大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

RE・かの世界この世界:141『絶体絶命!』

2023-06-28 06:32:04 | 時かける少女

RE・

141『絶体絶命!』タングリス 

 

 

 

 マーメイド号の最高速度は15ノットでしかない。

 
 パラノキアの巡洋艦と融合したクリーチャーは33ノットで迫って来る!

 33ノットは巡洋艦の最高速度だ。このままではすぐに追いつかれてしまう!

 前回の戦いでは、かろうじて勝てたが。今度の敵の本性はクリーチャー。こちらの船は一万トンの貨客船シュネーヴィットヘンではなくて200トンそこそこのフェリーボートのマーメイド号なのだ。

 まっすぐ突っ込まれてくると、全速力で逃げても相対速度18ノット(時速32キロ)で追われることになる。サッカーのフォワードが全速力で小学生を追い回すようなものだ。

 できることなら戦いたくないが、戦闘配置だけはとっておいた方がいいだろう。

「テル、戦闘配置だ!」

「もう完了している!」

 デッキの四号は、クリーチャーに向けて砲口を指向しているところだ。これまでの戦闘でみんな慣れてきたんだ、戦闘配置をかけるまでもなく、自分で目的をもって行動できるようになった。

 しかし、こんな小さな戦闘集団の技量が上がっても、目の前のクリーチャーに太刀打ちできるものではない。

「姫、逃げることを専一にします。緊急時以外は発砲しないでください!」

――分かっている。操舵は任せた、逃げ切ってくれ!――

 ブリッジのスピーカーに姫の声が響く。

 

 おや、あいつ……?

 

 クリーチャーは全速で追ってはくるのだが、時おり速度が落ちて頭がふらついている。

 

 クリーチャーは我々を襲うよりも、どう変態していいかを試すことに熱中し始めた。巡洋艦のパーツを様々に組んでは解している。その様子は、子どもが新しい玩具に夢中になっているような。或いは巨大なナメクジがファッションに目覚めてしまったようで、見ようによってはユーモラスでさえある。

 マーメイドを追いかてくる方向も、かなりのブレが出てきた。我々を敵だとは認識しきれていないのかもしれない。追ってくるのは、クリーチャーの習性なのだろう。時間が停まった洋上では、動いているものは当のクリーチャーの他は、我々のマーメイド号だけなのだ。

 ニ十分ほどもすると、クリーチャーは空飛ぶ武装クジラの姿に固定され、ゆっくりと海面を離れ、それ以上変異することをやめた。

――タングリス、間合いを取ってくれ!――

 直ぐに姫が反応する。

 気持ちは分かる。空を飛ばれては四号の主砲を最大仰角でかけても狙えないのだ。

 しかし、15ノットの速度ではいかんともしがたい!

 悪いことに、変態に飽きたクリーチャーは本気でマーメイド号を指向し始めた。

 もう、出来ることは、奴の指向とタイミングを見計らって突っ込まれる寸前に舵を切るしかない。

 ザザー 

 ザザー

 二度は躱したが、次は危ない……舵輪を握ぎる手に力が入る……今だ!

 奴の微妙な姿勢変化に進路予測をして、その反対方向に舵を切る!

 ザザ

 しまった!

 敵は右に回るフリをしたが、鼻づらを左に向けると、体をよじってきれいなカーブを描いて突っ込んでくる。

 読まれていたのだ!

 尻尾を勢いよく振ってさらに進路を修正すると、真っ直ぐに迫ってきた!

 絶体絶命! 

 まるでモビーディックに迫られたキャッチャーボートだ。

 このままエイハブ船長のように海底に引きずり込まれるのか!?

 
 ザザーーーーー!

 ドッゴーーーン!!!

 
 一瞬黒い影が過り、砂を噛んだ時のような音が響いたかと思うと、マーメイド号の左舷に巨大な水柱が立った!

 今のはなんだ!?

 首を巡らすと、四時の方角、高さ200メートルのあたりに、抜いた剣を緩やかに下段に構える姿があった!

 背後に空飛ぶ戦車隊を引き対れ、果敢にクリーチャーを追うムヘン方面軍総司令官トール元帥の雄々しき姿が!

 

☆ ステータス

 HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・900 マップ:12 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
 装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
 憶えたオーバードライブ:シルバーヒール(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
 スプラッシュテール(ブリュンヒルデ) 空蝉(ポチ)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル (寺井光子)   二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  小早川照姫の幼馴染 ペギーにケイトに変えられた
 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 小さいが人化している
 ペギー         荒れ地の万屋

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« せやさかい・418『ミカサ... | トップ | くノ一その一今のうち・61... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

時かける少女」カテゴリの最新記事