰 秀夫 2年3組 委員長
- 吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
- 横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
- 加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
- 安倍晴天 陰陽師、安倍晴明の50代目
- 藤田 勲 2年学年主任
- 先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 世界史:吉村先生 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
- 須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
- 御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
- 早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
- 時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
- 妖・魔物 アキラ
- その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
- 灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人