カチカチ山の兎にも因幡の白兎にも底意地の悪さを感じるのはわたしの経験によるものなのかもしれません。
心貧しい青春時代でも、青息吐息の教師時代にもハイティーンの女子には振り回されてきました。
この年頃の女子というのは理屈ではありません、好きか嫌いかで生きているようなところがあります。
いったん嫌ってしまうと、全てを『嫌い』というフィルターを通してしか見てくれません。
そして嫌いな相手には何をしてもいいという感覚になります。
白兎がサメを騙したことや、カチカチ山の兎が、執拗にタヌキをイジメたことに現れているように思うのです。
白兎はサメを騙しただけじゃないかと言われるかもしれませんが、白兎は、その後のオオナムチ(後の大国主)の人生を過酷なものにして行きます。
オオナムチの親切なアドバイスで傷が癒えた白兎は、こう言います。
「お兄さんたち八十神は気多の岬に住むヤガミヒメのところに行ったよ、ヤガミヒメを嫁にするんだって。でもね、ヤガミヒメと結ばれるのはオオナムチ、あなたなのよ。あなたこそが相応しいの、さあ、今なら間に合う、行って、ヤガミヒメと結ばれなさい!」
「え、ぼ、ぼくが?」
ずっと兄たちの荷物持ちだったオオナムチは驚くよりも兄たちを乗り越えてしまうことに尻込みしますが、白兎の熱いまなざしに、なけなしの男性力を振るいたてられヤガミヒメの住む気多の岬に向かいます。
ここで考えるのです。
白兎はオオナムチを優しく親切な男と慕わしく思っています。
それならば、自分がオオナムチの嫁になればいいと思うのですが、そうはしません。
それはね!
白兎は指を突き付け、ズイっと顔を近づけて、わたしに抗議します。
「恩人のオオナムチには幸せになってもらいたいの! ヤガミヒメと結ばれたら、わたしなんかを嫁にするよりも、もっともっと幸せになるんだから! あえて身を引く白兎の心意気なのよ! 乙女の真情なのよ! 下衆な勘ぐりなんかすんじゃないわよ!」
「でもさ、白兎」
「なによ!?」
「オオナムチに幸せになって欲しいっていうよりも、八十神のアニキたちがフラれるために言ってない?」
「そ、そんなことないわよ(^_^;)!」
「だったら、白兎が嫁さんになってあげる方が、話としては素直だと思うんだけどなあ……」
「グ、そ、そんなこと思ってっから、捻りのないプアな小説しか書けないんじゃん!」
「キミってさ、サメを騙くらかして、こっちに渡ってきたところでしょ。こっちに来たってことは、なにか面白いことないかなあとかって気持ちでしょ。オオナムチはいい男だけど、なんか地味だし、こいつで手を打つにはちょっととか……」
「うっさい! だいいちね、古事記とか日本書紀のどこ読んでも因幡の白兎が女の子だってとか書いてないし!」
「え、白兎ってBLだったっけ?」
「んなわけないし! もう! うっさいうっさい! あっち行けヽ(`#Д#´)ノ!」
ちょっと絡み過ぎました。
しかし、そう絡んでみたくなるほど、それからのオオナムチの運命は過酷であったりするのです……