鳴かぬなら 信長転生記
そーーれ! よいやっさ!! そーーれ! よいやっさ!!
鬼ヶ島も目前に迫り、100人の浦島太郎が漕ぐ櫂は小気味よくスクロールし、船そのものが生き物であるかのように揃っている。竜宮城で六百年もダラダラ過ごしていても、根は漁師。上手いものだ。
残り500人の浦島太郎は、織田家の木瓜紋のついた足軽具足を身に着け、鉄砲隊200、弓隊200、長槍100に分かれ、こちらは即席で鍛錬をしたとは言え緊張の面持ち。
漕ぎ手の100人は島に到着後70は長槍隊、残り30は本陣の馬周り役として俺が率いていく。
「じゃあ、そろそろ元の姿に戻るわね」
胸のところでギュっと握りこぶしを作ったかと思うと、アッチャンは草薙の剣になって腰にぶら下がった。
「それでは、わしも……」
「あ、おまえはいい」
勾玉に戻ろうとしたオモイカネを引き留める。
「ん? なぜ止める?」
「おまえは、胸のところでブラブラしすぎる。なんか不自然に乳首に当ったりするしな、気持ち悪いぞ」
「し、仕方がないじゃろ、ペンダントの設えになっておるのじゃからな(#'∀'#)」
「なにか別のものに変身しろ」
「ならば、別のものをイメージしろ。無理のないものなら聞き届けてやる」
「そうか……ならば、これだ」
ドロン!
半分意地悪で想像してやると、身の丈5メートルほどの大魔神になった。
おお!!
浦島太郎たちが恐れながらも感心する。
「待て、これでは目立ちすぎてわしが格好の的になってしまう(;'∀')」
「その分、俺は自由に動ける。なに、矢玉を避けながら走り回っていればいい。その間に鬼の首領を見つけて首を獲ってやる。いくぞ、者ども!!」
オオ!
櫂を逆漕ぎにして勢いを殺し、やんわりと浅瀬に乗り上げさせ、一気呵成に鬼ヶ島の浜に上陸する。
ガオー! ドンドンドン!
オモイカネの大魔神もゴジラのように吠え、キングコングのように胸を叩いてドラミング!
その勢いに圧されたのか、鬼ヶ島の城は寂として静まり返って、あっという間に、大手門の前まで来てしまった。
城が立派な割には手ごたえが無い、無さ過ぎる。
どうしようかと思っていると、俄かに頭上が明るくなった!
「やや、なにごと!?」
一斉に槍衾を作り、鉄砲を構え、弓をつがえる。
キラ キラ キラ
城門の上に大きな『オニカシマ』のネオンサインが現れる。
『古い仮名遣いねえ( ゚Д゚)!』
アッチャンが感心する。
「いや、旧仮名遣いにしても間違ってはおらぬか?」
オモイカネの大魔神は顎に手をやって訝る。
「そうだ、旧仮名遣いなら『オニケシマ』ではないのか?」
ブァリニャーニに片仮名を教えてやった時のことを思い出す。
600人の浦島太郎たちと首をひねっていると、ネオンサインの文字が電光掲示板のように文字を動かした。
オニカシマ…………鬼貸間…………各種貸間をご用意しております……権敷不要、見学随時、即入居可、委細面談……
なんだか昔の貸間広告、今で言えば貸しビルの広告のようで――さあ、どうぞ――という具合に開いた門の中に足を踏み入れる鬼ヶ島遠征軍の我々だった。
☆彡 主な登場人物
- 織田 信長 本能寺の変で討ち取られて転生 ニイ(三国志での偽名)
- 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
- 織田 市 信長の妹 シイ(三国志での偽名)
- 平手 美姫 信長のクラス担任
- 武田 信玄 同級生
- 上杉 謙信 同級生
- 古田 織部 茶華道部の眼鏡っ子 越後屋(三国志での偽名)
- 宮本 武蔵 孤高の剣聖
- 二宮 忠八 市の友だち 紙飛行機の神さま
- 雑賀 孫一 クラスメート
- 松平 元康 クラスメート 後の徳川家康
- リュドミラ 旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ 劉度(三国志での偽名)
- 今川 義元 学院生徒会長
- 坂本 乙女 学園生徒会長
- 曹茶姫 魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
- 諸葛茶孔明 漢の軍師兼丞相
- 大橋紅茶妃 呉の孫策妃 コウちゃん
- 孫権 呉王孫策の弟 大橋の義弟
- 天照大神 御山の御祭神 弟に素戔嗚 部下に思金神(オモイカネノカミ)