大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくも・13『図書分室・2』

2020-11-29 06:53:07 | ライトノベルセレクト

・13『図書分室・2』         「謄写版印刷機」の画像検索結果

 

 

 よく見るとひいお爺ちゃんの写真のよう。

 

 縁の細い額に入って、仏間の長押の上に賞状とかと並んで掛けてある。

 その黒褐色の額縁に似ている。

 ただ、縁の内側が真っ黒なんで、瞬間のイメージはでっかいスマホ。

「なんて読むんだろう?」

 小桜さんは、上の方に貼ってあるプレートの字を指した。

「う~ん……」

「二つ目は写真の写だよね、次が版画の版」

「ゴンベンに……栄誉の誉?」

 三つ繋げると『謄写版』という字になる。

 わたしたちの反応は、明治の人がスマホを見た時のようだと思う。

 電源が切ってあったら表面が真っ黒の手鏡だ。

 額縁のところを開けると、ホワっとインクのにおいが立ち込める。

「横が引き出しになってるよ……」

 机の引き出しほどのを開ける……枠付きのガラスの上に濃紺のインク……さらに開けるとローラーとインクの缶。それにヘラみたいなの。

「これ、コピー機じゃないかなあ?」

「コピー機……じゃ、このインクみたいなのがトナー? スイッチどこだろ?」

「アナログだよ、これ」

 推論した……たぶん、ローラーにインクを付けて、回しながら押し付けるんだ。

「なんか、半透明なのが貼ってあるよ」

 額縁にはガーゼみたいなのが張ってあって、その裏側にインクでベッチョリとトレーシングペーパみたいなのが貼り付いている。下にコピー用紙を置いて、上からインク付きのローラーを転がせば印刷できるのではないかと推理した。

「なんか書いてある……」

 神秘的だ……なんというか、文字の幽霊?

 濃紺のインクに濡れたところに、微かに白く浮き上がって文字らしいものがうかがえる……が、よく分からない。

「コピーしてみよっか」

 こういうのが好きなんだろう、ワクワクした声で小桜さんが言う。

 ローラーにインクを付けて、ゴロゴロとやってみる。

「あ、インクの付けすぎぃ~」

 ベッチョリして文字が潰れて読めたものじゃない。四回紙を替えて、なんとか読める。

「卒業文集……なるほど、ありがちなやつね。手書きだとなんか新鮮」

「そうね」

 相槌は打ったけど、わたしには卒業文集とは読めなかった。

 

 小桜さんが休んだ理由。

 杉野  : どうせ休むんだったら図書当番の日にして。

 小桜さん: なんで?

 杉野  : えと……転入生の小泉さんと話してみたいから。

 小桜さん: あからさま~!

 杉野  : 嫌か?

 小桜さん: え、あ……うん、いいよ。うまくやんなさいね(^^♪

 

 な、なにこれ!?

 

「読みにくいなあ……そだ、写真に撮っとこ」

 小桜さんは、スマホを出して楽しそうにアナログのインク文字を写した。

 

   

 


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