RE・かの世界この世界
わたしには、有るべきものは有って、有ってはならないものは無かった。
「……健人だけがカミングアウトしたんだ」
「カ、カミングアウト言うなあヽ(≧Д≦)ノ」
腕をブンブン振って抗議する健人、エキサイトすればするほど黄色い声になるので何ともおかしい。
「ちょ、慣れるのに時間かかるから、興奮しないでくれる……ハ、ハハハ、ハーーおっかしいよ~(≧∇≦)」
「おかしくなんかない……(;_;)」
「さて……」
右手を上げてウィンドウを開いて、ステータスを確認する。
HP:200 MP:100 属性:?
持ち物:ポーション・5 マップ:1 所持金:1000ギル
装備:始りの制服
ポーションがエントリープライズのようだ。使ってみなければ分からないが、ポーションの効き目は250くらいのものだろう。
いろいろやったRPGの初期回復アイテムの効果がそれくらいだ。
逆に言えば、ポーションを一回まるまる使っても最大で199しか回復しない(HPは最低でも1は残していないと死亡判定になってしまい、直近のセーブポイントまで戻されてしまう。余った51は反映されない)ので、200というHPが、いかにショボイかが分かる。
属性は経験値を稼いでコマを進めなければ決められないようだ。
装備は始りの制服で、たぶん、いま身に付けている学校の制服のことなんだろう。
攻撃用の武器も防御用の盾やシールドも無いので、システムは分からないけど、早く獲得した方がいいだろう。
マップは『始りの草原』とある。たぶん、今いる野原がそうなんだろう。後にも先にも『始りの草原』しかないのは、冒険が進むにつれてマップが増えていく仕掛けになっているんだ。
「どこに行ったらいいか分からないよ……」
同じようにウィンドを開いた健人が、早くも途方に暮れている。
「ヘタレるの早すぎ!」
「わ、悪かったよ」
「とにかく周囲を観察してヒントを探そ……始まったばかりの出発点なんだから、そんなに難しいはずはないよ」
「う、うん……」
とりあえず立ち上がる。
アテがあるわけじゃないけど、座ったままだと、気持ちが前向きにならない。
ノロノロと立ち上がった健人は女の子らしく、制服のあちこちに着いた乾草の欠片をハタハタと掃う。
ん……乾草の欠片は、わずかに健人の右後ろに落ちていく。
そうか!
わたしは、一掴みの乾草を揉みしだいて粉々にすると「えい!」っと頭上に投げた。
乾草の粉は欠片よりもハッキリと右後ろに流れていく。
「わかった!」
「え?」
「風の向くままよ!」
草原のあちこちに乾草の山の崩れがある。たぶん、わたし達より先に来た者たちが着地した跡だろう。
その崩れで乾草を揉みしだいては「えい!」と投げ上げ、風の向きを見失わないようにして進んでいった。
そうやって十数回繰り返して、やっと草原の中に伸びる一本の道を発見したのだった……。
☆ 主な登場人物
- 寺井光子 二年生 今度の世界では小早川照姫
- 二宮冴子 二年生、不幸な事故で光子に殺される
- 中臣美空 三年生、セミロングの『かの世部』部長
- 志村時美 三年生、ポニテの『かの世部』副部長
- 小山内健人 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ