せやさかい・413
珍しく、急ぎの話やなかった。
ほら、堺東のホームで電車待ってたら、電車よりも早く入ってきた真鈴先輩のメール。
電車の中で確認したら――三日、お寺に伺ってもいいかなあ?――という、穏やかな内容。
三日は二日先の土曜(つまり、昨日)なんで――大歓迎です!――と三秒で返事を打った。
すると二秒で返事の返事が返ってきた――じゃあ、宗武監督といっしょに行きます!――
ゲ、宗武監督!?
宗武監督いうのいは江戸川アニメのえらいさん。ほら、『犬が西向きゃ尾は東』の声優にド素人のうちを起用したオッサン。
つごう三回東京に行ってなんとか終了、最初は準レギュラーとか言われてたけど、三回で済んだいうのは、やっぱり思てたほど使い物にならんいうことで削られたんやと納得してる。
せやさかい、もうパチモン声優にかり出されることは無いと安心してた。
ところが、東京バナナを自分で、人形焼きを真鈴先輩に持たせてやってきた監督は、すごい事を言うた!
「この役に決めたんだけど」
「「え!?」」
うちも真鈴先輩もビックリした。
「監督、今日は相談だけだって(#`Д´#)!」
「え、もう話通してあるって?」
「それは、今日伺うことについてだけだって(-o-;)!」
先輩が嵌められたのか、先輩もグルなんか、けっきょくは、今までと同じパターンで新しい仕事を引き受けることになってしもた(;'∀')。
仕事は秋アニメ『宇宙戦艦三笠』というスペースアドベンチャー。
「宇宙戦艦といえば、ヤマトだけど、ヤマトの元は戦艦大和。あれは沈んじゃったからね。そこへいくと三笠はバルチック艦隊をやっつけた世界的な殊勲艦! なんたって、現物が横須賀に残ってるでしょ! インバウンドでは東京や横浜に後れを取ってるけど、これで、世界の目は横須賀に日本のスピリットを発見、刮目することになる!」
『宇宙戦艦三笠』は、横須賀の高校生たちが地球を救うために三笠に乗ってマゼラン星雲のピレウスいう星を目指すという、パチモンぽいストーリー。
きっと、江戸川アニメらしいイワクがあるんやろけど、あえて聞きません。
なんちゅうても、真鈴先輩の目の底が真剣やったし。
素人同然のうちが考えても、秋アニメの声優を今ごろオーディションもせんと選ぶいうのはありえへんし(^_^;)。
で、それはいったん置いといて、4日の今日は、一足飛びに秋が来たんちゃうかというような青空が広がる日曜日!
大人たちは市長選挙の投票に!
うちら高校生は、久々に散策部の探訪に出かけた!
「今日の探訪は、ここだ!」
今度のガイドを自ら引き受けたソニーが自信満々に指さしたのは…………はいからほり?
「バカ者! 下に漢字で書いてあるだろうが!」
あ!
アーケードの上に大きな赤字で『はいからほり』と書いたあるのんで気ぃつけへんかった。その下に白い看板がぶら下がってて『空堀商店街』と黒字で書いてある。
「そらほり商店街!」
アハハハ(≧∇≦)
ソニーには呆れかえられ、ソニー以外の三人に笑われてしまう。
「いやあ……どっちが日本人だかぁ……」
中二からの担任で(今年は外れたけど)月島神社の巫女でもある散策部顧問のペコちゃん先生が呆れかえる。
留美ちゃんとメグリンは、まだ笑いが収まれへん。
クハハ クフフ
「ちょ、そこまで笑わんでもええんちゃう(`_´)」
「い、いや、ごめんごめん(^_^;)」
「わるいわるい(^_^;)」
「い、いや、せやかてね、ちょっと見てみいや」
うちは、改めて『空堀商店街』のアーケードの中を指さした。
( ,,`・ω・´)ンンン?
マジマジと指先を見るみんな。
「この商店街て、下り坂になってるやん。買い物終わって戻ると、坂の上にこの出入り口が見えて、スッコーンと抜けたみたいに空が見えるやんか。昔は、アーケードとかも無かったやろから、買い物してても、見上げて歩いてたら、空がきれいに見えたと思うんよ! それでそらほり商店街…………あ、もうええわ、ちゃっちゃと行こか」
期せずして、先頭を歩くことになって、商店街に突撃。
今日は、ソニーのリクエストで地下鉄谷町六丁目で降りて、大阪市は中央区の空堀商店街に来てる。
名前の通り商店街なんで、アーケードがあるわけで、梅雨時のいま、雨に降られても大丈夫というソニーのチョイス。
せやけど、天気はいい意味で裏切ってくれて、初秋を思わせるぐらいの爽やかさ。
予定よりもあちこち周れて楽しかった。
で、どんな風に楽しかったか。明日あらためて報告しますよってこうご期待!
☆・・主な登場人物・・☆
- 酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校二年生
- 酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
- 酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
- 酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
- 酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
- 酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中 妖精のバン(バンシー)ナンシー(リャナンシー)が友だち
- 酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
- 榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
- 夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女
- ソフィー ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
- ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
- 月島さやか 中二~高一までさくらの担任の先生
- 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
- 百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
- 女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
- 江戸川アニメの関係者 宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)
- さくらをとりまく人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん)