真凡プレジデント・60
体温よりも高い猛暑の中をケーキバイキングに行く!
中谷先生にもらったSホテルのケーキバイキング優待券。
ホテルに行くのだから私服に着替える。
とくにドレスコードがあるわけじゃないんだけど、制服で行くとかえって目立ってしまう。
それに、ちょっぴりオシャレをしてみたいという気持ちもあったりする。
あ、ナフタリン臭いよ。
久々に出したオシャレ着、胸に当てて鏡で見ていたらお母さんに指摘される。
仕方がないので失踪中のお姉ちゃんのクローゼットをまさぐる。
退職後はジャージばっか着ていたけど、やっぱ天下の女子アナだ、持っている衣装はハンパではない。
トップかボトムか、一点だけ拝借して間に合わせようと思うんだけど、やっぱ、さり気に見える衣装でも、女子アナの衣装だ。ちゃちな女子高生の服には合わない。
仕方がない、たった一日の事でもあるし。大半をお姉ちゃんので間に合わす。
まあ、キャップだけでも自分のいこうか。
それで、パステルピンクのキュロットに淡い水色のカットソー、その上にオフホワイトのボレロ。
体形がほとんどいっしょなのでピッタリ収まる。
これを学校に持って行って、午前中の授業が終わったら四人で着替えてくり出す算段だ。
ローファーはありえないでしょ。
玄関を出ようとしたらお母さんに言われる。
お姉ちゃんが居なくなってから、さすがに心配になって帰って来たんだけど、あれこれとうるさい。
でも、さすがに年の功。
制服姿なんだけど、学校で私服に着替えることを知っているので、するどく指摘してくれたんだ。
「えーー、って、そだよね」
鏡の前でファッションショーやった時には足元まで気が及ばない。
「サイズいっしょだから、これ持っていきな」
お母さんが渡してくれたのはお姉ちゃんのパンプスだった。
上から下までお姉ちゃんのグッズ……忸怩たるものがあるけど、四の五の言っていては遅刻する。
行ってきまーす!
……パンプスは持ったがキャップを忘れた。
☆ 主な登場人物
- 田中 真凡 ブスでも美人でもなく、人の印象に残らないことを密かに気にしている高校二年生
- 田中 美樹 真凡の姉、東大卒で美人の誉れも高き女子アナだったが三月で退職、いまは家でゴロゴロ
- 橘 なつき 中学以来の友だち、勉強は苦手だが真凡のことは大好き
- 藤田先生 定年間近の生徒会顧問
- 中谷先生 若い生徒会顧問
- 柳沢 琢磨 天才・秀才・イケメン・スポーツ万能・ちょっとサイコパス
- 北白川綾乃 真凡のクラスメート、とびきりの美人、なぜか琢磨とは犬猿の仲
- 福島 みずき 真凡とならんで立候補で当選した副会長
- 伊達 利宗 二の丸高校の生徒会長