タキさんの押しつけ映画評・96
『エイジェント:ライアン』
この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ
これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので、転載したものです。
久方振りの“ジャック・ライアン”さぞかしアメリカでは大ヒットと思いきや、これがスマッシュヒット手前で足踏み。
理由がよぉ~く判りました。まず、トム・クランシーは“キャラクター原案”者であるのみで脚本には一切関わっていない。クランシーは既に亡くなっていて、現在 遺作の「米中開戦」の前半が発刊されていますが、これと本作脚本の時期的な時間差がどの位あるのか分かりません。もしかしたら、脚本製作時期には関われなかったかもしれません。
脚本家はアダム・コザックとデビッド・コープ……残念ながらどちらもこれまで注目できる作品はありません。コープの方が多作ですが、性急なストーリーが多く、原作があっての脚色なら分かりませんが、一から彼らの脚本だとすると従来からの強引な展開傾向そのままです。「トータル・フィアーズ」(ベン・アフレック主演)の時にも思いましたが、もっと原作をリスペクトしているライターに仕事させるべきですね。
まず、ライアンが分析官から工作員に踏み込むシテュエーションが乱暴過ぎる。しかも、作戦の破綻が明らかなのに そのまま続行、そんなアホな……ですわ。 まず、どんな突飛な展開でも納得の状況をセッティングするクランシー原作の緻密さがありません。ロシアの陰謀という設定ですが、これも もう一つ裏の企みなり恨みなりが無ければ有り得ない設定です。
アメリカ経済の転覆を狙う訳ですが、これは現実の世界経済からすれば両刃の刃で、核と同じく抑止力が働きます。これを発動する為には よほど強い動機と仕掛けが必要ですが、本作ではそのどちらも弱すぎます。映画のセンテンスにしても、時間の逼迫という一番ヒリヒリする部分が迫って来ません。撮影はそれなりだと(ちょっと足らんか?)思いますが、脚本の無理が祟ったか 編集のマーティン・ウオルシュは名手ですが……。
クリス・パインはまぁええとして、やがてライアンの妻となるキャシー/キーラ・ナイトレイの描き方が中途半端。ケビン・コスナーの上司にしても、端から味方であることは はっきりしていて「一体誰が敵か味方か」というスリルは全くありません。
総て脚本の不出来ばかりが目につきます。本作はリメイクではなくリブート作として、今後のシリーズ化を目指しているはずですが、クランシー既に亡き後 余程の脚本家を用意しないと このまま沈んでしまいそうであります。
原作で残っているものが、まず映画化不能(ライアンが大統領になって日本・中共・ロシアと戦争になる)な内容ですから余計に脚本のアイデアが勝負になりますからね。
『エイジェント:ライアン』
この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ
これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので、転載したものです。
久方振りの“ジャック・ライアン”さぞかしアメリカでは大ヒットと思いきや、これがスマッシュヒット手前で足踏み。
理由がよぉ~く判りました。まず、トム・クランシーは“キャラクター原案”者であるのみで脚本には一切関わっていない。クランシーは既に亡くなっていて、現在 遺作の「米中開戦」の前半が発刊されていますが、これと本作脚本の時期的な時間差がどの位あるのか分かりません。もしかしたら、脚本製作時期には関われなかったかもしれません。
脚本家はアダム・コザックとデビッド・コープ……残念ながらどちらもこれまで注目できる作品はありません。コープの方が多作ですが、性急なストーリーが多く、原作があっての脚色なら分かりませんが、一から彼らの脚本だとすると従来からの強引な展開傾向そのままです。「トータル・フィアーズ」(ベン・アフレック主演)の時にも思いましたが、もっと原作をリスペクトしているライターに仕事させるべきですね。
まず、ライアンが分析官から工作員に踏み込むシテュエーションが乱暴過ぎる。しかも、作戦の破綻が明らかなのに そのまま続行、そんなアホな……ですわ。 まず、どんな突飛な展開でも納得の状況をセッティングするクランシー原作の緻密さがありません。ロシアの陰謀という設定ですが、これも もう一つ裏の企みなり恨みなりが無ければ有り得ない設定です。
アメリカ経済の転覆を狙う訳ですが、これは現実の世界経済からすれば両刃の刃で、核と同じく抑止力が働きます。これを発動する為には よほど強い動機と仕掛けが必要ですが、本作ではそのどちらも弱すぎます。映画のセンテンスにしても、時間の逼迫という一番ヒリヒリする部分が迫って来ません。撮影はそれなりだと(ちょっと足らんか?)思いますが、脚本の無理が祟ったか 編集のマーティン・ウオルシュは名手ですが……。
クリス・パインはまぁええとして、やがてライアンの妻となるキャシー/キーラ・ナイトレイの描き方が中途半端。ケビン・コスナーの上司にしても、端から味方であることは はっきりしていて「一体誰が敵か味方か」というスリルは全くありません。
総て脚本の不出来ばかりが目につきます。本作はリメイクではなくリブート作として、今後のシリーズ化を目指しているはずですが、クランシー既に亡き後 余程の脚本家を用意しないと このまま沈んでしまいそうであります。
原作で残っているものが、まず映画化不能(ライアンが大統領になって日本・中共・ロシアと戦争になる)な内容ですから余計に脚本のアイデアが勝負になりますからね。