ここは世田谷豪徳寺 (三訂版)
第33話《事務所を通してください》さくら
「事務所を通してください」
もう三度目。
チュウクンに言われたように応えた。
素人考えでスマホの番号は変えようと思っていたけど、変えてもすぐに分かってしまうと言われた。
まあ、一過性のお祭りみたいなものだろうしね。
学校や友だちの間でもプロモに出たことは話題にしなかった。まくさと恵里奈は黙っていてくれたし。
学校や友だちの間でもプロモに出たことは話題にしなかった。まくさと恵里奈は黙っていてくれたし。
鈴奈(りんな)先輩も事務所から、わたしのことは言ってはいけないと言われているようで、学校で顔を合わせても完全にシカトしてくれている。
しかし、元々が渋谷での騒ぎにあたしがオッサンを応援したことが始まりなので、あの騒ぎ自体はスマホで撮った人が大勢いる。
しかし、元々が渋谷での騒ぎにあたしがオッサンを応援したことが始まりなので、あの騒ぎ自体はスマホで撮った人が大勢いる。
中にはSNSに投稿した人もいて、その中にハイテンションになっているあたしが写りこんでいるものもあり、年格好から女子高生であることは明白。
で、渋谷の近隣の学校を当たれば帝都は直ぐに候補に挙がってくる。オタクが、その気で調べれば、そのネットワークで三日もあれば正体がバレる。
でも、チュウクンの見通しは外れた。
三日では無くて一日だった(>o<)!
最初スマホにかかってきたものは、教えられたとおり「事務所を通して……」で撃退し、着信拒否にした。
最初スマホにかかってきたものは、教えられたとおり「事務所を通して……」で撃退し、着信拒否にした。
ブログなんかはしていなかったので安心していたけど、佐倉さくらで検索すると、五件も出ていた。ポータルサイトに通報すると、直ぐに削除されたけど、一時間もするとまた出てくるありさま。
「仕方がない、一つ二つ仕事として受けて、露出しよう」
吾妻プロデユーサーは、ため息混じりに答えた。事務所にもかなりの問い合わせがある様子だった。
「仕方がない、一つ二つ仕事として受けて、露出しよう」
吾妻プロデユーサーは、ため息混じりに答えた。事務所にもかなりの問い合わせがある様子だった。
「いきなりだったね、さくらちゃん」
タムリさんが、鈴奈たち『おもタン(おもいろタンポポ)』に聞いたあと、スタジオに招かれ、オーディエンスが「オオー」と上げた声を鎮めるように言った。
「インパクトあるよね佐倉さくら。苗字も名前も珍しくはないけど『サクラサクラ』って重ねると忘れないよね」
「ええ、小学校のときなんか、サクラ×2って書いてました」
「でも、すごいよねぇ。先週の木曜までは、ただの高校生だったのにね。まあ、問題のプロモ見てみようか」
おもいろシャウトのプロモの、あたしの部分だけ抜かれて静止画になって映った。
「それにしても、すごいシャウトっぷりだね」
「はい、死ぬかと思いました」
「さくらちゃんは、普段はシャイな方なの?」
「はい、今も緊張してます」
「なんか、ネットの方じゃすごいことになってるらしいね。いっそ、このままデビューしちゃえば」
「とんでもないです(#゜Д゜#)!」
「とんでもないです(#゜Д゜#)!」
パシャ!
と、効果音付きで真顔で驚いた瞬間がアップになって、スタジオのオーディエンスからもドヨメキが起こった。
と、効果音付きで真顔で驚いた瞬間がアップになって、スタジオのオーディエンスからもドヨメキが起こった。
オオ!
「こんな風に驚ける子いないよ」
「こんな風に驚ける子いないよ」
「そんなそんな!」
パシャ
オオ!!
「ん……なんかメモ来たよ。次の仕事が待ってるから局の玄関へ……だって」
「こ、困ります。事務所を通してください」
「って、これ事務所からなんだけど」
タムリさんの目がグラサンの下で笑った……。
タムリさんの目がグラサンの下で笑った……。
☆彡 主な登場人物
- 佐倉 さくら 帝都女学院高校1年生
- 佐倉 さつき さくらの姉
- 佐倉 惣次郎 さくらの父
- 佐倉 惣一 さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
- 佐久間 まくさ さくらのクラスメート
- 山口 えりな さくらのクラスメート バレー部のセッター
- 米井 由美 さくらのクラスメート 委員長
- 白石 優奈 帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
- 原 鈴奈 帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
- 氷室 聡子 さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
- 秋元 さつきのバイト仲間
- 四ノ宮 忠八 道路工事のガードマン
- 四ノ宮 篤子 忠八の妹
- 明菜 惣一の女友達
- 香取 北町警察の巡査