ここは世田谷豪徳寺 (三訂版)
第85話《突然の解除》さつき
「帰っていいことになりましたよっ(^▽^)!」
入って来るなり柿崎一曹は生の喜びをむき出しにした。
ほんとうに子供っぽい。例えて言うなら、二浪で宝塚音楽学校に合格したお姉ちゃんを心から喜ぶ妹みたい。
でも、拉致同然に駐屯地に連れて来た時も完ぺきに女子高生に化けてたし、油断はならない。
「なにかあったんですか(^_^;)?」
「なにかあったんですか(^_^;)?」
踵に重心を残して聞いてみる。
「C国で政変があったみたいで。もう、ドローン船のことでイチャモンつけてる場合じゃないみたいなんです。上の方で、もう大丈夫と判断したみたいです!」
「C国で政変があったみたいで。もう、ドローン船のことでイチャモンつけてる場合じゃないみたいなんです。上の方で、もう大丈夫と判断したみたいです!」
噂では聞いていた。
C国では不動産問題やら賃金未払やら銀行の預金封鎖やらで抗議活動や暴動が頻発していて、中央も地方政府も危ない状態。今度のドローン船事件も、そのガス抜きっぽい。
「もう、そういうことではもたなくなったんでしょうねえ。と言って、本物の戦争もできなさそうで、ま、とにかく目出度いから、これでいいですよ(^▢^)/、夕方までには出られますから準備して、ゆっくりしてください!」
「こんなもの持たされた」
昼食で一緒になったタクミ君が胸元から引っ張り出して見せてくれた。
「え、認識票じゃない。これって普段は身分証明といっしょの定期入れみたいなとこに入ってるんでしょ?」
「ああ、特別製。さざれ石の微粒子を混ぜた金属でできてんの。さつき除(よ)け」
「ええ、あたしの指輪だけじゃだめなの?」
「念には念を。これが東京に帰る条件」
妙なもので、こうやってさざれ石で互いの想念を遮断してしまうと、逆に相手への関心が高まる。一か月近く続いた一緒の暮らしが終わるのが、ちょっと寂しく思えてくる。
食堂でバカ話をしたのが、タクミ君とのお別れだった。
「こんなもの持たされた」
昼食で一緒になったタクミ君が胸元から引っ張り出して見せてくれた。
「え、認識票じゃない。これって普段は身分証明といっしょの定期入れみたいなとこに入ってるんでしょ?」
「ああ、特別製。さざれ石の微粒子を混ぜた金属でできてんの。さつき除(よ)け」
「ええ、あたしの指輪だけじゃだめなの?」
「念には念を。これが東京に帰る条件」
妙なもので、こうやってさざれ石で互いの想念を遮断してしまうと、逆に相手への関心が高まる。一か月近く続いた一緒の暮らしが終わるのが、ちょっと寂しく思えてくる。
食堂でバカ話をしたのが、タクミ君とのお別れだった。
彼は、その足で東京に帰った。
あたしは身の回りを整理し、一時間ほど遅れてS駐屯地を後にした。見送りは柿崎さんだけだ。
三時の新幹線に乗り、何か月ぶりかで我が家を目指した。
やっぱり、この一か月緊張していたんだろう。京都を過ぎたあたりで眠ってしまい、目が覚めたら浜松のあたりだった。
渋谷まで出て、ちょっと息抜き。
店のガラスに映る自分を見て決心。バイト時代から通っている格安の美容院へ。
なじみの美容師さんは系列の別の店にいっていたので、若い女の子にやってもらった。
「どんな風にしましょうか?」
「任せるわ。とにかく今の自分とイメチェンしたいの」
「分かりました。お客様の感じでしたらぁ……よし! これで……」
最初はどうなるかと思ったが、思いのほか若々しいフレッシュな変形フェミニンボブにしてくれた。
「ありがとう!」
そう言って、店を出ると五分で女子高生の一群に取り囲まれた……。
あたしは身の回りを整理し、一時間ほど遅れてS駐屯地を後にした。見送りは柿崎さんだけだ。
三時の新幹線に乗り、何か月ぶりかで我が家を目指した。
やっぱり、この一か月緊張していたんだろう。京都を過ぎたあたりで眠ってしまい、目が覚めたら浜松のあたりだった。
渋谷まで出て、ちょっと息抜き。
店のガラスに映る自分を見て決心。バイト時代から通っている格安の美容院へ。
なじみの美容師さんは系列の別の店にいっていたので、若い女の子にやってもらった。
「どんな風にしましょうか?」
「任せるわ。とにかく今の自分とイメチェンしたいの」
「分かりました。お客様の感じでしたらぁ……よし! これで……」
最初はどうなるかと思ったが、思いのほか若々しいフレッシュな変形フェミニンボブにしてくれた。
「ありがとう!」
そう言って、店を出ると五分で女子高生の一群に取り囲まれた……。
☆彡 主な登場人物
- 佐倉 さくら 帝都女学院高校1年生
- 佐倉 さつき さくらの姉
- 佐倉 惣次郎 さくらの父
- 佐倉 由紀子 さくらの母 ペンネーム釈迦堂一葉(しゃかどういちは)
- 佐倉 惣一 さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
- 佐久間 まくさ さくらのクラスメート
- 山口 えりな さくらのクラスメート バレー部のセッター
- 米井 由美 さくらのクラスメート 委員長
- 白石 優奈 帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
- 原 鈴奈 帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
- 坂東 はるか さくらの先輩女優
- 氷室 聡子 さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
- 秋元 さつきのバイト仲間
- 四ノ宮 忠八 道路工事のガードマン
- 四ノ宮 篤子 忠八の妹
- 明菜 惣一の女友達
- 香取 北町警察の巡査
- クロウド Claude Leotard 陸自隊員
- 孫大人(孫文章) 忠八の祖父の友人 孫家とは日清戦争の頃からの付き合い
- 孫文桜 孫大人の孫娘、日ごろはサクラと呼ばれる