大橋むつおのブログ

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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・163『今度は巫女のアルバイト』

2024-12-29 14:49:05 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
163『今度は巫女のアルバイト』   




 こういう巡り合わせってあるんだ。


 年末もいよいよ押し詰まった28日、たみ子から電話があった。

『ごめん、良かったらでいいんだけど、バイト頼めないかなあ』

「え、バイト?」

『うん、実はね……うちの身内のことなんだけど……』

「……うん……うん……うん、わかった」

『助かる、ありがとう!』


 というわけで、明くる29日、わたしはたみ子と共に相模線に乗り、二度乗り継いで、埼玉県のA駅に降り立った。


「やっぱり早く着いちゃった。ごめん、迎えがくるまで、30分ある」

「いいよいいよ、初めての土地だし、景色見てたらあっという間だよ」

「五年前にやっと市になったばかりの田舎なんだけど、空気だけはいいからね」

 地元の人が聞いたら気を悪くしそうなことを言う。でも、駅の待合は二人だけだし、わたしに気を使ってのことだから、あいまいに「そうなの?」と「そうなんだ」を返しておく。

 たみ子のお母さんは、これから向かう埼玉の小さな町の生まれ。

「埼玉県って、家の屋根みたいな形しててね、右半分が大宮とか川越とかが市街地で、西の左半分は山いうか田舎」

 なるほど、改札を通して見える東側は田んぼもあるけど、その向こうには街が背景のように見える。

「電柱に扇風機みたいなのが付いてるけど」

「ああ、茶畑。冬にね霜が降りたら茶畑壊滅しちゃうから、霜の降りる朝方に畑の空気かき回して霜が降りないようにしてるの。防霜扇て言うんだよ」

「ボウソウセン……暴走する船を想像した」

「ハハ、わたしも子供のころに聞いて、そう思った(^_^;)」

「お母さんの里は、こっちの山の方なんだよね」

「あ、うん……」

 ちょっと申し訳なさそうに言う。

 埼玉県の西半分は山が連なっている。そういうことには疎いわたしでも知ってる身延山とか秩父山とか。たみ子の話しじゃ、百を超える峰々や山々にはそれぞれ神さまが居て、その多くは神社によって祀られ、社家と呼ばれる神職の家系が守ってきた。

 たみ子のお母さんは、そういう社家の娘で、娘時代には巫女を務めていたそうだ。
 たみ子も、その血を受け継いでいるので、例大祭や年末年始に巫女が足りない時には手伝っているらしい。

「インフルエンザが流行っちゃって、巫女をする子が足りなくてね……」

 そう、それで急きょわたしに電話をかけて来たんだ。

「わたしは、巫女の衣装来て座ってりゃいいんだよね?」

「あ、少しだけ立ったり座ったり。でも、大したこと無いから(^_^;)」

「そうか、それくらいならどんと来いよ!」

 こないだのバイトじゃ、関西弁のオッサンとか、目の回りそうなベルトコンベアに苦労したけど、今度は巫女さんのコスプレだ。三食付いてギャラも出る。ちょっと寒いかもだけど、まあ、何とかなるさ。

 プップー

 駅の外でクラクションがして、たみ子も立ち上がって駆けていく。

「早く着いちゃってぇ、電話しようかと思ったんだけど、もう出てるだろうと思って」

「ああ、秋にダイヤ改正になったからね」

「あ、こちら、手伝ってくれる時司巡」

「時司巡です、よろしくお願いします」

「ああ、こちらこそ。たみ子の伯父の武藤頼政です。今回は無理なお願いして申し訳ない」

「いえいえ、こちらこそ、貴重な経験をさせていただいて喜んでます」

「そう言ってもらえると、少し、こっちも気が楽になるなあ。あ、外は寒いから車の中で待ってて」

「え、伯父さんは?」

「ああ、あ、来た来たぁ」

 ちょうど次の下りの列車が入ってきていて、チラホラとお客が降りてくる。

「おーーい、こっちこっち!」

 頼政さんが手を振って、大股で駅舎を出てきたのは、委員長の高峰君だった!

 そうか、思い出した……たみ子と高峰君は従兄妹同士だったんだ(^_^;)!

 

☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 安藤さん              伊勢半のバイトでいっしょになったおばさん、お茶の先生
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  

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