大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ書評『百田尚樹:ボックス!』

2017-01-19 06:36:07 | 映画評
タキさんの押しつけ書評
『百田尚樹:ボックス!』



昨年の春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ

これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している書評ですが、もったいないので転載いたしました。


BOX…「箱」を意味する名詞であるとともに、「ボクシングする」という動詞でもる。

 だから本作は「箱!」ではなく、(ボクシングで)戦え!の意味。プロボクシングで「ファイト!」と言うのと同じ意味です。
 百田さん、今回もジャンルが変わり 文体も変化している。高校ボクシング部が舞台で、天才的ボクサー/鏑矢とその友人/優希、副顧問の高田(20代女性)の三人が主人公。文体は三人称だが、優希と高田の視線から交互に語られ、鏑矢が自ら独白する事がない。この構成が面白い。

 これは「あしたのジョー」の学園青春物語です。我々の世代……百田氏は若干若いが……は ボクシングと言えば「あしたのジョー」を抜きには有り得ない。こいつはジョー、こっちが力石、段平のオッツァンもいる。漫画のドヤ街ほどではないが、舞台は西成の高校。荒川土手は淀川に代わって、舞台設定も見事にはま
り込む。
 基本的なボクシング知識とアマチュアボクシングについて、やけに詳しく説明してある。現実にボクシング部に取材もしているが、百田氏も高校生ボクサーだったらしい。ちょっとビックリいたしました。 これもホンマに上手い小説です。ボクシング題材の小説ってのは たくさん有りそうで 実は殆どありません。漫画なら絵で、映画なら映像で 戦いの迫力を表現できますが、これを「文字」でとなると難しい。本作では、まるで試合会場にいるかのごとくに感じますから これは尋常の表現力ではありまん。

 リング上でステップするキユッキユッって音、バンチが決まった時の内臓に響く音、ボクサーの息づかい飛び散る汗……目の前に浮かび上がっています。
 そして、サブキャラクター達も 実に見事に描き込まれ それぞれに重要な役割を担っている。何より みんな肉体を持って生きています。全員が「青春の懊悩」の真っ只中、悲劇のヒロイン(始めはとてもそうとは思えない)も登場する。
 単なる青春ストーリーではなく、人間の成長をボクシングを通して語る小説です。ラストが予定調和すぎて嫌なんですが……これが百田尚樹のハッピーエンド、認める事にいたします。

 ボクシングに関心無くとも また 女性の鑑賞にも耐える作品です。以前に 市原隼人主演で映画化されています。 百田氏に無関心だった頃の映画なので未見、こら探してこんといけません。 ただ、あんまり過度の期待は……やろなぁ〓


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