大橋むつおのブログ

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鳴かぬなら 信長転生記 29『剣術修業・2』

2021-09-06 15:58:30 | ノベル2

ら 信長転生記

29『剣術修業・2』  

 

 

 これをお使いください

 

 織部が差し出したのは袋竹刀(ふくろしない)だ。

 普通の竹刀に革袋を被せて漆で塗り固めたもの、おおよそそうだ。

 元の世界で、剣術の稽古と言えば木刀だったが、力加減ができなければ、けっこうな怪我をする。

 後に竹刀が発明されるが、竹刀と木刀の間に存在していた稽古用の刀で、鍔がないのが外見的な特徴。竹刀よりも当たりが穏やかだが、値段が高くてメンテナンスが難しい。

 

 つまりは、竹刀の高級品だ。

 

「剣術にも『侘び寂びの境地』をと、用意いたしました」

「剣術に侘び寂びか?」

 ブン!

 信玄が上段に構えて、豪快に振る。

「いささか軽い」

「試してみなければわからんな」

 信信コンビは素直には認めない。

「試してみよう」

 俺は実証的だ。

「「よかろう」」

 戦国の三雄が、木刀、竹刀、袋竹刀を持ち替えては試すことになる。

 

 カン! カン! カンカン!

「馴染みの手応えだ」

 木刀の硬質な音と手ごたえは、やっぱりシックリくる。

 パン! パン! パンパン!

「竹刀は祭りの景気づけにはいいかもしれん」

「諏訪湖の御神渡りの音に似ている」

 バシ! バシ!

「袋竹刀は音が濁る」

「侘び寂びと言われれば、そういう気もするがな」

「個人的には、毘沙門天の凄烈さにも似た木刀の響きがいいが」

「そうそう、響きといいますと……」

 織部が目を輝かせて割り込んできた。

「なんだ?」

「川中島の一騎打ちでは、謙信公の太刀と信玄公の軍配が『カキーン コキーン』と小気味よく木霊したと聞いておりますが、信玄公の軍配は、何で出来ておったのですか!?」

「ああ、あれか。ええと……南部鉄の一品であったか、明珍の業物であったか?」

「東映映画村の刻印があったような気がするが」

「謙信の兜こそ、眉庇の裏に大映のシールが貼ってなかったかあ?」

「東映? 大映? ひょっとして、お二人は……?」

「「本物だ!」」

「川中島では何度も戦ったからな、わしのも謙信のも武具は痛みが激しくてなあ……」

「映画屋の情熱とはすごいものであったぞ」

「ああ、もう大型時代劇は撮れないというので、時空を超えて持ってきてくれたんだ」

「大映の道具係りなど、大映倒産のあとは、こっちに住み着いて、最後までやってくれたなあ」

「そうそう、わたしの陣太刀など、道具屋の習慣で、あやうく竹光にされるところだったぞ」

「それなら、大魔神をお借りになれば、一気に有利に……」

「「それは反則だろ!」」

 反則も何も、大魔神はボークスとかいうフィギュア屋に引き取られているはず……俺も、なんで、こんなマニアックな情報を知っているんだ?

 

 ゴホン!

 

 咳払いに振り返ると、武蔵がいっそうの三白眼になってイラついていた。

 

☆ 主な登場人物

  •  織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生
  •  熱田敦子(熱田大神)  信長担当の尾張の神さま
  •  織田 市        信長の妹(兄を嫌っているので従姉妹の設定になる)
  •  平手 美姫       信長のクラス担任
  •  武田 信玄       同級生
  •  上杉 謙信       同級生
  •  古田 織部       茶華道部の眼鏡っこ
  •  パヴリィチェンコ    転生学園の狙撃手
  •  二宮忠八        紙飛行機の神さま

 


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