魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!
19『知井子の悩み・9』
グニュゥゥゥ……グニュ……グニュゥゥ……
空間がマーブル模様にねじれて渦を巻いていやがるぜ!
その渦の真ん中に向かって浅野拓美はゆっくりと落ちていきやがる。
渦になっちまってるところはよく分からねえけど、外側はまだ完全に渦には成りきってねえ……よく見ると、それは拓美の十数年の思い出たちだ。
今まで受けたオーディションの数々……「いいかげんにしろよ」と叱りながら、心の中では応援してくれていたお父さん……「残念だったわね」と、落ちたオーディションを慰めてくれた親友が、心の中ではせせら笑っていたこと……シカトするように何も言わない友だちが、痛々しそうに思って心を痛めていたこと……あるアイドルユニットのデビューに胸ときめかせ、人生の目標にした中学生だったころの拓美……音楽の実技テスト、思いがけず拍手をもらい、いい気になっている拓美……「拓美ちゃんすごい!」……先生もクラスメートも、この時は素直に喜んでくれていた……保育所の生活発表会、拓美は、音程の合わない子を懸命に教えていた。お母さんがお迎えに来ているのに、この子たちみんなと楽しく歌いたいと思っていた純な拓美……よちよち歩きだったころ、公園に連れていってもらい、吹く風に歌を感じ、まわらない舌で、そよぐお花といっしょに歌っていた……「ねえ、この子ったら、お歌、唄ってる!」「ほんとかよ!?」拓美を抱き上げて、心から嬉しそうにしている若いお母さんとお父さん……そこで、マーブル模様は渦のまま止まっちまった。
今まで受けたオーディションの数々……「いいかげんにしろよ」と叱りながら、心の中では応援してくれていたお父さん……「残念だったわね」と、落ちたオーディションを慰めてくれた親友が、心の中ではせせら笑っていたこと……シカトするように何も言わない友だちが、痛々しそうに思って心を痛めていたこと……あるアイドルユニットのデビューに胸ときめかせ、人生の目標にした中学生だったころの拓美……音楽の実技テスト、思いがけず拍手をもらい、いい気になっている拓美……「拓美ちゃんすごい!」……先生もクラスメートも、この時は素直に喜んでくれていた……保育所の生活発表会、拓美は、音程の合わない子を懸命に教えていた。お母さんがお迎えに来ているのに、この子たちみんなと楽しく歌いたいと思っていた純な拓美……よちよち歩きだったころ、公園に連れていってもらい、吹く風に歌を感じ、まわらない舌で、そよぐお花といっしょに歌っていた……「ねえ、この子ったら、お歌、唄ってる!」「ほんとかよ!?」拓美を抱き上げて、心から嬉しそうにしている若いお母さんとお父さん……そこで、マーブル模様は渦のまま止まっちまった。
渦の中心はほの暗く、台風の目のように揺らいでいる。
多分あそこまでいけば、あっちの世界に行ってしまうんだろう……拓美は、そう感じて覚悟を決めた……でも、渦は、それ以上には動こうとはしねえ。
おまえ、本当に唄うことが好きだったんだな。
う……うん……
おまえ、本当に唄うことが好きだったんだな。
う……うん……
渦に呑み込まれ、先の方しか見えてねえ右手の先が返事をするみてえにピクリとしたぜ。
すると、急速にマーブル模様は逆回転しはじめ、あっと言う間に、もとの小会議室に戻っちまった。
「拓美……おまえ、歌を唄うために生まれてきたような子だったんだ……」
「拓美……おまえ、歌を唄うために生まれてきたような子だったんだ……」
「うん……そうみたい……」
「でも、死んじまった」
「…………」
「……半日だけ、生きていることにしよう」
「え……」
手にしたA4の白紙が本当の合格通知に変わった。
ちょうど、えらそうな(でも、実はペーペーの)スタッフがヤケクソで配電盤に拳をくらわせやがったんで、その拍子で電源が戻ったことにした。
「え、お、オレの根性で電源戻ったってか!?」
「では、再開しまーす!」
手にしたA4の白紙が本当の合格通知に変わった。
ちょうど、えらそうな(でも、実はペーペーの)スタッフがヤケクソで配電盤に拳をくらわせやがったんで、その拍子で電源が戻ったことにした。
「え、お、オレの根性で電源戻ったってか!?」
「では、再開しまーす!」
ディレクターの声がとんだ。
ん?
審査委員長のジジイは、受験者のファイルが微妙に厚くなったような気がしたけど、フロアーになだれ込んできた受験者どもの熱気ですぐに忘れちまった。
「審査は番号順ではなく、ランダムに出てきた番号で行います。いつ自分の番になってもいけるように」
スタッフがそう言うと。ビンゴゲームのガラガラが出てきて、HIKARIプロの売り出し中のアイドルが、にこやかにガラガラを回しやがった。
「審査は番号順ではなく、ランダムに出てきた番号で行います。いつ自分の番になってもいけるように」
スタッフがそう言うと。ビンゴゲームのガラガラが出てきて、HIKARIプロの売り出し中のアイドルが、にこやかにガラガラを回しやがった。
「あの子の笑顔、小悪魔に見える……」
知井子が呟いて、本物の小悪魔は思わず笑いそうになっちまったぜ。
知井子は、びくびくしながらも「一番になれぇ!」と、思ってやがる。学校では見せたことがない闘争心だぜ。
「受験番号47番!」
47は知井子の番号だ。
「受験番号47番!」
47は知井子の番号だ。
「え!?」
ビックリはしたけども、知井子はおどおどとはしてねえ。
知井子、大進歩だぞ!
思わずこぶしを握るマユだったぜぇ(^_^;)。
知井子は、オハコの「ギンガミチェック」を元気いっぱいに歌い上げやがった。振りはコピーじゃなくて、自分で考えたオリジナル。ちょっとタコ踊りみてえだけどイケテル……ここまでイケテルとは、マユは予想もしていなかったぜ。
おあいそじゃねえ拍手を受けて、知井子はステージを降りた。
次のやつは、知井子に呑まれちまった。といっても、ここまで勝ち進んできたやつだ、萎縮することはなかったけど、どこか力みすぎ、知井子みてえに自然なノリにはなってねえ。
おあいそじゃねえ拍手を受けて、知井子はステージを降りた。
次のやつは、知井子に呑まれちまった。といっても、ここまで勝ち進んできたやつだ、萎縮することはなかったけど、どこか力みすぎ、知井子みてえに自然なノリにはなってねえ。
マユは、お付き合いのつもりで適当にやっておくつもりだった。
けどよ、知井子が作った空気は、みんなに伝染しちまって、マユもつい本気になっちまったぞ(^〇^;)。
そして、拓美の番がまわってきた。
受験番号は現実には存在しねえ48番だ。
マユは、改めて魔法をかけ直した。審査が終わったら、関係者一同の記憶、ビデオやパソコン、カメラの記録も消さなきゃならねえ……おちこぼれ小悪魔には、少し荷の重い魔法だぜ。
拓美がステージに上がった。
そして、拓美の番がまわってきた。
受験番号は現実には存在しねえ48番だ。
マユは、改めて魔法をかけ直した。審査が終わったら、関係者一同の記憶、ビデオやパソコン、カメラの記録も消さなきゃならねえ……おちこぼれ小悪魔には、少し荷の重い魔法だぜ。
拓美がステージに上がった。
おおぉ…………
審査員、受験者たち、フロアーに居た全員からため息がもれたぞ。
あ、あれ( ゚Д゚)?
思わず自分が魅力増進の魔法をかけちまったのかとビビっちまった。それほど拓美は輝いていたぜ……。
☆彡 主な登場人物
- マユ 人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
- 里依紗 マユの同級生
- 沙耶 マユの同級生
- 知井子 マユの同級生
- 指原 るり子 マユの同級生 意地悪なタカビー
- 雅部 利恵 落ちこぼれ天使
- 黒羽 英二 HIKARIプロのプロデューサー
- 浅野 拓美 オーディションの受験生
- 片岡先生 マユたちの英語の先生