魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!
104『立派な悪魔だ(≧.≦)!』
「そう……あなたは高峯純一さんの娘さんなのね」
「はい……オモクロ始めるときは、お母さんの苗字使ってました」
撤収の間、旧保健室を借りて仁和さんと加奈子と香奈の三人で話したぞ。
イントレを分解したりケーブルを巻いたり道具をトラックやバンに積み込んだりの音。それらが閉じた窓と半ばまで引いたカーテンで柔らかくなってよ。そこに傾き始めた黄昏というには少し間がある日差しもろ過されて、現世(うつしよ)と幽世(かくりよ)の狭間って趣きだぜ。
ねらったわけじゃねえんだろうけど、自然とこういう雰囲気の中に入れるってのは、妖精の親分めいていて二和って人の凄みを感じさせるぜ。
教室の撮影でライトが倒れて、危うく加奈子が下敷きになりそうになっちまった。
それは、複合的な霊障でよ、廃校になった学校のダンス部の残留思念と、加奈子の父の高峯純一の生き霊のせいだってことまでは分かった。
二和さんは、そこから先を探ろうとしてんだ。
「お父さんが反対していたことは、なんとなく分かっていました。最初から反対だったし、わたしが押し切った後も、積極的には賛成してはくれませんでした。わたしも親の七光りだって言われるのやだったから……でも、お父さん、あんなに心配していただなんて……」
「お父さんが反対していたことは、なんとなく分かっていました。最初から反対だったし、わたしが押し切った後も、積極的には賛成してはくれませんでした。わたしも親の七光りだって言われるのやだったから……でも、お父さん、あんなに心配していただなんて……」
「カナちゃんには悪いけど、それは違うわ」
「え……でも父は、あのエキストラの子の口を借りて、心配してくれていたんじゃ?」
「心配な我が子に、ケガをさせようとするかしら」
「あれは、ダンス部の残留思念じゃ……」
「そういうことにしておけば、高峯さん自身は傷つかずにすむでしょう?」
「え、じゃ、あれは……」
「お父さんは、あなたに嫉妬してるのよ」
一瞬、保健室がグラリと揺れた。
「図星のようね、カナちゃん……」
一瞬、保健室がグラリと揺れた。
「図星のようね、カナちゃん……」
「「はい」」
加奈子と香奈が一度に返事した。
「ああ、二人ともカナちゃんだったわね。仁科さん、カーテン閉めてくれる。カナちゃんはスマホを出して」
二人とも言われたとおりにし、仁和さんは、ロッカーから白衣を取りだして着たぞ。
「カーテンは結界……」
香奈が独り言のように言った。
「この白衣が浄衣のかわり」
仁和も独り言のように言うと、なにやら呪文を唱え、印を結んだ。加奈子は緊張してきたが、香奈(マユ)にはよく分かった。仁和さんの霊能力は、見抜くという点ではマユよりも優れてやがるけど、霊障を取り除くのは、マユの方が上手い……と思う。でもよ、仁和さんの真摯なやり方にマユは任せてみようと思ったぞ。
「……えい!……これでいいわ、カナちゃん。お父さんに電話してごらんなさい」
「はい……でも、なにを話したら……お父さんとは、あまり話したことがないんです」
「……えい!……これでいいわ、カナちゃん。お父さんに電話してごらんなさい」
「はい……でも、なにを話したら……お父さんとは、あまり話したことがないんです」
「ホホ、それがいけないの。正直に今度のこと自慢すればいいわ。お父さん、黙っていてハケ口がないの。だから無意識に、こんな霊障をおこすのよ。正直に嫉妬させてあげれば収まる。いえ、収まるどころか、カナちゃんのいいアドバイザーになってもらえる」
「は、はい」
加奈子は言われるままに電話をした。父の高峯は、朝方から熱が出て、寝込んでいたようだった。で、電話の向こうで、こう言いやがった。
加奈子は言われるままに電話をした。父の高峯は、朝方から熱が出て、寝込んでいたようだった。で、電話の向こうで、こう言いやがった。
『なんだか夢をみていた』
「どんな夢?」
『くそなまいきな女優が、へたくそな芝居をしやがるんで、意見をしようとしたら、無視しやがる。そこで、カッとしてスポットライトを蹴倒すんだ』
「ほんと……!?」
『そしたら、顔は分からないけど、監督みたいなのが出てきて意見しやがる。なんだか分が悪くなって、逃げ出したら、意識がとんじまって。胸苦しくなってきてな、冷や汗かいていたら、お前からの電話だ。で、なんだ。加奈子から電話してくるなんて、雨が……ほんとに降ってきたぞ。おい母さん、雨だ! 洗濯物……』
それから、加奈子は、ここ最近の自慢話をしてやった。すると高峯は、なにかとケチをつけはじめやがる。仕事のことで父と話などしたことのなかった加奈子には、ちょっと新鮮だった。最後の方では、涙を流しながら親父を罵ってやがる。
それから、加奈子は、ここ最近の自慢話をしてやった。すると高峯は、なにかとケチをつけはじめやがる。仕事のことで父と話などしたことのなかった加奈子には、ちょっと新鮮だった。最後の方では、涙を流しながら親父を罵ってやがる。
「そんなに文句あるんなら、東京出てきて、わたしの仕事っぷり観てからにしてよ!」
『そんなこと言ったって、こんな体じゃなあ』
「今は、いい電動車椅子がある。それ送ってあげるから、実際に来なさいよ!」
そうなんだ、加奈子の父、高峯純一は、撮影中の事故で下半身マヒになって、引きこもりっぱなしでいやがったんだ。
そうなんだ、加奈子の父、高峯純一は、撮影中の事故で下半身マヒになって、引きこもりっぱなしでいやがったんだ。
加奈子の電話は、その親父の心を開かせ、火を付けたみてえだ。
仁和さんは、そんな電話の遣り取りをニンマリ笑って聞いていやがったぞ。
こいつ、立派な悪魔だ(≧.≦)!
マユは、また一つ勉強できたことを、感動とともに感じていたぞ……。
☆彡 主な登場人物
- マユ 人間界で補習中の小悪魔 聖城学院 オモクロでは仁科香奈
- 里依紗 マユの同級生
- 沙耶 マユの同級生
- 知井子 マユの同級生
- 指原 るり子 マユの同級生 意地悪なタカビー
- 雅部 利恵 落ちこぼれ天使
- デーモン マユの先生
- ルシファー 魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
- レミ エルフの王女
- ミファ レミの次の依頼人 他に、ジョルジュ(友だち) ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
- アニマ 異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
- 白雪姫
- 赤ずきん
- ドロシー
- 西の魔女 ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)
- その他のファンタジーキャラ 狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
- 黒羽 英二 HIKARIプロのプロデューサー 地親は黒羽英雄
- 由美子 英二の妹
- 真田 由美子の元カレ
- 美優 ローザンヌの娘 英二の妻
- 光 ミツル ヒカリプロのフィクサー
- 浅野 拓美 オーディションの受験生
- 大石 クララ オーディションの受験生
- 服部 八重 オーディションの受験生
- 矢藤 絵萌 オーディションの受験生
- 上杉 オモクロのプロディューサー
- 桃畑 加奈子 オモクロの創設メンバー