鳴かぬなら 信長転生記
篠突く雨の中、行軍しつながら再度出した偵察隊が戻って来る。
「御注進! 御注進! 敵はバケツ谷にて休息し雨やみを待っております!」
「俺たちも雨宿りするか、もうパンツの中までグチュグチュだし(^_^;)」
桃太郎が情けないことを言う。
「このまま前進だ! 敵の軍列は伸びきったままバケツ谷で停まっている。ならば、三千の軍勢でも容易に本陣が突けよう! 大将の首さえ獲ってしまえば、この戦は勝ちだ! このまま突撃しろ!」
「あ、でもでも、雨の中走ったら体が冷えて……」
そこまで言うと、桃太郎は人よりも大きな顔を寄せてくる。
「な、なんだ(;'∀')!?」
「オレ、お腹弱いから、冷えると……したくなる」
「え、なにがしたくなるのだ?」
すると、いっそう顔を寄せてくる。
「……鶴ちゃん、いい匂いがする(#^o^#)」
「か、嗅ぐんじゃない!」
「ごめん、ウ〇コしたくなる(#^皿^#)」
「すればいいだろ! 早飯早グソは武将のたしなみだ!」
「だって、こんなゴチャゴチャと鎧着こんでるし」
「戦国武士は鎧を着たままするのが嗜みだ、常識だろーが!」
「え、どうやって?」
「戦袴は股が割れていて、しゃがめば開く。フンドシは前に垂らさず、上に伸ばして首の後ろで紐を括る。そうすれば、紐を緩めるだけで用が足せるんだ。常識だろーが」
「知らなかった! パンツだし!」
「グヌヌ、もう馬に乗ったままやれ! 家康は、三方ヶ原でそうやって人気者になった!」
「え、そうなのか!?」
「城に逃げ戻ると、鞍壺にナニが付いているのを家来に見咎められてな。『バカを申せ! これは兵糧の味噌が付いただけのものじゃ!』と言い張って笑いを誘い、負け戦で落ち込んだ空気をほぐしたんだ」
「なるほど……」
「大将というのは、多少人間的な弱みやおかしみがあった方が人が懐く。しかし、わざとやったら、ただの鼻つまみ者だ……って、寄ってくんな!」
「いや、鶴ちゃんも首の後ろで紐括ってんのかなって……いや、めんごめんご(^0^;)」
「さっさと号令を掛けろ、勝機を逃すぞ!」
「よし! 皆の者! 敵はバケツ谷の底にあり! 狙うは大将の首一つ、歯向かう者は切り捨て打ち捨てよ! 逃げる者は追うな! 大将の首が取れたと知ったら、組打ちの最中であろうと、戦場(いくさば)を離れ、お爺さんお婆さんの待つ村に駆け戻れ! 行くぞ!!」
おお!!
クソの話で完全に解れた桃太郎軍は、そのままバケツ谷を見下ろす崖の上に至り、桃太郎が先頭を駆けて、ノリと勢いのまま敵の赤鬼大将の首を獲ってしまった。
☆彡 主な登場人物
- 織田 信長 本能寺の変で討ち取られて転生 ニイ(三国志での偽名)
- 熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
- 織田 市 信長の妹 シイ(三国志での偽名)
- 平手 美姫 信長のクラス担任
- 武田 信玄 同級生
- 上杉 謙信 同級生
- 古田 織部 茶華道部の眼鏡っ子 越後屋(三国志での偽名)
- 宮本 武蔵 孤高の剣聖
- 二宮 忠八 市の友だち 紙飛行機の神さま
- 雑賀 孫一 クラスメート
- 松平 元康 クラスメート 後の徳川家康
- リュドミラ 旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ 劉度(三国志での偽名)
- 今川 義元 学院生徒会長
- 坂本 乙女 学園生徒会長
- 曹茶姫 魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
- 諸葛茶孔明 漢の軍師兼丞相
- 大橋紅茶妃 呉の孫策妃 コウちゃん
- 孫権 呉王孫策の弟 大橋の義弟
- 天照大神 御山の御祭神 弟に素戔嗚